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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第10章 うさぎさん達の頂上決戦
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番外編2 うさぎさん、つかのまの休息 その2

【プライベートの1日は計画的にやるべき】


 食事をとろうと傍にあったステーキ屋さんへと入った。

 内装はエキゾチックな見た目になっていて、店内中からは食欲の湧きそうな薫香が漂っていた。少し嗅いだだけでも腹が減りそうになった。

 各テーブルには大きめの鉄板が置いてあり、客は全員、豪快に生肉を焼いていた。


 各大陸から取り寄せた新鮮な肉を使用しているらしく、それなりに値が張りはしたものの美味しくとても満足がいきそうな味であった。

 そんな高い肉を食べながら店内で仲間と話し。


「暇な時、いつもこのへんを歩いていたのに店の存在に気づかなかったんだけど、おいしいね」

「……私も最近知ったんですけど一部の冒険者に人気らしいです。なんでも香辛料はさまざまな種があり各々の好みで味わうことができますから」

「たしかに、テーブルのすぐ横にある香辛料、種類がたくさんあるわね」

「この青い香辛料は? ……私もよく知らない食材みたいですが……これは一体なんでしょうか。かけてみましょうかね?」


 それぞれ、気になるものが多く無我夢中で横にある香辛料を選別しながら、好みの味を探していた。

 それにしても本当に種類多いなぁ。ミヤリーが言うように数えきれないほどの種が各テーブルに置かれている。

 よく、隠れた名店には異質なものが多いと聞くが、味の種類が多すぎて正直当惑しそうになる。

 私はスタンダードな塩コショウ、ソースを交互に味わいながら3人の話を聞いていた。

 食事がおおかた終わったところで、午後の日程を決めようと話を切り出し。


「昼からどうするの? スーちゃんそういえば大大陸行くみたいなこと言っていたけどいつ行くの?」

「……それなんですけど、港のほうが今少々工事中でして、大陸から別の大陸に繋ぐ橋の工事をするため、お客さんにケガが及ばないように現在中止しているみたいですね。聞けば一か月はかかるみたいで」

「あれ、橋ってそんな短期間でできるものなの?」

「おそらく技量の高い冒険者達を雇っていると思いますよ。たくさん集められれば1年かかることもありません」


 塵も積もれば山となるとは言うが、大人数を港側が依頼を出し短期間で仕上げるみたいな段取りだろうか。

 効率がいいように感じるが、その反面、ブラックなにおいが漂ってくるのはなぜ? ……いいや余計な詮索はよそう。


 期間は一か月か。

 それまで港は閉鎖状態で魔法でも使わないと海は渡れない。

 1度、中大陸から横断して向かう手も考えたが、スーちゃんはわりと矜持があるので、簡単にうんと首肯してくれなさそうだから言わないでおく。

 彼女の方をジーと見つめていると、こわばった表情で。


「……なんですかその物欲しそうな目は。愛理さんのことですから楽したいからワープの魔法使ってほしいみたいなことを考えていたのでしょう? ですが却下します。よほど危険な境遇でない限りは使う気になりませんから」


 心を見透かされ私が言う前に断られてしまった。

 スーちゃん、やはり意思が固いようだね。け、けちぃ。


「で、ですよねぇ。ずるはやっぱりよくないかぁ」

「それでこのあとなんですけど、狂政さんの邸宅へ向かおうかと」

「え、まじ? 急にどったの? 変な物でも食べた?」

「……いやいやいや、食べていませんから! 無毒な物しか食べていませんから! 変なこと言わないでくださいよぉ」

「ではどうして急に狂政さんのところへ行こうと?」


 急に狂政の所へ行こうと言い出したので、少々からかってみたが熱はないみたいだった。

 あまりにも急展開すぎたので私の“癖”が発動したわけだが、なにか彼女なりの案があるみたいだ。

 つぶさに説明を求めたいのだがその理由はいかに?


「……実は聞いた話によると、大大陸の魔物は他の大陸とは比べものにならないぐらい強いみたいです。無知な方があの大陸に飛び込んだら教会送りになったとか」

「……つ、つまりスーちゃん対策を練ようと言いたいのかな? ……どれぐらい強いかわからないけどスーちゃんがそういうなら……うし、じゃあ行こうとするかな。バイタスの土産話もまだあいつに話していないし」


「転換が早いわね。善は急げ的なあれかしら?」

「愛理さんらしい判断だと思いますよ。私も行ったことはないんですが、けっこう手強いみたいですよ」

「ちなみにその情報源はどこからなの?」

「えぇと父の経験談です。いつ話したかは思い出せませんが苦い顔していましたね。“なぜ”かはわかりませんけど」


 なにがあったんだよ。

 え、つまりあれか。大大陸って、単に面積が大きいだけではなくモンスターの強さもそれなりにインフレしている…………そういうことでいいのスーちゃん?

 あんぐりとしながら彼女を凝視すると、うんうんと相づちを打ってきた。だからあなた何パーセント私の考えていること理解しているのさ!


 とりま、戦力を補充すべく、スーちゃんの勧めにより狂政の住むオタクシティへ再び赴き、先日の結果報告もかねて大大陸の対策用に私たち一行は、お店の支払いを済ませたのちオタクシティへと赴いた。


「んじゃみんな行こうか」

「それじゃいこ……って愛理! なんで私だけ⁉ 支払いまだなんですけど!」

「ミヤリー、お前食べ終わるの最後だったよなぁ。だからここは私ルールってことでここはお前に支払い係りをしてもらおうと思う!」

「はぁ⁉ ふざけないで……って」


 会話を遮るように支払いを待つ店員は。


「あのすみません、お支払いはまだですか? 後ろで控えている方が大勢いますので、できれば速く」


 ミヤリーの後ろからはブーイングの嵐。

 早くしろとの叱責。

……諦めろミヤリー、はめられたら負けなんだから。


「ち、仕方ないわね覚えてなさいよぉ! ほい店主これでいいでしょ! んじゃ」


 早々に袋から代金を取り出してトレイに置き彼女は店を出た。ぜぇぜぇと息を切らしながら歩く様子で、いかにもしんどいような顔つきをしていた。

 やっぱこいつちょろい。


☾ ☾ ☾


~狂政の邸宅にて~


 予定通り狂政の邸宅へとやってきた。

 相変わらず身分が高いくせに、赤裸々なオタク部屋に視点が集中してしまう。

 ゲームなどに使う配線機器がわんさかとあり、それはどれもゲーム機らしき物に接続されている。

 まぁ、今回はゲームしに来たわけではない。趣向はずらさず本題を持ちかける。


「大大陸にいくのか? 全員Sランクになったようだがそれで少し行ってみようと?」

「まあ、そんなところかな。でも聞けばあそこのモンスター非常に強いってみたいだけど、今の私たちで大丈夫かな、その1つの不安を解決してもらおうとまた狂政に助けてもらおうと思ったんだけど」


 こわばった狂政はなにやら唸り声を上げ始めた。

 考え込むようなそんな様子で私たちの方をチラチラと。

 なに見てるんだよ。


「言っておくが、あそこのモンスターは他のどこの大陸のモンスターより段違いの強さだぞ? そうだな、換言すれば“インフレしぎた”というのが私の実体験だ」

「……そこへ行かれたことあるんですか?」

「あぁ。なぜそこのモンスターがそこまで強くなったかというと、環境があまりにも適しすぎて生長しすぎた感じだろうか。その分、高価・貴重なアイテムはそこにたくさんあるがな」

「ですからあの大陸は、都市・王国などがたくさんあるのですね?」

「お、そうだな。おっとちょっと待てよそのことで思い出したんだが……ちょっと待っておいてくれないか?」


 なにやら、奥の方にある倉庫のような部屋へと入ると、物騒な物音を立てながらなにやら探し始めた。

 ガシャガシャとした音は、私たちのいる場所まで響いてくる度合いではなはだうるさく感じた。

 う、うるせえ。もっと静かに……いったいなにを思い出したというんだ。


「す、すごく煩いわね」

「そうだね。というかミヤリー話は変わるけどさ、お前昔大大陸行ったことあるとか行っていなかった? できれば情報をくれると助かるんだけど」

「え。……悪いけど数百年前のことなんて覚えてないわよ。私だって人間よ、機械みたいにせーみつじゃないの!」

「そ、そっか。てっきり覚えているかと思ったぜ」


 ここに唯一、百年前に大大陸へ行ったことのある者がいるが――余計な期待だったらしい。

 ずいぶん昔のことだから覚えていない……これに関しては仕方ないか。

 この情報源は、直接足を運び収集するとしよう。


「狂政さんが帰ってきましたよ。……あれはなにやら神々しい淡い光を放った鉱石? のような物を重そうに運んでいますが」


「ぐぬぬ……。久しいとはいえこれほどの重量があったとは……依然としてエグい品物だ」


 狂政はなにやら両手がかさばるぐらいの鉱石を持ってきた。

 石は電球のような明るい光を常に発している。

 それを見て私は思わず凝視する。


 あんな輝かしい鉱石見たことない。

 RPGでよくある貴重なアイテムみたいなにおいがするがはたして。


「これはとある大大陸の友人から譲り受けた貴重な鉱石だ。なんでも突如空から降ってきた山から採取された貴重な石――つまり宇宙の石なのだが」

「作り物じゃないよねこれ。ちょっと持ってもいい?」

「あぁ構わないぞ。だが重いから注意しろよ」


 狂政はその石を手渡してくる。

 ぐっ! なんだこの重量は。


「ぐごおおおおおおおおおぉ。なんなのこの重さはぁ! 人間が持てるような重さじゃないよこれ‼」

【AI:測定……約200キロです。鉱物にしてはとても重すぎる品物です】


 に、200くぅッ⁉ たしか聞いたことある、人ってだいたい30キロまでの物なら1人で持てるって。……パーカーのおかげでギリ持てているが、それでも歯を食いしばりたくなるくらいの重さ。なんだ! 宇宙の物は揃いに揃って化け物かよ!


 少し間を置き。


「ごほん、この計り知れない重さの石……通称【流星石】は計りしれない重さかつ、この中にはトンデモないエネルギーが備わっている」


 とんでもないエネルギーって。


「これを使えば強力な武器や物を作れるらしいが、それはとある大大陸の国でないと作れないらしい。そこでだ、旅行ついでにそこへと行き、職人に流星石を使った武器を作ってくれないか?」

「こんな物騒な物を? まあラビット・ボックスがあるからいいけどさ、なにになるかわからないよ?」


 どうも小、中、並大陸ではこれを使った武器は技術的に製造することは不可能らしい。

 狂政は、たまたま大大陸の友人から譲り受け、以降興味もなく放置していたのだが、最近思い出して武器を作ってもらいたいという欲求が湧いたようだ。

 ゲーム……創作のモチベーションアップのためにも、試しに作ってほしいのが彼の要望なわけなのだが。


「なるほどね。でも未だに謎だらけなんでしょこの石。それに他の人に任せればいいんじゃ」

「これは友人にしか頼めないことなのだ! ぜひその国へと行き有力な情報をもらってきてくれ」

「お、おう。おつかい用件は少し気が引けるけどいいだろう。その誘い乗った! ……でもその変わりの対価はあるんでしょ?」


 どやっとした顔で彼の方を見つめる。

 来た時にまたガジェットを預けるよう言われたが、結びつくことはあるのかね。いやあってほしい。


「今回預けるように言ったのは、その大大陸のモンスターとある程度対等に戦えるよう私が調整するためだ。同時にこれでマスターは完全な調整を身につけ、制約なしで思う存分使えるぞ」

「ま、まじで⁉ じゃ、じゃあもう時間関係なしで好き放題使えるってこと?」

「そうだ、それぐらい今回行く場所は危険だということ」


「やりましたね愛理さん!」

「う、うん」


 ガジェットを手渡されたあと、外観に大きな変化はみられなかった。

 見回しても、以前と全く変わらない形であった。

 これがどうも完成――ゲームでいう完全版みたいなやつか?

 性能は追々試すとして、これをもらったからにはやるしかないでしょ。


「では、頼んだぞ朗報を期待してるぞ!」

「あいよ~」


 港の設備がおわるのにまだ少し時間はかかりそうだが、気ままに待つとしよう。

 さて、明日は必需品の買い物かな。ミヤリーはアイテムを買いに行くとか言っていたけど。はたして、今回うまくいくかな。

 交渉成立。

 快く、彼の依頼も同時に引き受け、新たな力を手に入れた私は準備を万全に着々と整えるのであった。

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