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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第10章 うさぎさん達の頂上決戦
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番外編 うさぎさんの妹、ついに出番来る

 チート大好き厨、再臨します。

【ヒーローは遅れて登場すると相場が決まっているが、私ってどういう枠なの?】


~愛理たちがバイタスを倒してから間もない頃のとある場所にて~


「ぴょん!」

「あ、いたいた」


 とある場所に向かっていた。

 このパーカーの機能である、滑空機能を駆使して感知器の反応を目当てに近づいていく。

 不慣れな機能にもだいぶ馴染んできたが、まだ自ずと体に違和感というものを感じる。

 “体は正直だ”とよくいうけど、あながちこれは間違っていない合理的な偏見かもしれない。

 肩に乗っているこの白うさぎのぴょん吉――ネーミングセンス皆無な名前だけどそこは大目にみてほしい。私に方向を示すかのように、逆立てている耳を頑張って振るいながら仕草をしてくれる。


 それよりお前誰だって? 私の動画見ている人なら知って……あ、ここ私の知らない異世界だったわ。

 私よ、私。ううん詐欺ではなくて……あぁもう、とりあえず自己紹介は後回し。

 荒野と平原に囲まれる地にある岩の堆積。点々と置いてあるけど、そこに得体の知れない黒ずみな物体を発見する。

 近くまで近づくと、物体は波を立てるかのように弱々しく踊り動く。……ずいぶん疲弊しきっているみたいね、でもあれだけの強力な攻撃を受ければこれくらいにまでなるか。


「…………グッ」

「はろはろ~……って私の声が届いているかわからないけど、バイタスの断片よねあなた。……ぶしつけで申し訳ないけどこれで抽出させてもらうわよ」


 手から取り出したのは、私が前の世界で使っていたデバッグツール――プロアクターの改良版であるプロアクターMAX。コントローラー型をした手のひらサイズのうわべだ。

 それを対象物に……メスを刺すかのようにぷすっと密着させる。


「接続完了。抽出開始」


 淡い光と共に機器が光出すと、DNA螺旋のようなものが渦巻くように行き来する。

 相手が苦しみ悶えているように見えるけど私知らない。

 発光が収まると画面が表示され【抽出完了】の一文が。


「ぴょん!」

「……そうね、やることやったし博士の所へ帰るとしますか」


 すげなくその場を立ち去ろうとする。

 あの物体――バイタスの断片か。あの攻撃から受け飛び散った破片がこちらに落下したんだけれど、私は、その成分を抽出し物質としてサルベージしたわけだけど……良い収穫ね。

 さすが宇宙で作られた生物だけあって成分も貴重。さて何に使おうかしら。


 なぜ私がバイタスの事を知っているかって?

 それは、私が彼女――姉である、仲宮愛理に発信していた張本人だからよ。少し早めなネタばらしになるけど悪く思わないでちょうだい。べ、別に早く登場したいから急かしたとかそんな理由じゃないからね。姉さんが困っている……と博士と狂政さんとの会話を聞いてやろうかなと思っただけよ。


 とにかく、あの通話を介さなかったら、突破法を見いだせなかったかもしれないから彼女に感謝されたい気持ちがある。……まあ彼女はいつも適当な人だからすぐポカンと忘れそうだけど……短期記憶庫に流されるなり感覚記憶庫へ行くなりしても私は全く気にしない……はい、閉廷。


 そんな事を頭の中で考えながら、博士の待つ街――ブレイブ・タウンへと帰ると直彼女の待つ研究所へ。

 最初訪れた時は不法侵入も考えたけど……いろいろあって現在に至る。

 研究所の門を潜り、自動ドアを抜けるとそのまま博士のいる研究室へ。


「帰りましたよサーセン博士。……って今度は何作っているんですか?」

「お、帰ったか卯乃葉くん。見てくれ……この……我が古に伝わりし力の宿った産物を。これを見るだけで力がみなぎってくるとは思わんかね?」


 津々となにやら小型の魔法瓶に詰まった銃? を私に見せてくる。発光する紫の液体が独特だけど……ただこれ蛍光色を混ぜているだけなのでは。博士はこういった他愛もない発明品を作るのが好きだから毎回対処する私は疲れてくる。はぁまたか……と。


「それって、魔力に蛍光色を加えているだけですよね? 魔法の力を一定時間高めるあたりの力があるんですかこれ?」

「あぁそうだ。……強力な魔法をこれで……とはぐらかすが言っていた成分は抽出できたかね?」

「えぇ勿論。姉さんが行き詰まっているようでしたから、私の知恵を久々に譲渡したまでです」

「ったく君たち姉妹は。恥ずかしがらずそのまま直接会いに行けばよかっただろうに」

「ぴょん!」

「な、なんと言っているのだね?」


 私はぴょん吉の言葉が大体わかる。獣医ではないんだけど意味は直感で判別できる。

 100%中、70割ぐらいかな。それでもおおかた伝わりはするので心配いらない。

 ぴょん吉は、首を横に左右に振る。


「……なるほど。私がそんな簡素なやり方をするわけがない。……そう言っていますよ」

「ふむ。つまり今はその時ではない感じかな? 姉妹とはとても難題だなぁ」

「そうでもありませんよ。それに近々会えそうなそんな気がしますし」

「…………君がこの街に来てからもう半年か。時間はあっという間だな卯乃葉くんが来てから私はずいぶん助けられたが本当に感謝しきれない」


 改まって、サーセン博士は熟考するように私をじろじろと見回して……なにチラチラ見ているのよ。

 いろんな資料や危機が散乱した汚い部屋だけど、研究に熱心なのは重々伝わりはしてくる。

 理由あって、彼女の研究を手伝うことになっているんだけど……ここまでの道のりは険しかった……ような。


「いえいえ、むしろそれはこちらの言葉ですよ。なのでそんなに深刻そうな表情しなくても」

「す、すまない。つい信仰深く体が勝手に」

「あのすみません、私神様か何かと間違えていません? そんなに威厳のある人じゃありませんから‼」

「わかったわかった! だからそんな叱責するな……それでもまさか愛理くんたちが旅行に帰った後日君がこの世界にくるとはな……さて君からもらったデータを分析して……」


 プロアクターMAXが抽出した成分を提出すると、専用の小型機械で分析し始めるサーセン博士。

 でも私は、この街に来られて本当に良かったと思う。……もしあの場面で違う場所へ歩いていたらひもじい思いを味わっていたのかも。


「もう……そんなにか。……ぴょん吉お腹空いてない? にんじん帰る途中で拾ったんだけど……食べる?」

「ぴょーん!」


 どうやらお昼がほしかったようなので、先ほど拾ったにんじんをスティック状にいくつかに能力を使って切り分けてぴょん吉にあげる。

 むしゃむしゃと食べ始めるぴょん吉を見ながら、私は異世界に訪れた非の事を想起させるのだった。


「最初まさか……あんな辛い目に遭うなんて……ね(嘆息)」


 そう私は、仲宮愛理の実妹、仲宮 卯乃葉(うのは)。理由あって、異世界転移を果たした……(かのじょ)の妹だ。


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