179話 うさぎさん巨大な強敵を討つ その8
【巨大な大敵相手でも私達戦ってなう】
仕留めるチャンスを窺いながら敵を攻める。
敵は、先ほどまでの勢いはないが依然として攻撃は強力。
「愛理さん、飛んできます!」
追尾弾が分かれるように飛んでくる。
敵――バイタスとの距離は中距離だが、飛ばした弾は数秒足らずで私達のいる中距離まで到達する。
ちっ、あんな速い弾どうやって防ぐんだよ。考える合間にも徐々に迫ってくる弾に、私は切羽詰まるような感じで思考を巡らす。
マスターのバリアでも使えれば、問題なさそうだけどな。
このハイパーで、どのくらい力を発揮できるか。
【AI:ハイパーにもマスターのバリア機能に代わるものがありますよ。ラビット・ハイパーフィールド、コンマコンマコンマ……秒で貼ることができいかなる攻撃も無効化させます(持続時間10秒ほど)】
しめた、都合がいいようにみえるけどこれなら大丈夫そうかな。
「……あの速さ尋常じゃありません。私の魔法も……詠唱が間に合わない!」
「うぅ……死ぬのはごめん! 死ぬのはごめんよ、だ、誰かなんとかして!」
「よし、みんな私のところに集まれ」
防ぐ策を練る仲間に声をかけ招集をかける。
考え込む仕草を見せながらも、私のいる中心部から離れていた3人は一目散にこちらへ駆け寄ってくる。ぎっしりと、私の後ろにがみつき待機。
「……策があるんですか、あの素早い弾を防ぐ方法が?」
「あ、あんな愛理風に言えばブッコワレワザ? だっけどうやって防ぐのよ」
「心外だなぁ。騙されたと思ってみておけ。……ラビット・ハイパー・フィールド!」
円状の膜が現れ私達を包み込む。
こちらへとやってくる弾丸は、一瞬で近距離まで間を縮め直撃。……爆発音とともに辺りは黒煙に包み込まれた。
「あれ、なんともない?」
「……ほんとだ。無傷ですね」
「な、言っただろへーきだって」
「愛理さんなら、ちゃんとやってくれると信じていましたよ」
よし、今のうちに新しい機能である滑空能力を使うか。
暗視能力もあったはずだから、それを駆使して大きい一発を入れよう。
「みんなしっかり捕まっていてね、今から空に上昇するからはぁあ!」
「と……と飛んだ⁉」
感覚的にはスカイより少々速い感じ。
足下を蹴るようにすると、火花のようなものが溢れ出し空中へと飛んだ。これはロボットによく付いているバーニアのような機能を担っている。出力は限りなく有限ではなく無限で、空高く地上を見下ろせるまで上がると一旦そこでキープ。
「こんなに高くまで……しかも一瞬で……ですが愛理さん、このような煙の中では、場所がわからないのでは?」
「それがわかるんだよなぁ。暗視暗視っと」
先ほど、少し話が途中でくぎれてしまったので一応補足説明をしよう。
どうもこのラビット・パーカーには特殊な補助機能RBTというものがある。多種にわたる、装着者を前面的にサポートする能力が秘められているのだが、その中に暗視能力というものがあるのだ。これは暗い場所……有無問わず昼間と変わらない光度で物体や生物を捉えられる。
つまりこの状況の場合、いくら煙が渦巻いていたとしても場所は。
「見つけた……ちょいと動いている感じだけど見え見えだぜ」
たしか、新しいラビット・パンチは遠距離からでも放てるんだっけな。
試用運転として少し使ってみるか。
拳に力を入れ力を蓄える。
すると巨大な光の拳が目の前に出現。
これが、遠距離版のラビット・パンチなのか? スケールは浮かんでいる私達より大きい度合い。
「巨大な拳が出てきましたよ。それを……まさか攻撃できるんですかこの煙の中で?」
「うん、場所は特定できた。あとはこれをアイツにぶつけて」
さあ、受けてみやがれ。
近距離から放つ特大の高火力のパンチを。
巨大な拳を、飛ばすように念じ私は攻撃を放つ。
「ラビット・J・パンチ!」
ブドォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!
放った拳は、目に止まらないスピードで飛んでいく。
数秒も経たないうちに黒煙の中へと入ると姿が消える。そして、しばらく待つと煙の中から爆音が響いてくる。
大きな火の玉が1か所。
「あそこね。本当に当たったのかしら。あら、だいぶ煙が退いていくわよ」
「これは……お、お見事です愛理さん! 攻撃はバイタスに当たっています!」
「ふう」
持続しながら飛ぶのってこんなに大変だなんて。
さすがに1分以上は体にきそうだなと思い、地上へと着地。
煙は先ほどのラビット・パンチで消し飛ばされ視野が鮮明に見えてくる。
「グゴゴゴゴゴ……」
「……今ならいけそうですね。仕掛けますか? 私はいつでもいけます」
率先し前へ出るスーちゃん。杖を片手に持ち魔法を唱えようとする体制をとっているみたいだが。
頼もしくはあるが、少々突っ走りすぎな気がする。
急かす彼女に一言声をかけ。
「スーちゃん、早まらないで……当たり所が悪いとまた元通りに戻る危険せいもあるからさ」
「……ではどうしろと。こうしている間にもまた再生する危険性が」
「でもスーちゃん、あなたならアレが使えるでしょ? ……もう一度できるかな」
「? 愛理さんあれとは? ……秘策があるのですか?」
「うん、スーちゃんが新たに習得したその魔法がカギ。ぶっしつけで申しわけないけどさいける?」
時止めの魔法。
上手くそれを利用し、私もその世界に介入することができれば、相手の突破口を見いだせる可能性がある。
目がきょろっと先ほど動かせた程度だがもしかしたらと思って。
「……まだ不慣れですが聞いたことありますよ。使用者は自由に触れた人もその世界に加入させることもできると。……上手く使えるかわかりませんが試してみますね」
よし、その世界に入ることができれば……あの能力を使い弱点を探ることができる。
そう……それは敵の動力源となる、コアを見つけるための私が持つ能力である。
「では、いきますよ」
シホさん2人にも時止めの事を簡約に話す。
スーちゃんが時を止められる魔法が使えることを。
それを、2人に説明をしてあげると両者うんと首肯してくれた。
「愛理さんは、その空間でスーさんとやることあるんですよね。なら問題ないです、少しの辛抱ですので一瞬の出来事になったとしてもその事を聞けば納得です。どうぞスーさん、愛理さんお願いします、私とミヤリーさんはここで待っているので」
「でもあまり驚かすのはやめてね。チラパンとかチラパンとか」
「お前どこでその言葉覚えたんだよ」
少し死亡フラグ染みたセリフを言うが、こいつには戦った後で説教を。
教えた覚えは全くないのだが……まあいいや。
私は私の指示を待つ、スーちゃんに。
「スーちゃんいいよ、時を止めて」
「こくり……テンプス!」
そして時は再び停止するのだった。
☾ ☾ ☾
「…………さん。……りさん。きこ……すか?」
声が聞こえてくる。
幼げな声が耳に入ってくると意識が次第に戻ってきた。
だが1つ、問題点がある。
(やべ、体はおろか口もまともに動かねえんだけど)
体がビクともしねえんですわこれが。
肉体感覚的には、重い石で縛り付けられているような感覚。微動だに動きもしないのでスーちゃんに応じることもできない。
だが幸いにも瞳孔……つまり目は動かせる。これで認識しているよというサインを彼女にだしてみるが、頼む通じてくれ。
「……目は動いてますね。ではあなたにこの世界は見えているということですか……そうだ早く愛理さんに触れてあげないと。そい」
すると膠着状態の私にスーちゃんが軽く手で触れてくる。
固まった体が徐々に柔らかくなっていくと、体の自由が戻っていった。
おっしゃこれで自由や。
「た、助かった。初体験の停止時間……」
「……先ほど使っていた時、明らか目が動いていましたよね?」
「あ、あぁそうだった。でもあのときはピンチだったから考える余裕もなかったよ」
バイタスにやられていた状況にて、わずかながら時の世界を認識できていた。
とはいえ、今とは若干ことなり意識すら希薄で気づきもしなかったが、今回やっとのことで意識を保てるようになった具合。
パーカーの作用あたりだろうけどこればかりは初めてだから仕方ない。
周りに映る景色は灰色の世界に染まっており、私とスーちゃん以外の人は身動きすらしていない。
スーちゃんによると任意で動かしたい人物に触れてあげると、停止物から非停止物になるらしい。
それ以降は、時を止められても自由に動くことも可能らしいが、使用者と違い動き出すのに多少のタイムラグがあるみたいだ。
「何秒持ち堪えられそう?」
「そうですね、だいたい30秒くらいですかね。まだはっきりと使い初めてからこれで2回目なのでそこまで長くは……」
「わかった」
「それでどうするんです? ……一応この空間だとどんな耐性も無力化されますけど」
ある意味そのぶっ飛んだ設定に首を突っ込みたくなるのだが、それはさておき。
私はRBTを起動させ。
【AI:ラビット・バイザー・ツールの起動を確認。暗視能力を使用します】
「えぇとね、能力で弱点を見つけるんだけどそのためには時間が必要なんだ。再生されたら全て水の泡だしここならなぁって」
「……なるほど効率の良い考えですね」
「すぐおわるからちょっと待っていて」
私のすぐ横には、止まっているシホさんとミヤリーが立ち止まっている。
2人に弱点を伝えるためにも、この力を使って見つけなくては。
あの声主の情報によると、体のどこかに動力となる箇所があるみたいだがさて。
【RBT 暗視能力:対象物の体を透視化させ、弱点となる箇所を見つける。物にもよるが大抵の場合0.5秒で完了させる】
はっや。
レンチンより圧倒的に迅速じゃん。
説明文にあるとおりに、敵の弱点箇所の解析はほんのごく僅かな時間で完了した。
ピピピ。解析完了。
との表示が。
停止したバイタスの方をみると、赤く点滅している部分があった。
ちょうど胸部あたりだ。ジャンプして殴りにいけば届きそうな部分。
黄色い巨大な球体が透けて見える。……あれか。
私よりはるかに大きいけど、あれをどうやって破壊しようか。
「あそこか……ふうおわったよ」
「……早いですね⁉ い、1秒もかかりませんでしたよ?」
だってそういう仕様だし。
「あの……胸の中心あたりに球体があるみたいだよ。サイズは大きいけどね」
「……そうですか、ではもう動かしていいですか?」
「いいよ」
「……では、時は再び刻み始めます」
彼女が合図を出すように一声を上げると、灰色に染まった景色が色づいていき再び時は動き出すのだった。
☾ ☾ ☾
「みんなわかったよ」
「おっと、愛理さん……その顔はわかった感じですね」
「チラパンしてないわよね? ……していたら」
「してねぇっつーの。……バイタスの弱点箇所見つけたよ」
時間が動き出すとふと傍にいた2人に声をかけた。一瞬の呼びかけだったので驚く素振りをしていたがシホさんとミヤリーは、私とスーちゃんの方を向いてくる。
簡潔的にスーちゃんと私は、弱点を伝えると。
「なるほどね、あの胸の部分か。でもあんな巨大な怪物に巨大な攻撃を与えることってできるの?」
「私は前線に出て戦えそうですけど、再生が早いかこっちの攻撃が早いかですね……またあの厄介な再生が復活する前になんとかしてしまわないと」
「……補助魔法でサポートします。それで多少対等に戦えるでしょう」
目の前のバイタスは再び立ち上がると私達の方へと近づいてくる。
攻撃の準備に備え体制をとり始め。
あのすみません、まだ作戦会議おわっていないんですけど……え、知ったことかって? たく敵はどれだけ戦いてぇんだよ。
「ふう……そんなに戦いてぇのかよお前は……みんな、どうやら敵は待ってくれないみたいだよ」
「みたいね、じゃあそろそろ最後の戦いといきますか」
「……魔法で向かえ撃ちます!」
私は専用の銃を呼び出し武器を構える。
「待ってたぜ……ライフル、カモン。よし……みんな油断するなよ」
一同首肯し意気込む頼もしい仲間達。
そして、これが最後の決戦になるだろうと身心と緊張を募らせながらも、各々再び持ち前の武器を力強く持ち攻撃に備えてバイタスの動きを窺うのだった。
☾ ☾ ☾
【うさぎさんの戦いはこれからだ!】
バイタスとの戦いは苛烈を極めた。
後ろ側からは冒険者達の声援が聞こえてくる。
飛び上がって連続でパンチパンチ。
「おりゃりゃりゃりゃ……!」
「……!」
口腔からまた強力な攻撃が放たれようとするが、一瞬の隙をついてパンチをいれる。
巨大な2つの腕が私達の動きを阻むが、私たちは一同に避けながら小刻みに攻撃を放っていく。
「たぁッ! たぁ! 鈍いですねこっちですよ!」
シホさんが近くに寄り、1度攻撃でこちらの視線を逸らさせるとバイタスは彼女へと体を動かした。
負傷しているせいか、先ほどのような速さは損なわれているが、私が見る限り十分な速さでシホさんと張り合っている。
……だがシホさんは再び攻撃をせずに、ひたすら円周をずっと回るばかり。
何をやろうとしているのか……それは。
「……シホさんいいですよ……はぁ! フレイグニスト!」
「……ッ⁉」
中距離あたりでふと姿を表したのはスーちゃん。
軽く杖を一振りさせると、巨大な燃えさかる炎魔法を放った。
何度あるかわからないほどの熱気であり、宙に飛んでいる私までも熱く感じるほどに豪快である。
あっつ。小柄ながらもスーちゃん容赦ねえな。
バイタスがその攻撃を受けると、皮膚のいたるところに炎がついて身を燃やし尽くしている。
極小ながらも、再生能力は健在だが未だに能力は完治していない。
「ちょいさっと! 食らいなさい」
ミヤリーの両剣による交差斬りが敵の体を辻斬るように使うと、軽くバイタスの体から得体の知れない液体がふきでた。
ペースを落とさずに、瞬間移動でミヤリーの後ろに回ったシホさんは軽く地面を蹴り飛ぶと剣術を使用。
「ウルティムソード!」
瞬間的に、生成された光の刃が大きな敵の体を貫く。
地を巻き上げ、怒涛な勢いで通過する彼女の強力で素早い剣術を見て私は圧巻。
依然として、頑固な敵さんはそれでもなお立ち上がろうとするが。
私は瞬間移動で敵の頭部へと移動。ラビット・ショットで敵を宙に上げてそのままパンチのコンボで攻撃を繋げる。
バイタスは周りの瓦礫で反動を緩めようとするが、私のパンチがあまりにも強力なせいか威力は増長するばかり。
どうやら新しくなったこのパーカーは、バイタスの平均以上の性能を引き出すことができるみたいだ。
パンチで吹っ飛ばし、先回りして瞬間移動、パンチ、瞬間移動と空中で合間が空かないように攻撃を続け切りのいいところでやつを下へと叩き落とした。
どっすーん‼
仲間の集まる場所に着地すると、立ち上がるバイタスをひたすら待つ。
そして、遮へいされた土煙がなくなりヤツの姿が見えた。
体はもはやボロボロで、体が向きだし状態。……すると体からある物が見える。
「……あれは! 愛理さん!」
「あの光る物はもしかして……」
スーちゃんがある物を指さした。仄かな体内部に留まる物体が一筋の光を出している。
あれが、着信主の言っていた動力源というやつか。……いけるか?
「よし、あのまま……って」
私が攻撃を構えようとすると、いつの間にか私はこの地帯全体を見下ろせるぐらいの空中に立っていた。
さてはスーちゃんまた時を止めたな?
左の方で手を振るスーちゃんの姿があった。……そしていつもの彼女がまず言わないような大声で私に。
「「愛理さん! 特大の攻撃使っちゃってください! あれを破壊するにはとびっきりの高い力が要るのでしょう? ……私が時を止めて攻撃力を上げる魔法をたくさん使いかけておいたので特大の技を放てるはずですよ!」」
確かめようと体を軽く動かしてみた。
すると内から湧き出すような力が感じてきた。……それもとてつもない力。思いっきりやれってことか。よし。
後ろからの「愛理、愛理」との歓声も聞こえてくる。……仕留めてくれってことか。
さて、そろそろしめとするか。
「……ったく仕方ねーな。待ちきれないヤツがたくさんいるみたいだし」
標準をバイタス一点に。
「たあああああああああああああああああッ‼ ぐぉらぁ!」
「ぎゃあああああああああああああああああああッ!」
ブーストをかけ、特大のパンチでバイタスの方に突進。アッパーで突き上げるようにして宙高くまで放る。
宙で回っているバイタスに私は標準を定め、ヤツに放つ最後のラビット・パンチを生成し。
「お前には散々苦しめられたけど……それももうおしまいだ。この一撃は……今、いや今以上の威力を持った攻撃だ」
その拳の大きさは、バイタス以上の大きさをした大きな鉄拳。質量をこれほどかというほどに持ったせいか想像以上の大きさへと成り果てた。
こいつを放てば、いくら最強の地球外生命体と言えどもこの攻撃に耐えきれず消滅することになるだろう。
「とびっきりのうさぎさんの……このパンチを食らいやがれ!」
大声で腹に力を込めて最後の一撃を解き放った。
「「食らえッ! 100倍ハイパー・ラビットパァァァァァァァァァァンチィ‼」」
飛んでいったその拳はバイタスを大気圏……そして大気圏外へと放逐され。
宇宙で巨大な爆音が響き渡ると、私は消滅を確認しようとRBTを起動。
【AIさん:バイタスの生命反応消滅を確認しました】
力を完全に使い果たした私は疲労で気絶。満足げに一言「やったぜ」と口にして仲間に救助された後、長かったバイタスとの戦いはこれにて終わりを告げるのだった。
☾ ☾ ☾
~リーベル・ギルド内にて~
「ふう暇だねえ」
「ですね、バイタスが倒されたと同時に平和が戻った感じですけど」
「……平和が一番ですよ平和が。……まさかあの攻撃で数日寝込むなんて呑気すぎませんか愛理さん?」
あれから1週間経過した。
私はその間、ずっと眠っていて街の様子がわからずにいたが。
シホさんから聞いた情報によると。
ギルドの人から大きな功績を称えられ、一同、多額の賞金そしてSランクまで昇格し一気に高い身分までのしあがったのだ。
え、唐突? しらんがな。 私その間に寝込んでいたから文句言われても返せる言葉すら思いつかないから。
聞いた時びっくりしたけど……こんなことってあっていいんですか。
「起きて早々Sランクまで上ったことに驚いたけど急展開すぎんか?」
「まあいいじゃない、いいじゃない♪ やる事はやっておいたから感謝はしなさいよ」
「……あ、そうだな。一応始末はみんながやってくれたし……そのありがとう」
恥ずかしがりながらも、指で頬を掻きながら感謝の意を述べる。
こういうのまじで慣れてないから恥ずかしい。
というか、前より冒険者が津々とこちらを見つめて……有名人になっちゃった系なのこれ。
「……全く問題ないですよ愛理さん」
「そうです、そうですこの功績は愛理さんあってのものです。お陰で以前より冒険者さんたちがあなたを尊敬の眼差しで見るようになりましたよ」
やっぱりそうなるんや。
よし、これからは道ばたを歩く有名アイドルのように、素顔を隠して動くことにしようか。
……いやそれだとどの道フード脱がされて終わりかはは。
「人気者ってめんどくね? 私あまり注目とか浴びたくない立ちなんだけど」
「大丈夫ですよ愛理さん、もし不審な者が出るのであればマックス・ヘルンと私が蹴散らしますので!」
「いやいやシホさん蹴散らさなくていい! わかった慣らしておく慣らしておくからマジでそれだけはやめて!」
シホさんは殊勝ではあるものの、ときにやりすぎなこともするので念入り止めておく。
さて問題は慣れるかどうか……狭き門だなはぁ。
「……そういえば愛理さん知ってます?」
「? なに」
「近々各大陸に繋ぐ橋が架けられるみたいですよ? まだ計画が立ったくらいで全ての大陸に繋がるまでは当分先になるそうですけど」
橋架けられるのかあの港に。
つまり船も行けるし、歩きでも大丈夫と……またこれ狂政が仕向けたのか? だから気が早すぎるって。
「すごくねそれ……ならさちょうどSランクになったことだし……大大陸に行ってみない?」
「……いいですねそれ。でも聞けば強力なモンスターがその大陸には山ほどいるとか」
「念入りに、備えはしておいたほうがいいかもしれないですね」
とりま、今度この世界で一番大きな大陸に行くことになったが、なにがいるんだよそこには。
必要以上に準備しとけなどのニュアンスに聞こえてくるのは気のせいか。
場所を移し、いつもの草原へ。
向こうではバイタスが荒らした土地を直す冒険者の人の姿が見える。
魔法やらなんやらで草木を生やしているが……範囲が広すぎるあまりか大変そうだ。
それを見ながら広大なリーベルの草原を見下ろし。
「大変そうだねあれ」
「あれほど激戦でしたから……被害は甚大ですよ」
「……みなさん、そんなこと今に始まったことではないですよ。これからもたくさんの強敵を相手にするはめになるんですからね」
「それもそうですね。でも愛理さんと一緒にいれば全部事がうまく運びそうです」
どうなんだろ。
不安しかないんですがそれは。
「はぁこの先どうなるかわかんないけど……みんなよろしくね」
仲間たちはbのサインをおくってくれる。
そして私は向こうに佇む太陽に人差し指を向け。
「んじゃ一言言っときますか……私たちの戦いはこれからだ! なぁ〰〰〰〰んてね」
その日は、伸び伸びとみんなでいつもながら馬鹿やりながら1日を過ごすうさぎさん達なのだった。
ちなみに言っておくけどまだおわらないからな。
もうちょっと話続くみたいらしいから。
「「いやいやまだまだおわらない! まだおわらないわよ‼」」
……空耳か。先ほど誰かの声がした気がするが、まいっか。
つーことで、みんなこれからも愛理さんをこれからもよろしくな。
☾ ☾ ☾
街中を歩いていると奇妙な紙をまた見つける……これは。
「なにこれ」
「えぇとなになに……【生意気な黒いうさ耳パーカーを着た人には注意を】らしいです。……愛理さんではありませんね」
「愛理さんなわけないじゃないですか」
「ふむむ」
「なによ愛理まじまじとこの紙見て……」
「いや……なんでも」
このとき私は知らなかった。
私以外にパーカーを着る者がいることに。
誰なんだこいつは。
次章へと続く。