175話 うさぎさん巨大な強敵を討つ その4
【地球最強のうさぎと宇宙一害悪なやつ ここでの問題のアンサーはどっちだよ?】
戦いを続け。
私がヤツに殴っていく度にゲージは溜まり続け。
「こっちだ!」
「グゴオオオオオ……」
ひっかいてくる鋭利な爪を俊敏な動きでかわし、カウンターの攻撃に上半身部分に力のこもったパンチを振り落とす。
からの連続パンチ
「10倍ガトリング・ラビット・パンチ! ごらららららららら!」
間髪入れずに放つ無数の拳。どれくらいカロリーを使ったのか分からないほどに叩き込んだ攻撃は、バイタスの体のあちこちに凹みをいれた。
振り落とされる前に、地を巻き上げながら着地して仲間の方へ。
ドスン!
「豪快な着地でしたね、酔いませんかあんな揺れ動く体に乗りながらパンチして」
「あ、そこはお構いなく。平気さへーき」
「……私もみなさんに、愛理さんから言われた通り補助の呪文をかけて援護に回りましたが」
「攻撃強化、防御力強化してくれたおかげで攻撃が格段に上がったわね」
スーちゃんにはバフ要員にまわるよう指示した。
攻撃・防御強化と魔力が枯渇しない程度にかけてもらって。因みにこの世界だと、能力強化での重ね掛けは限りなく増えていくらしい。つまり、何重にも重ねて高火力攻撃を叩きだすことができるのだ。
ちょうど5回くらい全員にその倍率が乗り、現在、尋常ではない攻撃を何度も繰り出せている。
シホさんとマックス・ヘルンはその中でもずば抜けな速さ・力で、敵の体に一瞬で数百箇所にも及ぶ剣裁きは華麗だった。
体を寄せ合いながら、互いに身の危険が及んでないか何回か1度に顔合わせをして近況報告。手つかずな相手だが、あのパーカーさえあればこの戦況をひっくり返すことができるはずだ。
それを繰り返すこと数十分。
危険な修羅場を幾度も乗り越え、ようやく使用可能な状態となりガジェットが光り充電完了。
「お待たせ準備は整ったぜ。でもみんな浮かれないでね、もし私に万が一のことがあったら助けてよね私だって人間だし(長いので割愛) だからそうなったらみんなのお力添え頼んます」
bのサインをだす3人。
後ろは任せておけとのことだろうか。
よし、これなら心置きなく。
「んじゃ行ってくる」
その一言を拍子に、高速移動かつ瞬間移動を併用し移動、移動、瞬間移動、瞬間移動。視界がぼやけるほどに乱用させ一気に距離を詰めていく。
あまりにも速い、走りを見た冒険者一同は大きな声を発した後。
「「なんだなんだ! あのスピードは⁉ ぐんぐんやつのバイタスとの距離を詰めていくぅぅぅ‼」」
「あれは鳥……いやそれ以上の速さだ。あのうさぎ今更だがかわいさだけが取り柄じゃなかったんだな」
「おいばか、お前は何言ってるんだ。あの嬢ちゃん俺達が適わなかった敵に果敢に立ち向かっていってるんだぜ? だから敬意を込めて応援するんだ!」
なんだろう、増長するようにエールが聞こえてくるのは気のせいか。
まあいいや。
バイタスを目の前にして立ち止まり。
「よう」
「ぐごぉぉ?」
敵を眼前にしながら、威勢を強くだす図々しい格好でバイタスを見上げる。
バイタスは小さい私を見つめて視線を合わす。
さて少しご挨拶といこうか。こいつには、散々苦しめられたしこの場で悔いが残らないよう、戦う前に対話しようと思う。
変身したら1時間という制限時間がついてしまう。……そうなる前にこうして言いたいことは全て言う……これが愛理さん流の敵に対する態度である。
「覚えてるかお前、随分前私をコテンパンにしてくれた愛理だよ」
「グゥゥ!」
「おっと……! こら話している途中でひっかいてくんな! 人の話は最後まで聞け!」
話しかけているというのに、前触れもなく攻撃。反射的にかわすがなんだこのDQNは。モンスターだから、そんな人間同様の自我を持っていないことは重々承知。でも空気嫁。
「散々てめえに苦しめられたけどよぉ。この間の借りはきっちりと果たさせてもらうぜ。……“コイツ”を使ってな」
バイタスに振りかざしたのはガジェット。
「?」
「見て驚くなよ。今から見せるのは、お前も絶句する“うさぎの暴力劇”だぜ」
手に持つ、ラビット・ガジェットの起動ボタンを押すと淡い光が私を包み、マスター・ラビット・パーカーへの変身が始まる。
【EX ラビットパーカーチェンジ!】と共に発される音声が鳴るとパーカーの色が変色し。
「ぐごおおおおおおおおおおぉぉぉ!」
バイタスの攻撃さえも、光は固い鏡のように反射させ敵を向こうにある岩壁へと突き飛ばした。
これってそんな特殊補正あったんだ。つまり邪魔は絶対させないよ主義的な特殊仕様だな……現にどんな力も無効化する能力が備わっているから、それはない方がおかしいと言える。
パーカーの色は、虹色に変わり陽光の反射によって目映く光る。
合間を置かず専用の武器である、剣と盾を取り出して左右の手それぞれに装着させた。
「サオリアナ、マンサナこい!」
マスター・ラビット・パーカーへの変身完了。
こちらの変化に気づいた、バイタスは人外な動きをしながら向かい。
バイタスは、強大な黒炎を吐き攻撃してくる。その速度は野球選手の速球かと見間違えるぐらいの高速射撃。
なんだあの速度エグ。まじで当たったらダメなやつじゃあないか。
1発がいくつにも分散し押し寄せてくる。
相手がその気ならこっちは。
(四方を見る限り、大した動きじゃあない。よーく目を凝らせばあれくらい見えるぞ、ならば)
へっ。要領の悪いアホだこいつは。
マスターは、他のパーカーとは訳が違い性能も歴然。
油断していると足を掬われるぞ。痛い目を見たくなかったら降伏しても。ってまともに話が通ずる相手じゃなかったわ。
同じ攻撃がそう何度も当たると思わないことだ。身を持って……恥を知れ!
サオリアナを宙に浮かせ維持させ、そのまま手で高速回転させる……それを無数に複製。ざっと、相手の攻撃を全て跳ね返せるぐらいの数はある。
因みにこれ全部光速で回っています、つまりはってわかるよね説明しなくても。
「⁉ ガッ! ガ! ガアアアアアアアアアアッ!」
光速で回る、複製した剣がバイタスの炎を全て倍の速度で跳ね返し、光速で返ってきた炎はまるでカッターのようにバイタスの両手を切断した。
バイタスの手からは、“液体X”が流れ出てきて少しいや超グロしである。
あこれ子供に絶対みせられないやつだ。よし見えないかもしれないけど、一応モザイク加工していることにしておこう。
再生を試みるバイタスだったが。
「おっとすまん、また私の攻撃は終わっていねえぜ! そらよっと一斉発射!」
複製させた剣を、そのままブーメランのように全て撃ち再生するはずだった腕の一直線に向け飛ばす。すると再生が追いつかないほどに出血多量となり、バイタスは憤る様子をみせるのだった。
手を振りかざすと、サオリアナは私の方に吸い寄せられるように集まっていき1本の剣に戻る。
「どうだ? それならいくら再生能力があるとはいえまだ少しかかるだろ」
「グゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」
唸り。低音質から発声される怒りのこもった叫び。阿鼻叫喚からの断末魔の叫びはこの一帯をなびかせ草木がこれほどかと思うほどに揺れた。
そんな哀れな敵を目の前にして「ふっ」と私は笑った。
「この程度でキレるとはなぁ。言っておくけどこの間私……いや私達が味わった屈辱はこんなものじゃあないからな。覚悟しとけよこのクソ怪物が!」
斯く。
私とバイタスの地球一、非常に長く果ての見えない泥試合がこれを皮切りに始まろうとしていた。
うさぎさん――私は果たして。こんなどうしようもない相手に勝てるのだろうか?