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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第10章 うさぎさん達の頂上決戦
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174話 うさぎさん巨大な強敵を討つ その3

【弱点のない敵をどう倒せって言うんだよ!】


 あら不思議。あろうことか、巨大な敵を倒したかと思ったら姿をまた変え、私達の前に立ち塞がった。

 おまけに名前がメガからギガになっているけど……もしかしてこれ無限に増え続けるのではと危惧する私。

 冗談ではない。こんなどうしようもないモンスターをどう倒せと。

 ただいま4人がかりで敵――ギガバイタスと戦いを交え。


「ウルティム・ソード!」

「グゴォォォォォ……」


 騎乗する、彼女の手から放たれた迅速な光剣が巨大な体に大きい傷を入れた。

 私は地面を蹴りパンチを使った。


「10倍ラビット・パンチ!」


 スパーン! と怒濤の一撃を何発か、敵の体に叩き込む。バイタスは引きずるように後ろへ下がっていく。

 一見、手応えはあるように感じる。スーちゃんも、補給してもらった魔力を思う存分多種に渡る魔法を撃ち込んで応戦。広範囲に及ぶ魔法は敵に大きなダメージを与えていき、さらにさらにと押した。


「……形を変えようとも私のこの魔法を捉えることはできないでしょう?」

「ぜぇぜぇ……なんて大きさなの。私も斬りかかりはしたものの全然効かないじゃない」

「お前、アレ使えよ」

「あーアレ? でも途中で切れちゃったら元も子もないから、今は温存しているってわけ。……愛理のあの最強服でも太刀打ちできなかったら使ってあげるわよ」

「ヒーローの奥の手みたいな感じだな……っとあぶね。あの炎1発食らうだけでアウトな感じだな」


 私達が攻撃しながら話していると、バイタスが大きな火炎をこちらの方に吹いてきた。

 途端に、歩調を合わせ回避する。すると当たった部分の葉の部分が一瞬にして灰に変わる。……うげ、あれ普通の炎じゃあないよな。食らったら私と言えども骨に変えられそうで怖い。


「愛理さん、弱点は……見つかりましたか?」

「いいや、色んな服で試してみたけどどれも歯ごたえがなかった」

「……ということはあの虹色の服が鍵ってことですね?」


 他のパーカーも、一通りに試してみたがどれもすぐ再生されてしまい、完全な手詰まり状態だった。

 仲間や他の冒険者達も、追々とやつに向かって戦うが結果は同じ。てめえいままでどれほどの地球の物食ってきやがった? 怒らないから愛理さんに答えなさい。

 と、まともに言葉が通用する相手ではないことは私と、後ろに控える仲間達も重々承知だ。


 ガジェットのゲージを見ると55%。……片方の武器を出して、持ちこたえるのもありだがそれだと火力が足らなくなりそうな気がする。

 やはりこいつは今までの敵とは比べものにならない強敵。だからガジェットが溜まるまでもうちょっとの辛抱だ。


「おい見ろよ、あのうさぎの攻撃を受けてもすぐ再生しちまう」

「私の魔法も色々試してみたんだけど、どれも貧弱でとても戦える相手ではないわ」


 冒険者同士で声をかけながら、なんとかこちらを援護しようと必死な様子が窺えた。

 いつになく真剣だなあいつら。やるときにはやる……そんなタイプだろうか。いやだったら普段からそうしろよって話だが。


「こんのおおおお! 食らいなさい」


 ミヤリーが飛びかかって回転斬りをしかける。

 華奢な体を、活かした身のこなしの攻撃だが果たしてどうか。


 グサグサグサ……グササササッ‼


 幾重にも及ぶ剣擊。数え切れない傷の数がバイタスの身を切り刻んでいく。

 今日は珍しく1ダメージも受けていない。即死量並の、火を吐かれても軽やかに回避して、果敢な素振りをみせている。

 そんなとても頑張りようを感じさせるミヤリーだったが。


「……だめです。また再生してしまいます」

「んもう、このデカぶつぅ! 少しは加減ってものを覚えなさいよ!」

「やっぱだめかぁ。総出でこれだもんな」


 彼女の攻撃はあっさりと、無駄にさせられてしまいまた再生される。

 このようになにやってもビクともしない強固な壁。もはやギブアップと言わざるを得ない相手だが、ここで諦めたら私達の飯がなくなるので、迂闊に背中を見せられない。


「ちくしょーラビット・ショット! ラビット・ショット! ……効かねえのかよこっちの速度と相手の再生速度の方が速くて追いつけねぇ!」


 駆け回り、撃ってもこれも無意味。

 かくなる上は。


「こいつでも……食らいやがれ!」


 透明なパネルを1つ、2つ、3つと5つくらいに相手の足下に設置する。

 あの大きさなら平気だろうと、余裕を持って配置したまで。

 さてこの爆発によって、街が1つ犠牲になっても私は知らん。

 みんなに引き下がるよう指示をし、距離を取らせる。


「下がって下がって! あぶないよなるべく遠くな! 今からとんでもねえ爆発が起こるからさ!」

「…………あれですか? 愛理さんあの爆発を使うんですね?」

「餅の論。……よし丁度いいな。それじゃいっせっのーで!」


 指示通りにみんな、十分距離を置いてくれたので起動させる準備は分もかからず整った。

 そう……言わずもがな爆発のラビット・トラップ。これを1発お見舞いしてその余裕な動きをなくしてやる。

 私は手で拳を作り、親指を突き上げ押し込むようにおろし――。


「ラビット・トラップ起動! 爆破しろぉぉぉぉぉぉぉ!」


 ドドドドドドドドドドドドッ!


 連鎖する巨大な爆発の渦。轟音と共にバイタスを爆発の中にあっという間に包み込んで。

 

「グゴォォォォォォォォォォォォォッ‼」


 と断末魔のような声をあげながら、姿を消していく。

「どうだ」と一言(ひとこと)述べしばらく待つ。視線をいちども見放そうとせず、息を殺し次の攻撃に身構える。

 黒煙の中から微量な「ドスン! ドスン」とした音が聞こえてくる。


(あれで無傷だったのか、図太い野郎だ)


 と、心底嫌気がさしているとようやく巻き上がった煙が上がった。


 やつは。


 あれぐらいの威力なら、胴体がでかいとはいえ再生に時間がかかるはずだと考え。

 その隙を突こうと行動にでようとした。


「バイタスは………………まじか」

「……そんな……愛理さんのあの爆発を耐えしのぐなんて」


 バイタスは無事だった。半壊した体を元の体に再生させながら。

 だが先ほどと違い、再生に時間がかかっている。“仕留める”とまでにはいかなかったが……。やはり、この能力による再生速度は何かしらの“穴”があるのではないか? とひとつの疑問を抱いた。

 先ほどまで頭を(よぎ)っていた勝算のない、1本道に僅かな一筋の希望の光が差し込んだような気がした。

 不安が少々の自信に変わり、バイタスを改めて倒す攻略方という勝算が芽生えた。


「ふっふーん」

「? ……ど、どうしたんですか? 敵は歯ごたえ全然なかったのに……」

「そうですよ、その勝ち誇った顔はなんですか。こちらはいたって真剣なのに」


 スーちゃんに続いて仲間達は、私がおふざけしているように不思議で訝しむような視線を向けてきた。「こんな時になにやっているんだ」と、言い出しそうな顔をしながら。

 そんな仲間の疑問に応じるように、私は口元を歪め答える。


「少し分かった気がする“ヤツの穴”ってものをさ」

「…………? み、見つけたのですか、あのモンスターの弱点を」

「なら是非私達に教えてくださいよ……分かったんですよね?」

「かっこつけなくていいから、早く言いなさいよ! こうしている間にもあいつは」


 そこはほら、アニメ・ゲームでよくある『ここでの1分は30~1時間の事だぜ』みたいな解釈でなんとかなるでしょ知らんけど。

 あるあるなネタを差し込んで、起きながらも私は誇らしげそうな態度で、前に赴き人差し指をバイタスの方へと向けた。

 


「そう急かすなって! 手は無きにしも(あら)ずってね。……その前にまずは時間稼ぎ、こいつが溜まるまでひと踏ん張りだよ」


 ガジェットを見せて言う。

 さあて現在69%。みんな頑張って持ちこたえてくれよ。


「スーちゃん、ミヤリー、シホさんあともうちょっと。もうちょっとで溜まりそうだからそれまで持ちこたえて」

「了解です、行きますよみなさん」


 引き続き戦いに集中する私達なのだった。

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