それは過去より積もりし物なり
某所山奥、ここに不釣り合いな程立派な蔵付きの屋敷があった…
「ごめんなさい叔父さん、ホントにごめん」
『気にすんな、それより拓斗すまんなお義父さんの葬式後にすぐ戻る羽目になっちまって…』
「僕がもう少ししっかり言っておけば、こんなことには…」
「しゃーねぇ!あの人の収集癖は筋金入りだからな!」
「そうなんですよねぇ…」
そう言って肩を落とす拓斗(20)。
「僕が高校の寮生活してる間に、蔵1つ(物理で)増えてるレベルでしたし」
「えぇ…(ドン引き)」
「死ぬ半年前も、『じゃ!行ってくる!』って言って1ヶ月帰って来なかったし」
「パワフル過ぎんだろあのじーさん…」
「けど、まぁ、いつもの事でしたし」
「だな、それに俺もお義父さんには世話になりっぱなしだったし、けど…」
「はい……」
「蔵1つ目でこれはねぇよ、しかも後7つもあるのによお!」
そう、同じ様な蔵は計8つ。まだまだ先は長い
「けど、ホントに何に使うんだこれ?」
そう言って、乱雑に積まれている本の1つを摘まむ。
「さぁ……見たこともない文字で読むことすらまず無理ですし」
「だよなぁ…他にも壷みたいなのもあればただの石みたいなのもあるし」
「同じ様な物がまとめられてるのが唯一の救いですね。」
「けど、拓斗お前も大変だな。いくら遺産とは言えこんなワケわからんもの貰って」
「けど良いんですかね?叔父さんにも少しは…」
「いらんよ、そもそも唯一残った血縁はお前1人なんだし、俺は今までも充分助けて貰ってるから。」
そう言って叔父さんはニカッと笑った。