(9)
タツミは次の日の朝、日が登る前に目を覚ました。
旅に出る用意を済ますと村長の家の外で眠っていた、ラィヤとリィヤを起こしに行った。
「リィヤ、ラィヤ、この街から出るよ」
リィヤは「分かったぁ…」と言いながら大きな欠伸を一つした。
ラィヤはもうすでに起きていましたという顔でタツミを見た。
「タツミ…村長さんにお礼言わなくっていいの?」とリィヤがタツミに地上へ続く階段を上りながらそう聞いた。
「うん…俺達がいつまでもここにいるのはこの街にとって良くないんだ」とタツミは悲しそうな顔でそう言った。
均整師は闇と光の均整をとることが出来るがために逆に宙に散らばっている闇や光を必要以上に集めてしまう体質を持っている。
だから、一つの街に長く滞在することは出来ないのでいろんな街を廻る旅人とならなければならない宿命を持っているのだった。
「そうね…」とリィヤも下を向いてトボトボと階段を登って行く。
だから、タツミはいつも一人であった。
元々、均整師は天秤師、先導師、戦術師、結界師の5人1グループで旅をするのが敵しているのだが、パンドラ揺り篭という大事件が起って以来、グループを組むことが難しくなってしまったのだ。
リィヤはいつも13才のタツミに仲間がいないことが心配だった。
なぜなら、いつもタツミは街を出る時にとても悲しい顔をするのだ。
その顔を見るたびリィヤはタツミには仲間が必要だと感じるのだった。
仲間がいればタツミは悲しい顔などせずに楽しそうに旅をするだろうと、リィヤ思うのだった。
「もうすぐ地上に出るぜ」と前を歩いていたラィヤが嬉しそうな顔でそう言った。
タツミの元にも地上の光がうっすら届く。
階段を上り終わると外はまだ薄暗かった。
「あっ!日の出」とリィヤが声を上げる。
「本当だ」とタツミは街を照らしながら上がってくる日の出を眺めていた。