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(7)

出口は大量の光に溢れていた。「うっ…」とタツミは声を漏らし光の中に入っていった。


光の中には…街があった。部屋のように掘られた大きな穴の中にたくさんの家が立ち並んでいる。


タツミは街へと続く階段を降りて街の中へ入った。


多くの人々が行きかっていた。


街行く人の一人がタツミに気付いた。


「貴方のその装束…もしや均整師?」と彼はタツミに尋ねた。


タツミが無言頷くと彼は叫んだ。


「おい!村長を呼べ!!この街にもやっと均整師様が来てくださった。」


「均整師様!」


「均整師様〜」とたくさんの人がタツミを囲んだ。


やがて、年老いた老人がタツミの前へ出て来て言った。「わしはこの村の村長じゃ!よく来てくださった。均整師様よ!」


タツミは村長にフードを被ったまま何も言わずに頭を下げた。


「均整師様、話があります。どうぞこちらへ」と村長はそう言ってタツミを自分の家へ連れて行った。

そして、囲炉裏へタツミと二匹の犬を案内してタツミの前に座った。


タツミと二匹の犬もそこに座る。


「上の街は見てきたのかぇ」


「ええ…二重天秤ですね」

二重天秤とは、元々一つある天秤が片方に傾いてしまい、均整師がいない時に天秤師だけが行う苦肉の策であり、均整の応急処置みたいなものである。


一つの傾いた天秤を元に同じ天秤をもう一つ作り、その新しい天秤は多くなりすぎて傾いた天秤と逆に傾かせることで一時的に光と闇の均整をとるという天秤師だけが行う方法である。


これは上手く均整に保てることが多いが光と闇の量が多くなり過ぎてしまうのでかなり不安定な均整になってしまう。


「仕方なかったのじゃ。この街の天秤はフェデーレの均整師に傾けられ、わしらは戦争中に使っていたこの洞穴に逃げこんだのじゃ、いつ闇がこの場所を見つけてくるかという恐怖に脅えていた所に一人の天秤師が通りかかったんじゃ。事情を話すと天秤師は一人で街に入り、二重天秤を作ってくださったんじゃ。」


「…闇の世界であるこの洞穴が明るいのは二重天秤が平衡を取っていたのですね?」


「そうじゃ。地上の闇と、ここの光で均整を保っているのじゃ」

「とても危険で不安定な均整ですね?それに…そのやり方はここを全て照らすために必要以上に光が必要となる…光を増やすには闇を増やす必要があった。だから、あの加味一族を…時計台に閉じ込めた…そうですね?」


「…」村長は何も言わずに下を向いた。


「闇を増やすには人の恨みが一番有効的ですからね」

天秤師は闇や光を操ることはできないので二重天秤を作ると闇と光を作りだすために人の心を使う、闇を作りだすのは人の心の闇…孤独、憎悪、怒り、その中でも一番強い闇は人の恨みである。


加味一家は村長達とその天秤師によってあの時計台に閉じ込められこの街の光と闇の均整を保つための闇の媒体として使われていたのだろう。


「仕方なかったんじゃ。この街の多くの人を救うのに犠牲者は必要じゃったんじゃ」

「俺はただの均整師なんでその行為について責めることは出来ませんが…ただ、彼はほとんど闇に支配されていました。」


「そうか…」と村長は下を向いて言った。ほとんど闇に心を支配されたものの運命を村長は知っているのであろう。非常に暗い顔がうかがえた。


「さぁ、早く俺をこの街のもう一つの天秤に案内してください!上の天秤は均整してしまったのでこちらも均整しとかないとその内光の方に傾くでしょう」とタツミ。


「分かった。この街の天秤に案内しょう」と村長は立ちあがり靴をはいて外に出た。


タツミも村長の後に続き外に出る。


「天秤はあの時計台にある」と村長は村の真ん中にある大きな時計台を指す。


その時計台は地上にあった神時計とよく似ていた


「村長…地上にもよく似た時計台がありましたが?」


「地上のは神時計じゃ、あれは魔時計じゃ、この街に古くからある対時計じゃ」


「じゃあ、この街のシンボルとは対時計のことですね?」


「そうじゃ。元々は魔時計にあった一つの天秤を天秤師様が地上の神時計にも作り二つにして二重天秤にしてくれたのじゃ」と村長は時計台に向かって歩きながら言った。


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