(6)
タツミが時計台の入口まで来た時、闇の正体だった加味少年のそばに突然白いマントを来た人影が現れた。
その人は加味少年をじっと見つめている。
「だっ…誰だ!」とタツミが叫んだ。
すると、その人物は頭を上げタツミをフードの奥の赤い瞳で見つめた。
そして彼は白いフードを外して言った。
「俺は先導師のユメカ」
"バサッ"と長い金髪の髪が白いフードから落ちる。
「この少年を闇へ先導させてもらう」とユメカは加味少年を指さしてそう言った。
先導師とは基本的に闇や光の世界からこの世界に落ちてしまった迷い者を元の世界に返すことを仕事にしている者達のことを言う。
「まて!どういうことだ!!」
「この方は闇の中に長く居すぎてしまったため、この世界にいるのは危険なのよ」とユメカ。
「でも、人間だぞ?」
「そんなこと知ってるわよ。」
「それにこいつはこの街の被害者だ…それを闇へ連れていくなんて…」
「…そうね、でも、もう半分以上この人は闇の者よ?このままにしておいたら君だってどうなるか知っているでしょ?」とユメカ。
タツミは何も言えなかった。
確かに加味少年がもし本当にこの少女が言う通り、半分以上闇の人ならばこの少年はまた自分で闇を作りだし力をつけ、この街を飲み込んでしまうだろう…しかも均整師に闇を一度均整された者は均整師の力に触れているので以前より大きい闇を作りだすことができるのだ、そんな闇が生まれたらと思うと恐ろしく怖い。
「おっ…おまえは本当に先導師なのか?」とタツミ。
「そうね…」と少女は首にかかっているネックレスを手のひらに乗せてみせる。
「これで信じて貰えるかしら?」
少女の手のひらにはゴブリン象のペンダントと十字架のペンダントが光っていた。ゴブリン像の目には赤い石が埋め込まれており十字架には真ん中に透明な石が埋め込まれていた。これは先導師だけが持つ特別なペンダントである。
「これで分かったかしら?」と少女は笑って言った。
タツミはただ頷くことしか出来なかった。
「じゃあ、この子は俺が責任持って闇に先導しとくね?君は街の中心に行くと良いかもよ?」と少女はそう言って加味少年と一緒に消えた。
「街の中心?」とラィヤは不思議そうな顔で呟いてタツミを見上げた。しかし、タツミはもうそこにいなかった。
「えっ?ちょっ…タツミヤス!!」
タツミはもう街の中心に向かって走り出していた。
慌ててラィヤもタツミの後を走り出す。
「タツミ!街の中心分かるのか?」
「街の中心でしょ?中心にいけばいいんでしょ?」とタツミ。
「…」
ラィヤには言い返す言葉が見つからずただ、タツミの後について行った。
あ〜忘れていた…こいつまだ13才の子供だったんだと心に思いながらラィヤは走った。
やがて、一時間後街の中心らしい広場に出た。
「もう!タツミのせいで一時間もかかった〜」とリィヤ。
一人と二匹は一度、街の東の端まで走って行き止まりをくらい、戻ってやっと街の中心まで辿り着いたのである。
「いいじゃん!着いたし…」とタツミは言い放つと街の中心にある噴水を見上げた。
「まったく…中心に来れたのが奇跡だよ」とラィヤが文句をぶつぶつ言った。
それを半分聞きながしながらタツミは言った。
「そうだね…この噴水に青いボタンがあると思うんだけど…」
「青いボタン?…ここに青い石ならあるよ?」とリィヤが足元の敷き石の中に混じっている青い石を見ながら言った。
「…それ、押して!」とタツミ。
リィヤは前足で"カチッ"と青い石の上に乗った。
すると、"ゴゴゴー"という音と共に噴水がもちあがり地下へ続く階段が現れた。
「ビンゴ!」とタツミは言ってその階段を下って言った。
噴水の中は暗かったが中に取り付けられた青い電球が足元を照らした。
やがて、出口にたどり着いた。