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(5)

時計台の中は永遠と螺旋階段が続いていた。


螺旋階段を上り終わり、屋上へ出ると暗闇の灰色の中に小さな白い棒のような物がそびえたち、青い石が光っていた。


「この棒が天秤の棒でこの青い石を押すと…」とタツミは"ポチッ"と楽しそうに青い石を押した。


すると、青い石が引っ込み、金色の天秤が現れた。


その天秤の上には真っ黒な玉が一つだけ左側に乗っており、左に天秤が傾いている。


「あ〜こりゃ酷い…」とタツミが呟いているとリィヤが右側の受け皿の上に飛び乗った。天秤が今度は右に傾く。


「さぁ、パラリヤの光よ」とタツミは男の子に手を伸ばす。

うん」と男の子がタツミの手を取った瞬間、男の子の体は光輝き跡形もなく消え、透明な丸い塊がタツミの手の上で弱々しい光を放っていた。


タツミはそれを右側の天秤に乗せるとその光に聞いた。


「神時計の光よ、闇の名前を…」


弱々しい光を放つ丸い玉から男の子の姿をした光が現れて言った。


「闇の名はパラクロス」


その名を聞いた、タツミは目を閉じて呪文を唱えた、その呪文は聞いたことのない言葉だった。


呪文の最後にタツミは「パラクロス!!」と大きな声で空に向かって言った。真っ暗な空が割れた。


闇雲の中に青々としたキレイな空が見えた。


しかし、今度は霧が街全体を覆い隠していく。


黒い玉の中から霧の男の子が現れた。


彼がパラクロスである。


「あれ?何、どうしたの?」と彼は不思議そうな顔で言った。


パラクロスにかかっていた催眠が溶けたのだ。


ラィヤが左側の受け皿に飛び乗ったその瞬間、一瞬だけ霧が晴れ青い空がまた覗いた。


しかし、また霧に包まれる


「今からこの街の均整を取ります。」とタツミは天秤に向けて言った。


「ラィヤ?リィヤ?用意はいい?」


「オーケー」と二匹の犬は受け皿の上で声を揃えて言った。

タツミはずっと着ていたフードつきのマントを脱ぎすてた、初めてタツミの顔が霧の中に浮かび上がった。



日焼けした茶色い肌に所々に残る深い傷跡、そして灰色のような髪に紺色の瞳…彼の額には聖痕のように十字架が残され、彼の両腕には黒い刺青が施されている。彼は半袖の白いシャツを肩までまくしあげた。


「あなたは…もしかして今はなき街クーラの均整師カミュ?」と光が叫ぶ。


「光に街を消され、闇に体を取られたが、地獄の番犬ケロベロスの孫と神の飼い犬の孫と契約したって言う伝説の?」とパラクロス。

クーラの均整師カミュとは若干12才で均整師になり、ケロベロスの孫と神の飼い犬の孫と契約の印に体中に聖痕と魔族の刺青を受けたという、伝説の青年だった。


均整師は世界に20人弱しかおらず、その中でも光と闇の両方を均整させることが出来るのは3人。


その中の一人であり最年少の均整師である。


タツミは光と闇を見て笑った。

「俺の願いは一つ、光に消えた街を取り戻すことそうすれば闇に消えた体も戻ってくる…そのために俺は伝説の天秤を探している、どこかの街の光と闇を均整にすると現れる銀の天秤から蘇る神獣に闇と光に呑まれた物を一つ取り戻すことができるんだ」とタツミは言った。


「銀の天秤?」と光が聞きなおす。


「そう」とタツミはふわりと優しい笑みをこぼすとどこからか短い黒塗りの横笛を取りだすと息を入れ奏でる。


その笛の音色はかん高くなく低くもない中音というところだろうか?優しく綺麗な音だった。


タツミの聖痕と刺青が赤く光出し、霧が晴れていく。


天秤の上のリィヤの体から光が放出し、光の塊の中に入っていく、逆に闇は大きくなりすぎた闇がラィヤの中へと入っていった。


やがて、リィヤとラィヤが役目を終えたように天秤から降りるとクライヤは横笛を吹くのを止めた。


そして、黒いマントを拾い上げて身に纏いフードをかぶる。


「銀の天秤出なかったね?」とリィヤはタツミに言った。


「うん…そんなことより、この天秤新しい…」とタツミは天秤に触れながら言う。

「まぁ、もう動かないように安全レバーをしとくな」とラィヤは天秤の柱にあるレバーに飛びついてレバーを下に下げる。


街は暗闇の空から青い空へと変わった。闇と光の均衡が取れた証拠である。


「ねぇ?ラィヤこの街…」とリィヤは時計台の上から街の様子を見下ろしながらラィヤを呼んだ。


「何?」とラィヤがリィヤの元に走って行く…そして「タツミ!この街、人がいねぇ」とラィヤはタツミに話言う。


「そんなはず…」とタツミはいいながらリィヤとラィヤのそばで街の様子を見下ろして言葉をつました。

街には人影がない…こんなはずはない!闇に街が飲み込まれ、人消えたとしても全ての人を消すほどの規模ではなかったはずだ…それに均整を取ったのに人がいないのは何故だ?とタツミは少し考えてそして…


「まさか!」とタツミは時計台の階段を急いで降りて行った。


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