(2)
闇の中はモノクロ画像のように黒と灰色の世界が広がっていた。
街全てがモノクロの世界である。
色は黒と白と灰色で作られ、大通りであろう道には闇の気配独特の冷たい空気が地面に流れる。
人は誰一人見当たらなく辺りはひっそり静まり返り物音一つしない。聞こえるのは自分の鼓動。
闇は音や色全てを吸い取り街、全てを巻き込みながら増大しているのだ。この闇が隣の小さな町ヤンキスを巻き込むにはそう時間はかからないだろう。
タツミはそんなパラリヤの街の中を進んで行った。
もう全ての人が闇に飲み込まれてしまったのか?…とタツミは考えながら二匹とモノクロに描かれたパラリヤの街の中を進んだ。
街の中心まで来たところで白い犬のリィヤが何かを見つけて駆け寄った。
そして…。
「ワン」と一言吠える。リィヤの声は特別に闇のなかでもよく響く。なぜなら、リィヤは闇をコントロールすることが出来るから。特別な力を持ち、闇を自分の力で支配下またはコントロールできるものは闇の中で闇に支配されることはない。声を発したい時は闇をコントロールし声を闇に吸いこませなければいい。
タツミもこのタツミの傍にいる二匹も闇をコントロールする能力を持っている。だから、こそ彼らはこの闇に足を踏み入れることが出来、ヤンキスの住民にこの街の様子を見てくるように頼まれたのだ。
リィヤが走っていった所には一人の傷だらけの男の子が倒れていた。
タツミは駆け寄ると彼を抱き上げた。
意識がない…。
「おい!しっかりしろ!!」とタツミは男の子の頬を叩く。
「んっ…」と彼は唸るような声を出し、男の子は目を開けた。
そして、タツミの顔を見て驚くとタツミの体を押しのけて地面に転がり、腰を抜かしたように後退りした。
彼の目には深い恐怖が刻み込まれていた。闇に吸いこまれた者達の見せる表情と類似している。
「だっ…誰だ!」と男の子は必死に声を出した。
なぜ、この男の子はこの闇の中で闇に飲まれることもなく、言葉を発しているんだ?と首を捻りながらタツミは「俺はタツミ。そして、リィヤとラィヤ。」と犬を紹介してから、「均整師をやっている」と付け加えた。
「おまえがきんせいし…」と男の子は呟いた。
「はい」とタツミ。
「じゃあ、光と闇の調和をとることができんだろ?だったら、早くやってくれよ!」と男の子はタツミの服を掴んで必死に言った。
均整とは、その名の通り、物の調和をとる意味だが、とくには光と闇の調和をとることができる者達を均整師という。均整師はこの国の者なら誰でも知っている職業であり、均整師だからこそ彼らは闇をコントロールし、この街に入っても闇に飲み込まれることはなかった。
そして、この街の均整を取るため、タツミと二匹はこの街に入ったのだ。