(1)
この話はまだ、この世界の闇と光の均衡がとれてなかった時の話である。
「…助けて…」
と傷だらけの少年が暗闇の中で暗い空を見上げてそう呟いた。彼の周りには闇の住人が長い舌を動かし、彼をギラギラした目で狙っている。やがて、闇の住人は少年を囲み、飛びかかった。少年の悲痛な叫びが聞こえた。
そして…
少年は闇に飲み込まれた…。
しかし、その時
伝説の少年は生まれた…。
彼の名はカミュ。
光と…
闇に…
一度殺された者…。
「こりゃ〜ひでぇ…」と黒マントを身に纏い、顔が見えないくらいフードをすっぽり被った一人の少年がパラリヤの街の入り口でそう呟いた。
彼の名はタツミ。
タツミは街を回る旅人として、今日、この土地に初めて入った。
「街全体が闇に飲み込まれているよ…」と彼はパラリヤの街の無惨な光景を見つめて彼はそう呟いた。
パラリヤという街はこの国の南東に位置し、漁港の盛んな街だとして有名であったが、隣町のヤンキスという小さな町の住民によると5か月前ほどから街の住民と連絡がつかなくなり、街の上空に黒い雲があり不気味だということで旅をしていたタツミはどういうわけか隣街を見てきてくれとヤンキスの住民に頼まれた。
パラリヤは全てが黒い雲のような大きい闇の塊に覆い隠されており、街の様子はうかがえない。
でも、街の様子を見てくるように言われたからには闇の中に入るしかない。
しかし、そこは闇の世界…。
一度入れば暗闇に捕われ出ることが困難な漆黒の世界である。
でも、タツミにはどうしても入らなければならない理由がある。ヤンキスの住民に頼まれたから入るという理由以外にもう一つ大切な理由があった。
「よしっ!」とタツミは覚悟を決めた。
「リィヤ!ラィヤ!はいるぞ!」とタツミの左右にいる、黒い犬と白い犬にそう声をかける。
「オーケー」とタツミの左右にいる二匹の犬は声を揃えて闇に染まった街を見ながらそう返事をした。
タツミはその声を聞くと街にかかった黒い雲の中に一歩足を踏みいれた。
普通の人ならば闇に吸いこまれこの世から消え去っていただろう。普通の人間ならばの話だが…。
天海と成田が初めて二人で作り上げた話です。
楽しんでもらえたら光栄です^^