表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱入り娘は冒険に出る  作者: 陽ノ山猫太郎
一章
5/42

魔術師

「おお、おかえり。ってどうしたんだ?顔色が悪いが」

「戻りました。小鬼と遭遇したもので」

「なにっ、あの辺りは魔物はいないはずなんだが…。それよりも大丈夫か?怪我はしていないか?」

「大丈夫です、一体だけだったので運が良かったです。頂いた剣が役立ちましたよ」

「ほう、倒したのか。初めての依頼で魔物を倒すなんてこれは期待できそうだな。それよりもその顔色きっと毒をもらったんだ、早く解毒剤を」

「いえ、気持ち悪くなって吐いただけです」

「…おぅ」


 何その反応…というか今の私ってどんな顔色してるのよ。カイルさんも良い人なんだろうけど結構踏み込んでくるのね。


「とにかく報告してきますね」


 受付の女性に依頼の達成報告をする。


「おや?もしかして余計に持ってきちゃいました?それなら追加報酬ですよ」


 何か引っかかる言い方ね。


「ええ、ちょうど二回分です」

「へへへ、こんなのいくらあっても良いですからね。はい、銀貨二枚です」


 誰だよ。でも追加報酬は嬉しい。


「それにしても小鬼程度とはいえ予想外に魔物と出会って倒すなんてな。剣は誰に習ったんだ?」

「お父さんとお母さんに教わりました、それに魔法もいくつか。こんな感じに」


 ステータスボードをカイルさんに見せる。


「3つも持っているのか、ソニアちゃんの両親は優秀だったんだな。…ん?妙だな、魔法なのにスキルなのか?」


 カイルさんも変に感じたようだしやっぱり普通じゃないみたい。


「私も不思議なんです。今まで魔法だと思ってたけどスキルを教わってたのかな」

「いや、スキルは他人から教わっても自分では使えないんだよ」


 私の使える魔法はスキルで、でもスキルは教わっても習得できないから本当は魔法?

 もうわけが分からないわ…というかそもそも魔法とスキルって何が違うのよ。


「ただいま。あなた見ない顔ね、新人さん?」

「おう、おかえり」

「どうも…」


 長い茶髪に白いローブを着た少し背の高い女性がいつの間にかそばにいた。あと頭に猫の耳が生えてる。


「紹介するよ。コイツはディアンサ、うちの女房だ。俺と違ってまだまだ現役の魔術師で、ここで一番活躍してるんだよ」

「ソニアです、よろしくお願いします」

「見てくれこの子のステータスボード、妙なんだよ」

 

 魔術師ってこの前本部に行った時に聞いたわね。良い機会だし聞いておこうかな。


「あの、そもそもスキルと魔法って何が違うんですか?」


 その後、カイルさんとディアンサさんは色々と教えてくれた。

 

 まず魔法は自身の魔力を使って、その魔法のイメージに伴った詠唱を行い発動させるものだと分かった。そのため、使用者によって詠唱や魔法の威力は変わるらしい。熟練の魔術師は頭の中で素早く詠唱することで声に出さなくとも魔法を発動させることもできるようだ。

 そして魔法は他人に教えることができるようだ。その方法は簡単で、相手にその魔法を見せてイメージを掴ませるというものだ。

 これと同じ仕組みで魔術書を使えば実質一人でも魔法を習得できるようだ。


 一方でスキルは、はっきりとしたことは判明しておらず、魔法のように自分の魔力を使って発動させるものもあれば使わなくても良いものもあるらしい。

 詠唱は必要なく、他人にも扱えるようにすることはできないようだ。


 これで余計に分からなくなったのは、私が使える魔法はお母さんから教わったものなのにスキルという扱いになっていることだ。

 これ以上考えても仕方ないので、そういうものだと半ば諦める形で蓋をすることにした。


 ついでに気になったので魔術師や剣士のことも聞いてみると、自分の扱う武器やスキルによってそれぞれ職業として呼ばれているらしい。

 その職業として過ごしているうちにその職業と相性の良いスキルを覚えることもあるみたい。


「なるほど、大体理解しました」

「でも覚えた魔法がスキルになるなんてね、そんなことがあるものなのね」

「ディアンサ、せっかくだから何か簡単な魔法を教えてやったらどうだ」

「そうねぇ、これなんてどうかしら」


 そう言うと私に向かって手を突き出してきた。


「ウインドスラスト」

「あひゃんっ」

 私に向かって強い風が吹き付け、思わず持っていたステータスボードを落としそうになった。変な声出ちゃった。


「ふふっ、どう?使えるようになった?」


 ステータスボードを確認してみると


_______________________


スキル      魔法


アナライズ    ーーー

ファイア

シールド

ウインド


_______________________



「やっぱりスキルになってる…」

「ホントね、しかも表記が変わってるし」

「よし、とにかく試しに俺に撃ってみろ」

「…では遠慮なく」


 カイルさんに向かってさっきの強風をイメージしながら、『ウインド』を使う。


「おおっ、涼しい」

「やっぱりまだまだ弱いか…」


 カイルさんに向かって微風が吹き、前髪がフワッと上がった。


「でも魔法と同じなら練習すれば威力も上がるはずよ」

「そうですね、ありがとうございます」


 ファイアを覚えたばかりの時と同じだったから予想は出来た。

 あの時は火種くらいの大きさしか出せなかったからね。


「ああ、そうだ忘れるところだった。聞いてくれディアンサ、南門近くの草原で小鬼が出たみたいなんだ」

「ええっ、そうなの!?というかなんでそんな大事なことを先に言わないの」

「すまん…つい話に夢中になってしまってな。とにかくお前に調べて欲しいんだ」

「うーん、私はソニアちゃんに調べてもらうのが良いと思うの」

「え、いやいや難しいですよそんなの」

「ああ、ソニアちゃんにはまだ早いんじゃないか?」

「でもね、何だかソニアちゃんは大物になりそうな予感がするのよねぇ」

「何だよその漠然とした感じは」

「今日はたまたま一体だけだったから何とかなりましたけど…」

「そうだよなあ」

 

 ここでふとお父さんと動物の狩りをしている場面が頭をよぎった。

 

「複数を相手にするならバレていないところから弓を使って仕留めていくことしか思いつかないですね」

「え?いけそうな感じなの?というかソニアちゃん弓も使えるのかい?」

「ふふっ、やっぱり任せてみるべきよ」

「そうだなぁ、分かったよ明日までに調査依頼を出しておこう」


 何だか私が調査をしなきゃいけない流れになってるけど…これも経験ね、うん。予想よりもかなり早くなったけど魔物と戦うことも体で覚えていかないとね。


 ちなみにこの後近くの武器屋に行くと、銀貨5枚で弓と矢筒が買えた。思ったより安く買えて安心出来たけど、いよいよお金が底をつきそう…。


 昨日に続いてあまり気分が乗らないまま、宿まで帰る。

 とにかく今日は寝る時間まで教わった『ウインド』の練習しとこっと…。


ソニアはまだよわよわなので暖かく見守ってあげてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ