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9 ステータス病について③


「いやはや、ゲームとは奥深いものだな、色々と参考なったよ」

 いつものように先輩と向かい合い、二人で紅茶を飲む。ただいつもと違う点を挙げれば、今日は紅茶だけではなく、俺が持ってきた茶菓子が置かれていることだろうか。

「……参考になる?」


 さて先輩は何のゲームをしてきたのだろうか? 参考になるゲームとは何だ? 参考になるようなものって言ったらクイズや勉強系のゲームだろうか?


「ああ、人生の参考になった。まあ少しツッコミどころはあったがな」

 なんだかいやな予感がする。いや、待つのだ。まだ確定ではない。

「まったく、何でそろいもそろって親が都合良く海外出張しているのだろうか」


 いや、まだだ。まだツッコミを入れない方がよい。アレ系のゲームと確定したわけではない。

「それになんだ、ただの一生徒にファンクラブなんてできるわけがないだろう」

 おちつこう、まだ話は始まったばかりだ。


「挙げ句の果てに幼なじみの少女。なぜ薄着の主人公を起こす時に、わざわざ布団をめくるのだ、朝立ちまる見……」

「アウトぉぉぉおおおおお、それギャルゲかエロゲじゃねえか! 俺の現状を鑑みたら何の参考にもならねえよ。普通のRPGやってこい!」


 もう確定だ、査定するまでもなく、最低だ。パソコンのソフトといわれた時点でそっちを考えなければならなかった。


「はは、そう興奮するな。もちろんプレイしたいだろうから、貸してあげよう。今日しっかり持ってきた」

 鞄を取り出そうとした先輩を見て、思わず頭を抱える。

「どうしてその結論に至った!? てか生徒の模範になるべきはずの生徒会長が、学校にゲーム持ってくるとか前代未聞だよ!?」


「はは、そう興奮するな。興奮するのは、私の持ってきたゲームをプレイしているときにしなさい」

「そっちで興奮してどうするんだ、興奮のベクトルが明らかにおかしいだろ!」


「ふふ。まあ安心したまえ、例のRPGもプレイしたよ。恋愛シミュレーションの二十分の一程度の時間だが」

「比率おかしいわ、逆であるべきだよね!」


「あのRPGは確かにロード時間は長い。だがシナリオとゲームバランスが神だ、もっと評価されても良いと私は思う」

「短時間で核心にたどりついているだと!?」


 そこだよ、そこなんだよ。何であんなにもゲームは最高なのに、ロードが長いってだけで否定されなきゃいけないんだ。でもネ○ジ○CDお前はダメだ、堅い意味でダメだ。

「先輩はよく分かってる。まったく戦闘とか特に最高なのに、ファ○通はどうして低評価をつけられるんだ? 意味が分からない。あの……ん?」


 急に先輩は何かを思い出したかのように手を叩く。俺は思わず言葉を止めて先輩を見つめると、にっこり笑顔を浮かべた。

「さあ、そろそろ話を戻そうか!」

「おい……!」


 なにコイツ悪魔? 変態の皮を被った悪魔だよね? 何で俺が語ろうとした瞬間話を戻すの? なんで数少ない理解者に話をしようとした瞬間に止めるの?


「ははは、半分冗談だ。『あの』ゲームの話は後でゆっくりしようじゃないか」

「ほんとだな、言質は取ったからな」

「ああ。話を戻すぞ。私が思うにだな、エロゲやギャルゲにおける残念な点として、シナリオライターの統一がとれてないせいか、キャラクターごとによって違う物語になり、全体の統一感がなくなることなんだ。一番驚いたゲームは、初め一人称が『俺』だったのにいつの間にか『僕』になっていたやつだな……パッチで直ったが」


 確かにゲームによってはキャラクターが記憶喪失したみたいに別人間になることはあるな…………って。

「おい、ちょっとまて」

「どうした、急に怖い顔をして」


「何でお前は俺の語りたいRPGをぶった切ったくせに、自分の語りたい恋愛シミュレーションをこれでもかと語るんだ? 話を戻すかって言ったのはステータス能力じゃないのか?」


「決まっているだろう、恋愛シミュレーションを話したいのだ! そもそも話せる人が君以外に居ないっ!」

 確かに、恋愛シミュレーションは、RPGよりも語る相手をえらぶよな。


「でもだからって、俺の話ぶった切らなくても良いじゃねえか!」

「それは君の反応が面白かったから、ついな」

「おい……」


 先輩は気持ちいいくらいの表情で、しばらく笑っていた。彼女が落ち着いてようやく本題に入る。

「それで先輩はゲームをプレイして分かったことはありましたか?」

「うむ、ゲームをプレイして分かったことだが、君の能力についてよく分からないことが分かった」

「全くもって意味がないじゃないですか……」


 そうなるとは思っていたけど、結局こうなったか。

「きみの状況再現をしようと徹夜もしてみたのだが、何も代わり映えしないな。チュンチュンし始めたときには、充実感と倦怠感と行き先のない不安とほんの少しの後悔が混ざったような、言葉にしがたい感情になったよ」


「やべえ、気持ちがめちゃくちゃわかる……」

「まあ、私の話は置いておこう。ステータスのデザイン元になったゲームが存在しないように、ゲーム自体は関係がないかも知れない」


 で有れば俺の体がおかしいって話になる。だが調べても、何ら異常をきたした点を見つけられない。堂々巡りじゃないか。

 まあ俺のことはいったん置いておくとしよう。それにしても。


「それにしても、徹夜までしてくれたんですか?」

「気にしないでくれ、ゲームが意外にも面白くてな」


 なんだかんだで面倒見が良い、というか結構親身になって対応してくれる優しい先輩ではあるんだよなぁ。しかも俺に気を遣って言葉選んでくれるし。ただ変な性癖が色々ぶち壊してるけれど。


「そうなると、やっぱり原因は俺の中に、ってことですね」

「そうだ……君は宇宙人と遭遇でもしたか? それとも超能力者、あるいは未来人に脳でもいじられたか? 実はクラスメイトが神だったりしないか?」


「もう常識からぶっ飛びましたね」

「そもそも常識ではステータスなぞ見えん。今は科学と物理法則なんてゴミ箱に入れてしまった方がいいだろう。ぶっ飛んだ発想こそ今一番求めるものだ」


 一理有る、どころではない。今回の場合、常識外れに常識で挑むのが間違いなのだ。現に普通のことでは結論なんか出ず、ことごとく惨敗している。

「ステータス病を治すよりも、ツチノコとか人魚を見つける方が楽かも知れませんね」

「言いえて妙だな。人魚の血を飲めば治るかも知れないぞ。もっとも、不老不死になってしまうかも知れないがな。さて、進展など全くなくて申し訳ないが、もうすぐ下校時間だ。また別の案を考えてくるよ」


 先輩は立ち上がってティーカップを片付けはじめるも、何かを思い出したのか手を止めこちらを見る。

「そうだ。先ほど話していたあのゲームを持ってきているんだが、どうする?」

「あのさぁ…………すいません、是非貸してください」


 ボロクソ言ってたけど、実はめちゃくちゃプレイしてみたかったんです。


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