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8 ステータス病について②


「おっしゃった言葉の意図がまったくわかりません」


 原因追及の為に俺の体を調べるというのはまだ分かる。だけどカメラを置いて服を脱げは意味が分からない。


「大丈夫だ、君のがたとえ小さくとも大きくとも、機密として保持することを会長の名にかけて誓おう」

「おーい話聞いてますか? 先輩は何の話をしているんですか?」

「ナニに決まっているだろうっ!」


「何で半ギレなんだよ! てか決まってねえよ、そもそも何で脱ぐことになってんだよ!」

「君は阿呆か? 調査の上仕方のないことなんだ!」

「しかたなくねえよ、阿呆は先輩だろう! それに何でごついカメラ出してるんだよ、何を撮るつもりだったんだよ」


「ナニに決まっているだろうっ!」

「一文字一句同じ言葉言いやがった!」

 でもネタをふった自分も悪いと思ってます! 乗った先輩も悪いです!


「写真は記録として保持しなければならない。なに、安心して良い。百万するらしいカメラを実家から借りてきた。ちなみに現像はプロに任せる」

「根本的におかしいし、一切安心できねえよ。それに現像プロに任せたら俺の写真が他の人に見られるんだろ、ふざけんな!」


「まさかっ……! 君は私以外に見られるのがいやなのか!?」

「何でアンタは少し嬉しそうなんだよ、誰にも見られたくないわ! アンタみたいなドMと一緒にすんなっ!」

「ドM……」

 何で先輩は恍惚とした表情を浮かべているんですかね……。

「先輩、少し落ち着きましょう。話が進みません」


「そうだな、楽しい掛け合いも終わりにして、本題と行こうか」


 そう言って先輩はカメラをしまう。

「ってカメラ使わないのかよ!」

「うむ、この話のネタにするために持ってきたのだ。重かった」


「先輩本当に成績優良者なんですか? お金で成績買ってないですよね?」

「失礼な、実力で学年一桁を保っているぞ」

 とてもじゃないが信じられない。顔に出てしまっていたのか、先輩は笑いながら話を戻す。


「さあ、それでだ。もちろんではあるが、君は眼科には行ったのだよな」

 それはもちろんである。

「ええ、行きましたよ。ご覧の通りです」


 それで直っているんだったら、相談などしない。そもそも眼科に限らず、自分が簡単に思いつくものは大体試した。眼科なんて即行った場所の一つだ。残念なことに異常なんて全く見当たらないどころか、視力の悪化さえない。よもや以前より視力が上がる始末。


「では脳の検査は行ったことはあるだろうか?」


 それに関しても肯定。

「有ります。まあステータスのことで検査したわけではないんですけどね」

「つまり、どういうことだ?」

「事故ったんですよ。それで頭を軽く打って、一応検査しようってことでMRIを。脳には異常は無くて、直接ぶつかった足の骨を折ったぐらいでしたね」


「なるほど……な」

 先輩は腕を組み何かを考える。

「迷宮入りだな……」

「やっぱりそうですよね。ここまで考えてくれただけでも嬉しいです。有難うございました」


 正直に言えば解決なんてするわけ無いだろう、そう思っていたし、現にそうだっただけだ。ネッシーが実在するだなんて信じるヤツが居るだろうか。同じだ。そう考えれば先輩は希有だった。信じて相談に乗ってくれただけでもありがたい。


「待ってくれ冗談だ。私を捨てないでくれっ」

「何ですがるように言うんですか……」

 あなたは恋人に捨てられたヒロインか何かですか。


「まあ、捨てないでくれはもちろん冗談だ。ちょっと予定が狂ったからボケただけだ。MRIにぶち込めば何か分かるかとも思っていたが、すでにした後だというではないか」

「これでも二年はこの能力と付き合いがありますからね……たいていのことは試してますよ」

「そうか……では再度別のアプローチをしてみようと思う。君には申し訳ないのだがまた少し時間をもらえないだろうか?」

「……何するんですか?」


 先輩には俺がやったことのリストを作って渡した方が良いかもしれない。せっかく先輩が考えてくれたのに、無駄骨に終わる可能性もある。


「楠君は長時間ゲームをしたことが起因でこの病気が発症したのでは? と言っていたな」

「話がすごく飛んだ気がするのですが……」

「まあ聞いてくれ。それで、だ。事の発端はゲームであるなら、ゲームというものを知ることも必要なのではないかと」


 言いたいことは分かる。病気になる原因を調べることで、対処法を見つけ出そうと言うことだろう。

「まずゲームを知ることから始めようかなと思っている。聡い君は気がついているかも知れないが、私はゲームをしたことがない」


 頷いて肯定を示す。


「で、だ。君の病気の原因となったであろうゲームをしてみようと思う」

「え、本当ですか? わざわざそこまでして貰わなくても……」

「いや、君が気にする必要は無い。多少だけ内心を吐露してしまえば、前々からゲームには興味があったのだ。君には悪いが良いきっかけだとも思っている。そう気にしないでくれ」


 そう言ってくれると助かる。ゲームが嫌いだとか面倒だとかつまらないと思う人も居ることだし。

「むしろすまないと謝るのは私の方だ」

「え、どうしてですか?」

「こんなに頼りない上に、調べたりするのに時間をかけてしまって」

「そんな、滅相もない。全然急いでませんよ。俺自身はもう一生付き合うものと諦めてますから、思いついたときにアドバイスしてくれるとか、相談に乗ってくれるだけで十分なくらいです」


 正直言えば完全に諦めてるし。将来仕事をするときは、人と出会わない仕事にしようと思っているぐらいだ。そんなの有るんだろうか……。

「では時間を貰おう。そうだな三日……いや、二日だ。二日まってほしい」

「二日待つ……ですか?」


 とっさにスマホを起動してカレンダーを見る。今日は金曜日であるから、土日にゲームをプレイするのだろう。

「分かりました。ではあのとき俺がプレイしていたゲームを貸し……」

 ますよ、と言おうとした。しかしそれは先輩が手を前に出し、首を振ったことで遮られた。


「いや、貸してくれるのはありがたい。だが少し待ってくれ。君は一つのゲームだけをやっているわけではなく、いくつかのゲームをプレイしている。それに相違ないか?」

「ええ、そうですけど……」

「ならば私もいくつかのゲームをプレイしてみようと思うのだ。無論君が直前にしていたゲームもプレイする予定でもある」


「なるほど、原因は一つのゲームのせいではないかも知れませんしね」

「それに、だぞ。ゲームというのは多岐のジャンルに分かれていて、それぞれの得手不得手やら好みがあるそうじゃないか」

「まあ、そうですね」


 アクションが好きな人が居れば苦手な人も居るし、頭を使うパズルや戦略シミュレーションを苦手な人も居る。作業のように単調なゲームが苦手な人だって居る。


「最初に自分に合わないゲームを始めたら、ゲーム自体を嫌いになってしまいそうでな。だからこそ最初は私がしてみたかったゲームを始めてみようと思っているのだ。それから君のプレイしたゲームをしてみようかと」


 うん。良い考えだと思う。俺が直前にプレイしていたゲームははっきり言って難易度が高い。それならばまず別のゲームでコントローラーのボタン配置になれたり、戦闘のシステムを覚えたり、反射的にボタンを押す訓練をするのも良いかもしれない。


 そもそも俺はこんなクソ体質になってしまったけれど、ゲームを心の底から憎んでいるわけではないし、むしろまだ暇なとき遊ぶくらいには好きだ。まだ知り合ったばかりの人とは言え、嫌いになられるくらいなら好きになってもらいたい。


「分かりました。じゃぁハードだけでも貸しますか?」

「いや、大丈夫だ。一応ゲームに興味はあったから、機会があれば買おうと思ってお金は貯めていた。それに私がプレイしたいゲームはパソコンソフトにあるしな」


 確かに洋ゲーはパソコンでできる物も多いしMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム)なんていわずもがなだ。最近人気のゲームもPC版が出ることは多いし、パソコンがあれば意外に遊べるんだよな。


「分かりました、では二日ですね。ちょうど今日は金曜日ですし……月曜日ですかね」

「そうだな。月曜の放課後ここに来てくれ」


 その後先輩と連絡先を交換し帰路についた。


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