10 須藤 都
すまない。掛け合いじゃなくて本編なんだ。
…………本編進めてすまないと謝るのは初めてです。珍しいパターンだと思う。
「陸、最近放課後何してるわけ?」
「ええと、なんだろ。相談っつうか、超常現象の研究かな?」
そう言って焼きそばパンを頬張る。
「いや、意味わかんねえっつーの」
たしかにそうだと思う。でもそれ以外に言い様がないんだが。
「まあツチノコでも探していると思っていてくれ」
「んなの、見つかる訳ねえだろ」
「俺もそう思うわ」
解決案なんて見つからないし、最近なんてもっぱら談笑会。これが意外なことに楽しい。
「久々に遊びに行かねえか?」
そう言われてみれば、ここ最近竜と遊びに行ってない。週一くらいで竜含む誰かと買い食いしたり、カラオケ行ったりしていたというのに。
「まあ、いいぜ。今日と明日はあいてるし」
先輩は生徒会の仕事があると言っていたから、今日は家に帰る予定だった。
竜は指を鳴らすと、ニッと笑う。
「陸ならそういうと思ったぜ、実はな……都にプレゼントを買いに行こうと思っていてな」
そう言う竜の顔をじっと見つめる。
名前 須藤 竜
性別 男
職業 学生
属性 妹萌
戦闘力 91
学力 31
魔力 5
妹萌力 12000
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「ああ、都ちゃんの誕生日週末だもんな、俺はもう買ったよ」
「あン? 何でお前が買ってるんだヨ?」
おい、般若の形相になってるぞ、ほらそこに腰を下ろして落ち着け。
「おいおい、俺前に都ちゃんから誕生日プレゼントもらってるから、お返しだよお返し。つかもうこれ何年もしているだろ」
去年もその前の年もバレンタインやら誕生日やらはプレゼントあげ合ってるだろ。つうか仲の良い友人だったら普通だろ、お前にも誕生日プレゼントあげただろ。
「良し、そいつを出せ。俺が見るも無惨な姿にして火をつけてやろう」
見るも無惨な姿にするのに、追い打ちとばかりに火をつけるのか。都ちゃんへの曲がった愛が伝わってくるな。
「おいおい、それにだぞ。お返しするって話してるから、もらえないと分かると都ちゃんが悲しむんじゃないか?」
竜は葛藤し何かをぶつぶつ呟くも、どうやら整理できたようで小さく頷いた。
「そ、そうだよな。都が悲しむことを一番してはいけないよな。それで、何を買ったんだ?」
ド級のシスコン持ちは妹が絡むと本当に面倒だ。
「ああ、文房具だよ」
「ふーん。陸は文房具とか好きだもんな。でもさ、お前使ってるあの巻物みたいなペンケース、使いにくくねえか? マジねえよ」
「確かに使いにくいことは否定できねえわ、でもデザインが好きなんだよな。たしか都ちゃんも俺の色違いのペンケース使ってたぞ?」
あまりペンが入らないから、はさみとかのりとか大きめの文房具が入るペンケースも、一緒に持ってるらしいけど。
「都がっ? あのペンケースは最高だよな。なあ陸、そのペンケース俺にくれよ」
妹のことになると瞬時に意見を変えるお前に、あきれを通り越して感心するよ。
「ふざけんな、自分で買え」
「あれって高けえじゃん。俺が出せるのは五百円までだ」
お前の使っているプラケースもセンス良いと思うけどな。ただ、貼ってるドクロシールはダサイと思う。つかいつも思うが、お前はいつも最終的にダサイチョイスをするよな。
「さすがにそれに比べれば高いな」
「だろ。まあペンケースはいいや。とりあえず帰りはどっか行こうぜ」
「おっけ。ちなみに何あげる予定だったんだ?」
ドクロの指輪とか言ったら、都ちゃんにメッセージを送ってあげよう。受け取るなよ、受け取るなら覚悟した方が良いよと。
「ふふ、完璧な物を考えてるぜ。テレビCMを食い入るように見ていたから、確実に欲しいだろうな」
うん。なぜだろう、めちゃくちゃ心配だ。フグを初心者が調理すると聞いたときぐらい心配だ。
「ま、マジか。それで結局なんなんだよ、言えよ」
竜は不敵に笑うと、両手を広げる。そして聞いて驚けと前置きし、
「ダイエットグッズだ! な、都が欲しそうだろう?」
そんなことをのたまった。
確かにそれは都ちゃんが欲しいと思っている物かも知れない。でもな、
「俺が都ちゃんの立場だったら、お前と一生口聞かねえわ」
人によってはそれ爆弾だぞ? デリカシーが欠如してる。
教室を出て校門を出ようとしたとき、ふと見慣れた顔を見つけた。
「お、陸。生徒会長じゃん」
竜も見つけたのか、俺に声をかけてくる。
「みたいだな」
壬生先輩の周りには二年の男子生徒と、一年の女子生徒がいる。流れてくるステータスを確認するに彼らは生徒会役員のようだ。
『この件はいいだろ。さあ、次だ』
『では生徒会室ですか?』
『ああ、君たちは先に戻っていてくれ。報告ついでに鍵を返してくる』
まるで別人だ。初めて会った時のように彼女は凛としていて、おちゃらけた様子はない。先輩と二人で会う時以外はいつもこうだ。
一応あのぶっ飛んでいる性格は隠しているのだろう。
正直、隠せてるのは奇跡だと思う。
「竜、行こうぜ」
「だなぁ」
靴を履き替え校門を抜ける。いつもの電車に乗って竜を目的の場所へ連れていく。都ちゃんに向けてプレゼントを贈るなら、やはりここだろう。
「ええとこのビルは……大型雑貨店かぁ」
竜はぽつりとつぶやく。
「ネタにも実用的にも行けるし、なにより手ごろだろ」
「だな。お、マジか。陸あれ見てみろよ」
竜に指さされた場所を見つめる。幾人かの人が足を止めて広告を見ている。それと同時にいくつかのポップアップステータスが表示された。
「これは神の思し召しに違いないな!」
目を凝らして広告を見るとそこにはダイエットフェアと書かれていた。もしこれが神の思し召しならば、神は『都ちゃんに嫌われてしまえ』と言っているに違いない。
「二階だそうだぜ!」
「そっか。俺、帰るな」
というと、竜は慌てて俺の服をつかむ。
「じょ、冗談だろ!」
お前目をキラキラさせてただろ。
「まあいいや、そんで予算は?」
と俺が聞くと彼は手をパッと開く。指は五本立っている。
「五千円か、結構出すんだな」
「おいおい陸。何言ってんだよ、五万だ。俺の十ヵ月分の小遣いだ」
「お前は普段ケチなのに、どうして妹に関しては金銭感覚がマヒするんだ?」
いるよな、趣味には全力で金かけるけど、それ以外は極力切り詰めるやつ。つかお前は妹に全力出しすぎだ。いや、ふんぞり返らなくていいから。
「……まあいいや。とりあえず行こうぜ。俺のおすすめは四階の文房具屋だな」
「おう、じゃあ四階に行こうか」
女性が多い店内を進み、四階へ行く。ビルの一フロアがほとんど文房具で埋まっているここは、面白い文房具やおしゃれな文房具が多い。
「なんかめぼしいのあるか?」
「よくわかんねえな。とりあえずこのスイカペンは無いな」
そういってスイカとかミカンが頭についたボールペンを一本手に取る。それ都ちゃんだったら美味しそー♪ とか、面白い! とか言って手に取りそうだけど。
「おいおい、陸どうした。頭痛でもすんのか?」
「いやちげえよ。どうやってお前にマシなの選ばせるかに頭を悩ませてただけだ」
そんだけ好きなら妹の趣味くらい知っとけ。
それから一時間ぐらい物色し、何とか都ちゃんの趣味に合いそうで竜が納得できる商品を買った。
「精神的に疲れた」
誰か代わってほしかった。彼には非常にこだわりがあるようで対応が面倒だ。でも俺が引くと都ちゃんが被害受けるんだよなぁ。
「おうすまんすまん。飲みものおごるから行こうぜ!」
とカフェに行こうとしたときに、ふと後ろから声をかけられる。
「あれ、陸お兄さん?」
俺と竜は同時に振りかえった。
名前 須藤都
性別 女
属性 妹
戦闘力 20
学力 50
魔力 10
妹力 820
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そこには中学校の制服を身にまとった都ちゃんとその友達らしき人が立っていた。
もう一話つづくんじゃよ