1 プロローグ
サブタイトルは仮です。もし良いのが思い浮かんだら変えるかもしれません。
ゲームは一日一時間だなんて昔は言われていたらしい。
母の兄妹がそのことを祖父祖母に口酸っぱく言われていたそうだ。どうやら母はそれを継承してしまったようで、ことあるごとにゲームは一日一時間と俺に言った。
だけど俺はそう思わない。たとえ二時間だろうが三時間遊ぼうが、やらなければならないことをしっかりやって、テストで良い成績さえキープできれば遊んでも良いのではないかと。
そもそも偏差値の高い大学にだって、ゲームの好きなやつは腐るほどいるだろう。日本で一番偏差値の高い大学にゲームのサークルがあるし、その大学を出たプロゲーマーだっていたはずだ。
要はバランスなのだ。そう、遊んだ分どこかでバランスを取れば良いのだ。現にうちの母だって、学年三位の成績を取ってからぱったり文句を言わなくなった。もちろん成績を大きく落とせば口酸っぱくゲームやめろ、勉強しろと言うのだろうが、成績さえ取ってしまえばなんてことは無い。だから俺は好成績を維持しながら心置きなくゲームをする。
とはいえ『やり過ぎ』は良くない。
スポーツだってそうだろう。体を酷使してしまえば、体調を崩したり怪我をする。カラオケやらボーリングやらで遊びすぎれば学力が落ちるし、お金もなくなる。勉強だってしすぎればストレスはたまる。薬だって摂取しすぎれば毒になるし、最悪の場合死に至る。
ゲームだってそうだ。あまりにやり過ぎてしまえば学力、視力、体力、親からの評価。落ちるものはたくさんある。今のスマホゲーム全盛期ならばお金を失う事もあるだろう。
でも一番やばいのは……見えてしまうことである。
「おい、見てみろよ」
飛んでいた意識が竜の声によって一気に戻される。
「生徒会長だぞ。やっぱすっげぇ美人だよなぁ……」
彼の視線の先には学生達から遠巻きに見られている一人の女性がいた。
壬生智花生徒会長。
彼女の人物像を客観的に言うと、理想という文字をそのまま人間にしたような女性だろう。容姿端麗、頭脳明晰、文武両道、才色兼備。彼女を褒める言葉は尽きることはない。
もちろん俺はそれらの言葉を否定するつもりはない。実際にそうなんだろうと思うから。
彼女が凜と立ち挨拶する姿を見ていると、同じように眺めている男子生徒が『お近づきになりてぇ』なんて呟いた。
「確かにちょっとお近づきになりてぇな」
隣にいた竜もその言葉が聞こえたのだろう。ウンウン頷いていた。
「そうは思わないか、陸?」
呼ばれた俺は首を横に振る。
「そうかぁ? 俺は関わりたくないな……」
「マジかよっ!?」
大げさに驚く竜に向ってもう一度「関わりたくねえな」と言うと、今度はかすれるような声で「マジかよ」と呟いた。
竜は『見えない』からお近づきになりたいなんて言うんだろう。俺のように『見えて』しまえば関わってはいけない人物だと分かるはずだ。
ただゲームが好きな竜であれば、もしかしたら『見える』ようになるかもしれない。
「そういや竜、お前昨日買ったゲームやったか?」
「おう、やったぜ。徹夜でな!」
見れば竜の目の下には小さなクマができている。授業の内いくつかは昼寝に費やすであろう。
「あんま徹夜でゲームをやり過ぎんなよ……やり過ぎるとな、見えるようになっちまうぜ?」
そういうと、竜は『はぁ?』と首をかしげた。
「何が見えるようになるって言うんだよ」
「そりゃぁ……」
俺は彼の頭の上に浮かぶ緑色のバーを見つめる。
「ステータスだよ」
俺がそう言うと、竜は一瞬真顔になるも、プッと吹き出した。
「だーはっはっはっは! 何言ってんだよお前! ゲームのしすぎで頭が狂ったんじゃね? 最高におもしれえわ!」
「ははっはははは、ははははは、俺もそう思うわ!」
口で笑いながら、心で泣いていた。俺は彼から目線を外し、生徒会長へ向ける。
彼女の頭の上には透過している緑色のバー、そして彼女の前には――
名前 壬生智花
性別 女
属性 ドM、生徒会長
戦闘力 260
学力 180
擬態力 720
独占力 1200
変態力 62万20
変態抑制力 62万
……now loading
――そんな文字列が浮かんでいた。
新作始めました!
今月中は毎日更新予定ですが、仕事都合で飛ばす日もあります。
よろしくお願いします!