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うつぼ作品集  作者: utu-bo
40/65

子供電車

タクヤは砂場で一人遊び。

スコップで山を作って。

山にトンネルを掘って。

おもちゃの電車ががトンネルを通ったところで。

山が崩れ。

トンネルが崩れ。


『事故です。大変です。』


タクヤはおもちゃの救急車で。

おもちゃの電車を救出へ。


『レスキュー!レスキュー!』


崩れた山からおもちゃの電車を救出すると。

おもちゃの電車に切符が挟まってました。



【こどもきっぷ】


タクヤでも読める、大きな平仮名で。


【こどものくにゆき】


そう書いてありました。




【ちゅういがき】


【このきっぷはこどもしかつかえません。】


【このきっぷをおともだちやおとなのひとにあげてはいけません。】


【このきっぷでのれるのはこどものくにゆきのこどもでんしゃだけです。】


【もちろん、かくえきていしゃはしません。】


【だけど、どこのえきからでもこどもでんしゃにのれます。】


【こどものくにではゆうえんちでまいにちあそべます。】


【こどものくにではあさひるばんのおやつがあります。】



【そして、さいごに】



【とてもだいじなことです。】



【このきっぷのことはひみつにしてください。】


【たとえだいすきなままであっても、ぜったいにひみつにしてください。】




タクヤは【こどもきっぷ】をポケットにしまい。

傷だらけの小さな手で握りしめます。


砂場セットを片付けて。

早くおうちに帰らないと。


手も足も綺麗に洗って。

服も着替えないと。


ママとあのおじさんが帰ってきて。

ママの見ていないところで。

あのおじさんがまた怒ります。


『ちゃんとしつけないと。』


あのおじさんの口癖です。


タクヤは公園の時計を見て。

胸がドキドキしました。


『おうちにかえりたくない。』


タクヤはポケットの中の【こどもきっぷ】をぎゅっと握りしめ。

ママとあのおじさんよりも。

早く家に帰るため。

傷だらけの小さな足で。

走っていきました。






『ちゃんとしつけないと。』


あのおじさんがやっぱり言います。


手も足も綺麗に洗って。

服もちゃんと着替えたけれど。

お味噌汁をこぼしてしまいました。


ママの見ていないところで。

あのおじさんが真っ赤な顔で怒って。

タクヤに痛いことをしました。






タクヤは布団の中で震えながら。

【こどもきっぷ】の注意書きを読み返します。



【たとえだいすきなままであっても、ぜったいにひみつにしてください。】



『大好きなママじゃない。』


タクヤは傷だらけの小さな手で。

【こどもきっぷ】を握りしめました。






『ぼくはこどものくににいきます。


まいにち、ゆうえんちであそべて。

あさひるばんのおやつがあって。

こどもでんしゃにのって。


おじさんのいないばしょへ。

ぼくはいきます。


だいすきだったままへ。


さようなら。』



タクヤは習いたての平仮名でママに手紙を書きました。


そっとママの鞄に入れて。

【こどもきっぷ】を握りしめて。

町の駅まで走ります。




あのおじさんに見つかったら。


『ちゃんとしつけないと。』


そう言って。

ママの見ていないところで。

きっと痛いことをされる。



タクヤはドキドキしながら。

駅員さんに【こどもきっぷ】を見せました。


『小さいのに1人でえらいねぇ。』


駅員さんは笑って。

頭を撫でてくれました。



『真ん中の階段を下りて、3番乗り場だから、間違えないでね。』


駅員さんは優しく教えてくれました。



タクヤは駅員さんが教えてくれた通りに。

3番乗り場で座って。

子供電車を待ちます。


『こどもでんしゃって、本当に来るのかな?』


『もしあのおじさんに見つかったら?』


『ママは手紙を読んでくれたかな?』


色々、考えて。

胸がドキドキしていたら。


【キキィ。ガッチャン。】


3番乗り場に虹色の電車が止まりました。


【こどものくにゆきぃ?。こどものくにゆきぃ?。】


放送が鳴り。


【シュ~ガチャ。】


電車の扉が開きました。


タクヤがそうっと電車に乗り込むと。

タクヤと同じくらいの子供達が座席に座っています。


目の上に傷がある子。

青アザがいっぱいある子。

顔を下に向けたまま、目を合わせない子。

松葉杖をついてる子。

白いギブスを巻いてる子。


みんな不安そうに座っています。


タクヤも空いてる座席に座りました。


すると。

車掌さんが来て。

タクヤの前で止まりました。


車掌さんは大人の人でした。

青白い顔と。

真っ白い髪の毛が。

車掌さんの帽子の影から見えます。


タクヤは車掌さんの目を不安そうに見ました。


『大丈夫だよ。もう怖くないからね。あのおじさんから守ってあげるからね。』


傷だらけの小さな手を優しく包んでくれて。

タクヤは涙が止まりませんでした。



大好きなママも助けてくれなくて。

ずっとあのおじさんが怖くて。


僕がいるから。

僕がいるから。

いけないんだと思って。


僕がいなければ。

僕がいなければ。

大好きなママもきっと幸せなんだと思って。



大好きなママに助けてほしくて。




『大丈夫だよ。好きなだけ泣いていいんだよ。』


車掌さんはぎゅっと抱きしめてくれて。


『今までよく頑張ったね。』


車掌さんの声が暖かくて。

よけいに涙が止まりませんでした。











【こどものくにゆきぃ、発車します。】


車掌さんがマイクに口を当てて。


【シュ~】


子供電車の扉が閉まりかけて。


『タクヤーッ!』


聞きなれた声が聞こえます。


『タクヤ?ッ、どこぉ?っ?』


大好きだったママの声です。


タクヤは閉まりかけた扉の前に立ちました。


『ちゃんとしつけないと。』


あのおじさんの声が耳にこびりついて。

足がすくんで、動けません。


すると。

誰かがタクヤの肩を押しました。


『ママが呼んでるよ。』


タクヤの後ろには。

不安そうに座っていた子供達がいました。


『行けよ。』


『ママのこと、大好きなんだろ。』


『早く。』


『扉が閉まっちゃうぞ。』


子供達がタクヤの背中を押してくれて。


【ガチャ。】


子供電車の扉が閉まりました。





駅のホームで。

タクヤはママに抱き締められて。

ママの温もりに涙が止まらなくて。

子供電車が発車していきました。







タクヤは今、施設にいます。

ママは自立支援の保護を受けながら。

1人で暮らして。

1人で働いて。

月に3回、タクヤとの面会が許されてます。


『一緒に暮らしたいけれど。』


タクヤもママもそう思っています。

でも、今はできません。


『寂しいね。でも、仕方ないね。』


ママはそう言って。

自分がいけなかったからと。

自分に言い聞かせています。


だから。

月に3回ある面会の日には。

手作りのお弁当を作って。

タクヤと2人で食べて。

たくさんお話をします。





子供電車の扉が閉まる時。

車掌さんが言いました。


『【こどもきっぷ】をなくさないようにね。いつでも守りにくるからね。』


だから。

タクヤはポケットの中に。

【こどもきっぷ】をいつも握りしめています。





『早く一緒に暮らせるといいね。』


大好きなママが言うと。


『うん。僕、待ってるから。』


と、タクヤは嬉しそうに笑いました。







【おしまい】

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