最初の街にて【1】
キュリオスとの査定を終え、大樹の麓に降りた俺たちは、賑やかな街に入っていた。
『ほらほら!ここが最初の街、初夢タウンだよ!』
モルペウスは俺の腕を引っ張って商店街を横切っていく。
「思っていたより広いんだな…」
賑やかな繁華街だ。魚や果物などの食品やレストランはもちろん、居酒屋とカジノまである。
少しばかり歩くとモルペウスが1つの建物を指さし、
『ここが今日泊まる宿屋ね!ごめんくださーい!部屋空いてますかー?』
〈申し訳ありません、お客様。今は一部屋しか空いておらず、代わりに少し安く致しますがいかがですか…?〉
まだ会って少ししか経っていない異性と同部屋で一夜なんてモルペウスも嫌だろう、違う宿屋を…
『じゃあその部屋でお願いします!』
「そうだよな、やっぱり男女2人はって…なんでいいんだよ!いや、嫌って訳じゃないんだけど…」
『だってまだこれからの旅路とか準備物の確認とか何もしてないでしょ?一緒にしよーよ!』
天然なのか小悪魔なのか。一応使者なんだよな…?まぁ優しい事には変わりないし今日ぐらいはいいか。
だが、この決断は大きな過ちを産む結果になってしまった…
ーーー『今、お風呂覗いてたでしょ。』
急にモルペウスが部屋でくつろいでいる俺に向かって冷たい目を向けた。
「いや?覗いてないけど…どうした?」
『嘘だよヒロくん!すごい後ろから気配と視線を感じたもん!正直に言ったら怒らないから!ね!』
いや、ずっとベットに横たわっていただけなのに何だこの決めつけようは。えん罪にも程がある。
「なんで俺が覗かなきゃいけないんだよ。今日はもう疲れたし、覗く気力もないよ。」
『ボク知ってるんだからね!現実世界で君が女の子に飢えてたこと!いくら夢の世界だからって初日に覗きはどうかな〜!?』
「だーかーら!覗いていないし、覗こうともしてない!そもそも俺は君みたいな体型は好きじゃないし…」
『ひっどい!そこまで言わなくてもよくない?男の子はみんな巨乳が好きなんだ!このケダモノ!野獣め!』
論点がずれ、夜にただの冤罪で喧嘩をする羽目になってしまった。ここは冤罪を飲んで謝罪した方がいいのか?女心が分からない…。
すると、
ドン!!ドン!!!!ドカァン!!!!!!!
『うるせぇぞガキ!隣部屋に響いてるんだ!静かに出来んのか!』
ドアを蹴破って強面のサングラス茶髪お兄さんがガンを飛ばしながら入ってきた。
「ごめんなさい!少し騒いでしまって、気をつけますので…ほら!モルペウスも!」
『ご、ごめんなさい…』
すると、お兄さんは周りを見渡し、俺の剣を持ち、
『おい。この剣はお前のか?』
「はい!眠り猫というらしく、柄の部分に経験を積むと宝玉が埋まるらしいです。」
とっさに本当のことを喋ってしまった。ごめんなさいキュリオスさん!
『ふーん。君があの夢の扉持ちの召喚者か…』
俺の事を知っている?なぜ?この剣が関係している?考えているとモルペウスが聞いた。
『あなたはもしかして…元王国特別補佐官のゴグさん!?』
『ご名答だ。俺はゴグ=フール。今はただの旅人だがな。それよりもお前、今日こっちに来た大夢だな?ちょうど良かった。俺も王国に用があるんだ。明日一緒に来い!』
「え、明日ですか?まだ準備とか段取りとか何も…」
『来ねぇのか…?』
とても断れそうにない。
「行きます。行かせていただきます。」
『モルペウスだったか、お前もいいよな?』
『は、はい!ご一緒致します!』
『よーし!いい返事だ!じゃあ明日正午に出るからな!外の噴水で待ってろ!おやすみ!』
壊れたドアを見向きもせずにゴグは隣の部屋に戻っていった。
『ねぇヒロくん…なんか…』
「あぁ…思ってることは同じだな…」
『「やばい人に目をつけられた…」』
ゆっくり向かおうと思っていたのにこれじゃ休む暇もない…早く休まないと…
俺とモルペウスは喧嘩のことを忘れ、すぐ寝た。寝ようとした。なかなか眠れなかったが…