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夢力(DSP)査定-4

モルペウスとキュリオスに連れられ、


俺は草が生い茂る野原に案内された。


「モルペウス、魂の強さなんてどうやって測るんだ?」


そんな些細なことを聞くとモルペウスは微笑みながらこう言った。


『まぁ、見ててよ。初めて見る人は特にね。』


そんなことを話していると、野原の真ん中にキュリオスが立ち、


『行くぞヒロ。これが試験の内容じゃ!!!!』


何やら呪文を詠唱し出した。と、思ったのだが、


『まぁ適当でいいじゃろ。操羊(エヌゴート)!』


メェー……モシャモシャ


ただの羊だ。何も変哲もない羊がいきなり出てきた。


『キュリオスさん!なんで詠唱しないのさ!キリくんはこれを見るの初めてなんだよ!』


モルペウスは頬を膨らませ猛抗議している。


『ほっほっほ!すまぬな、めんどくさかったんじゃ。まあ試験内容は変わらないしまたの機会に見せるから安心せい!』


キュリオスは大声で話を進めた。


『ヒロ、お主の試験はこの羊を倒すことだ。峰打ちでも殺してもいい。なんせわしの幻じゃからな。ほれ、これで戦うと良い。』


渡されたのはただの木の棒だったが、先程の試験よりかは全然マシだろう。ひとまず俺は羊の頭を軽く叩いてみた。


ブメェ……


羊はよろめきながら倒れ意識を失ってしまった。

その景色がさっきの夢と同化したように見えた。


『その調子じゃヒロ。倒すんじゃ!』


ーーー出来ない。ここで今羊にトドメを刺したならば、現実の俺が夢の中の冷酷な望と同じになってしまう。頭の中が望に殴られる前の記憶で再びいっぱいになる。


「出来ません。ここで打ち止めにします。」


俺は木の棒をキュリオスの前に差し出した。


『広夢くん…』


モルペウスは心配そうな顔でこちらを見る。


『うむ…ここで辞めるとなるとDSPがかなり低くなってしまうが……それでもいいんじゃな?』


構わない。これ以上苦痛は味わいたくない。


「大丈夫です。ありがとうございました。」


終わってしまった。俺にはこの世界が向いていないのかもしれない。スキルはレアらしいがそれ以外は平凡以下だろう。元の世界へ戻ろう。


『ヒロ、試験の結果じゃが…Fランク。底辺クラスじゃ。夢での行動力、その後の頭の整理、生物を倒せない精神力。全てが凡人じゃからの。』


当たり前だ。異世界最強なんて口だけだった。


『じゃがお主は夢の扉を持っておる。元の世界には帰ることは出来ない。』


少し頭の上にはあったが、最悪の言葉が耳に入った。


「モルペウス……?」


モルペウスはとても申し訳なさそうに口を開いた。


『ごめんね広夢くん。こうでもしないと来ないと思って……でもね!条件さえ満たせばすぐ元の世界に戻れるよ!これは信じて。』


とは言うものも俺はこの世界で生き抜く術がない。いうならば、ジャングルで何もなしで生活するようなものだ。


それを見かねたキュリオスは俺に語りかけた。


『このままではお前は飢え死にしてしまうじゃろう。これは試験に関わらずわしからのプレゼントじゃ。』


いつの間にか俺の手元に白い大剣が握られていた。


『この剣は眠り猫。柄の部分に5つ窪みがあるじゃろ。お主がこの世界で人生に大きな変化が訪れる時、自ずと剣に玉が埋まってくる。その度その剣は進化する。どうじゃ、冒険らしいじゃろ!』


冒険をしないとただの剣。育てれば自分だけの剣。ありきたりな剣だが、何も無い俺にはどうでもよかった。


「はい!ありがたく受け取ります。」


『これでわしの試験は終了じゃ!お疲れじゃろう、モルペウス。宿に案内しなさい。』


モルペウスが背中を押してくれた。


『はなからその気だよー!ありがとうキュリオスさん!』


俺はこの世界で何が起こるか、何を起こすのか分からないまま大樹の下の街へと繰り出した。



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