夢力(DSP)査定-3
「うっ……」
目を開けるとその前には白髭がモジャりと生えた自分の数倍も大きい巨人が座っていた。
『おぉ!お目覚めかね?ヒロとやら!』
案の定声も大きく、朦朧としていた意識がすぐに戻ってくる。
「あの…お目覚めってことはさっきまでのは夢ということでいいのでしょうか…?」
恐る恐る聞いてみる。
『ハッハッハ!何を言うかと思えば!最初に説明を受けなかったか?【試験】を行うと!』
あ、あれが試験だというなら余りにもリアルすぎないか?自転車だって、あの公園だって、
あの……血だらけのキリも。
俺が冷や汗をかいていると、巨人はそれを察したのか、俺を指さしこう言った。
『そう!この夢はお前の記憶を読み取りワシが造った幻夢、幻の夢じゃ。ワシはこうして夢を造り冒険者の夢の適応力、Dreampointを計測していた訳だが……』
巨人は首を傾げながら話を続ける。
『モルペウスよ、こいつが夢の扉を所持している冒険者で合っているのか?あまりにも値が標準すぎるが…』
「この人で間違いないよ。何度も確かめたんだ。」
巨人の後ろからピョコっとモルペウスが出てくる。
「試験お疲れ様大夢くん。このお方はキュリオスさん。夢幻世界の始まりの地である胎夢に来た冒険者の試験を行う夢木の支配人だよ。」
俺はもう一度モルペウスに確認する。
「モ、モルペウス、さっき見た世界は夢…でいいんだよな?」
自分が思っているより声を発せず、あの光景が頭を何回もよぎる。
「大丈夫。落ち着いて。全部キュリオスさんが造った夢だよ。」
2人に同じことを言われ、俺はここで大きな息を吐き、その場に座り込んだ。
「そっか…全部……夢か…」
よかった。現実に戻ってきたと思ったらあんな仕打ち。
今にも精神が狂うところだった。
『すまんのう!試験は厳しくいくのがここの然りでな!皆お前みたいに混乱するまでが流れとなっておる。』
落ち着いてきた俺は1つ疑問をぶつける。
「キュリオスさん。どうやって望とキリ。いや、それだけじゃない。他の人たちもです。どうやって操作していたのですか?」
『お!今説明しようとしたところにその質問とはなかなか興味深い冒険者だ!
今の夢はワシが造ったと言ったな、ワシは幻夢操人の能力を持っている。この能力は使った人間の世界を夢の中で具現化し、ワシの手で操ることができる。』
「幻夢操人……恐ろしい能力ですね。」
こんな夢を冒険者皆に見せているのか。この巨人見かけによらず恐ろしい支配人だ。
モルペウスが説明を付け足す。
「大夢くん。この世界ではね、夢は見るものではなく見せる夢【幻夢】として存在しているんだ。」
人に見せる夢、【幻夢】……
俺はモルペウスに乗り気で聞く。
「て、ことはさっきの逆の夢も…」
モルペウスは笑顔で答える。
「うん。誰かが持っている能力で見れるだろうね!」
素晴らしい世界に来た。理想の夢が見られるだなんて長年の夢が叶った。
『ところでモルペウス。こいつに夢の扉の説明はしたのか?何も知らなさそうだが…』
「あ、忘れてた…」
俺も忘れていた。俺が使える能力、夢の扉。
恐ろしい能力でも幸せになれる能力でも構わない。モルペウスがわざわざ連れてきたんだ。
めちゃくちゃな能力に違いない。
「て、ことで今から説明するね。
君の能力である夢の扉は…」
「夢の扉は……?」
「なんと!夢に入れる能力なんだ!超レアだよ!パチパチパチ!!」
モルペウスは自慢げな顔で拍手する。
「えっと…それだけ?」
夢に入るのがそこまで貴重なのだろうか?全然分からない。
「超凄いんだよ!?なんでそんなきょとんとするの??私がバカみたいじゃないか!」
モルペウスは地団駄を踏みながらプンプンとこっちを見る。
「夢に入ってなんかいい事でもあるの…?
普通にめちゃくちゃ強い能力が良かったんだけど……」
「ほ、本当に貴重なんだよ?なんたって夢喰いに対抗できる唯一の能力なんだから!」
また知らない言葉だ。
「夢喰いって…何?バクとかそんなの?」
その質問を境に、モルペウスは真顔に戻って真剣に話し始めた。
「夢喰いは最近この世界に現れた夢幻世界の禁忌を犯した集団だよ。人に夢を見せてその夢を吸い取るんだ。吸い取られた人はもう目を覚ますことはなくて、植物状態になっちゃうんだ。」
何それ……めちゃくちゃじゃん、、さっきのワクワク返してよ……
でもそれで、俺がここに連れてこられた理由が分かった。
「それを防ぐため俺を探していたということか」
モルペウスが首を振る。
「見つけること自体は簡単だったんだけど交渉するの
は初めてだったよ?大夢くん眠り浅いんだもん。交渉しようとしても目覚めちゃって。」
俺は毎日深夜は動画サイトやゲームをしたりしていたので睡眠時間は短い方だった。
ん?初めて??話が食い違っている。
「じゃあなんで何回も同じ夢を…?」
「あぁ、それは多分…」
2人で話が弾んでいるとキュリオスさんが割り込んできた。
『楽しいところすまんのう!まだ査定は終わってないし次の人も来ちゃうから早く次の試験に行きたいんじゃが…』
「そうだった!まだ残ってたね。
よし!大夢くん。話はまた別の機会にするとして、次はSpiritpoint、魂の強さを測定するよ!付いてきて!」
俺はモルペウスに手を引かれ次の試験会場へと向かうのであった。