前へ目次 次へ 16/40 大きい真鯉は屋根より高く どうやら余命一ヶ月のようだ。 カーテンの隙間から午後の日差しが薄く差し込んでいた。 いきなり病室のドアが開く。 「男の子だ。お前に息子が生まれたぞ」 還暦を過ぎた父の笑顔。 「そら窓を開けるぞ」 向かいの病棟の窓という窓に、赤、黒、青、金、色とりどりの鯉のぼりの群れが吊るされ風になびいていた。 父の仕業らしい。 「お前の息子が一人前になるまで、まかせておけ」 か細くシワだらけになった手が、俺の頭を力強く撫であげた。