6話 Real personality and real wall Don~本当の人格と本物の壁ドン~
昨日言われた、ハイケルだけは絶対に怒らせるなよという意味を考えながら、次の日の授業が始まった。
「皆さん授業を始めますよ〜」
こんな優しそうな人が怒るなんて考えられない。逆にこの人はどうやったら怒るのだろうか?考えられない。
「前の授業でも言った初級魔法をしてもらいます。まず始めに皆さんには魔導石を配ります」
小石ぐらいの大きさの魔導石が配られる。無色の色をした綺麗な石に見える。
「魔法の発動するためには頭の中で魔法式を組み立てます。『火の粉』なら火の粉の魔術式を思い浮かべ魔力を込めると魔法が発動します」
『火の粉』
その瞬間、ライターの火ぐらいの魔法が放たれる。
「魔法で一番大事なのは、頭の中で魔法式をどれだけ正確に組み立てるかです。初級魔法の魔法式は一つですが、上級魔法になってくるとたくさんの魔法式を組み合わせないといけません。例えば中級魔法『火炎の渦』では、火の粉+能力上昇+渦の魔法式を組み合わせると発動します。皆さんも上級魔法が使えるように、基礎の初級魔法を練習してみましょう」
指示された通り魔法式を頭の中で組み立てる。
そして自分の手に持つ魔導石に魔力を込め魔法を発動する。
『火の粉』
その瞬間、手に持っていた魔導石が弾け飛んだ。
不良品かと思ったが、周りを見ても誰の魔導石も割れていない。横にいたウィークは、魔法が発動しているし、魔導石も割れていない。ましてや、成功したぞというドヤ顔でこちらを見てくる始末だ。やはり不良品かと思い質問してみる。
「ハイケル先生、なぜか魔導石が割れたんですけど?」
「それは魔力の込めすぎでしょう。魔導石は魔力がかかりすぎ、上限を超えてしまうと破裂してしまうんです。イガラシ君は入学試験の時も魔導石を割っていましたから、それだけ魔力量が多いんでしょう。次は割らないように魔力操作してくださいね」
そう言われ新しい魔導石が渡される。次は割らないように、魔力を流す量を少なくするイメージで魔法を発動する。
『火の粉』
しかし魔導石は割れてしまう。成功するまで新しい魔導石を渡されたが、ことごとく割っていった。新しい魔導石を渡されるたび、ハイケル先生の顔はどんどん曇っていく。
そして通算16回目も失敗した時授業の終わりの時間になった。
「み、皆さん今日の授業はここまで。また明日も頑張っていきましょう」
結局最後まで成功せず終わってしまった。とりあえず明日頑張ろうちと思い、御飯を食べに行こうとウィークと
ユイナに声をかける。
「昼飯一緒に食いに行かね?」
「もちろん一緒に行くよ!」
「僕もかなわないよ」
返事ももらったので一緒に食堂に向かう。この学園の学食は全てタダで、しかも美味しい。この世界の料理は元の世界とはとんど変わらず、味も美味しい。早く昼飯を食べたいと思っていたら、後ろから声をかけられる。
「イガラシ君ちょっといいかしら?」
「別にいいですけど。悪い、ユイナとウィークは先に行ってくれ」
先に食堂に向かってもらって、俺はハイケル先生に連れていかれる。
つれて行かれた部屋には人1人もいない。部屋に入った瞬間鍵が閉められた。なぜかハイケル先生の眼鏡が外されている。
「イガラシ君さっきの授業、わざと魔導石を割ったよね」
「そんなことないですけど。それに魔力を込めたら勝手に割れます…し!」
言葉を言いかけていた瞬間、壁ドンされる。普通なら嬉しい事をされているんだろうが、全く嬉しくない。
なぜなら本当にドン!という音とともに、俺の顔の横が爆発したからだ。爆発した場所は黒焦げになっている。ことの犯人であるハイケル先生は顔が笑っていない。
「なめてんのか、この糞ガキ!私は魔力操作をちゃんとしろと言ったよな?なんでできねんだ!」
ハイケルだけは絶対に怒らせるなよ、の意味が今わかったがさすがに怒りすぎだろう。
俺はあまりの勢いで怒られたので無言になってしまう。しかしその判断はいけなっかた。
「シカトとはいい度胸してるな〜。さっきのもう1度顔にくらわしてやろうか!」
「すいません、すいません、すいません、すいません」
もう謝ることしかできなっかた。そのあと昼休みが終わるまで説教されるのであった。
「これからの授業は魔力操作ができるまで絶対に魔法を使うなよ!」
「魔法の授業なのに魔法を使わなかったら何をすればいいんですか……」
「そんなの知らねーよ、教科書でも読んどけば」
いきなり無茶ぶりを言ってくる。文字を読めないのに、教科書なんて読めるわけない。これはユイナかウィークに教えてもらわないといけなさそうだな……
もしハイケル先生に、文字が読めません!なんて言ったら顔を爆発させられそうだ。それだけは何としてもさけたい。
「ハイケル先生もうすぐ次の授業なんですけどそろそろいっていいですか?」
「いいですよ。だけど今のことは絶対にいっちゃダメよ」
いつの間にかいつもの口調になり、眼鏡もかけている。どうやらいつもの感じに戻ったらしく、また怒らせないようにう早くこの部屋から退出することにした。
「カズトなんだか顔色が悪いけど大丈夫?」
周りから見たら今の顔はどうやら顔色が悪いらしい。あんなに怒られた後なら仕方ないだろう。
「大丈夫、全然大丈夫だから気にしないでくれ」
「絶対に何かあったでしょう。もしかしてさっき先生に呼ばれて何かされたんじゃない?」
図星だったので思はず言いそうになった、絶対に言うなと言われていたので危なかった。もし言っていたら何をされてもおかしくない。
「本当に何にもないぞ。ただ魔法のコツを教えてもらっていたんだ。俺、ずっと魔法が使えなかったから」
自分で言うのもアレだが、上手く誤魔化せた。実際に魔力操作をしろと言われたから嘘は言っていない。自己満足しているとスカード先生がやってきた。
「諸君!剣術の授業を始めるぞ。今日も昨日した、素振り5000回だ!気合をいれていけ!」
今日も素振り5000回……体はそこまで疲れないが、精神的に辛い。同じ動作を5000回するなんて頭がおかしいとしか思えない。だけどあのスカード先生なら何かを考えているんだろう。俺は今日のハイケル先生の件に関して思い知ったので、スカード先生のいう事は絶対に守ろうと心の中で決意した。
5000回の素振りが終わり、今日の授業が終わり自室に戻る。先に帰ったウィークは自室に戻るシャワー室で浴びている。この学園でのシャワーは、学園の地下にある魔力精製機から魔力が送られ、シャワーヘッドに刻まれている魔法式が起動してお湯が出るらしい。この部屋の照明や、学園で使われている設備はほとんどこうらしい。そして十分ほど待ち、ウィークがシャワー室から出てくる。そしてウィークが着替え終わり、良いタイミングで思い切って言ってみる事にした。
「文字をお教えてくれ!」
「文字をお教えてくれって……えええ!イガラシ君、もしかして文字が読めないの!」
「はい、一文字も読めません!なので1から教えてくれ」
「別にいいけどさ、イガラシ君が今までちょくちょくなんて読むか聞いてきたのって文字がわからなかったからか。けどなんで読めないの?」
「なんで読めないの?と、言われましても読めないものは読めないし、この国に来たのも数日前だから全くわからないんだ」
「違う国から来たとしてもイヌミス語は全世界共通だし、普通なら子供のころに親に教えてもらえるはずなんだけど……本当にどこから来たの?」
さてこの場合はなんて言えば良いのやら。それにしても似たような質問をつい最近聞かれたきがする。この前みたいに答えるか。
「出身地についてはあまり追求しないでくれ。あまり言いたくないからさ……」
「わかった、聞かないようにするよ。だから1から教えるよ」
こうしてウィークとの勉強は始まった。ひとまずは、文字が読めるようになるまで頑張ろうと心で決意した。