14話 A teaching scenery that is too crowded~無茶苦茶過ぎる授業風景~
頭の中で魔法式を思い浮かべる。
(水噴射+能力上昇+圧力+速度力)
『水の弾丸』
魔法を唱えると、空中に浮かぶ水がとてつもない速さで的に当たる。
ドゴン!!
物凄い音を立て的が崩れ落ちてしまう。
今使ったのは、中級水属性魔法水の弾丸である。
能力上昇で威力をあげ、圧力で水を圧縮し、速度力で速度を上げ射出した訳だが、中々の高威力。
中級魔法でこの威力でこの威力だと、上級魔法とかどうなるんだ?
疑問に思っていると授業の終了時間になり、ハイケル先生の呼びかけがかかる。
「皆さん、今日の授業はここまで。明日は今日使った水の弾丸の火属性バージョンをするので、復習をしっかりしてくださいね」
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昼食の時間にもなり食堂に向かう。
そうするといつものテーブルをユイナが確保してくれていた。
「カズト、こっちだよ」
「すぐ行く」
この学園の学食は、自分でトレイを持って食堂のおばちゃんに食事をもらう。お代わり自由でしかもただ、こんな優遇をして学園がつぶれないか心配だが今日の献立を見てどうでもよくなってしまう。
今日の献立、それは豚カツである。小さいころからの好物で、好きな食べ物の三本指にも入るレベルである。好物を手早く受け取りテーブルに向かう。先に食事を取りに行っていたであろうウィーク、ミリカ、ヘンドの顔ぶれが席に座っていた。
席に座ろうとするが、いつもの光景になってしまっている状況に突っ込みをいれたい。
「ウィーク、お前、毎度思うがそんなに食べても大丈夫……なのか?」
「ベンベン、ばいびょうぶ。(全然、大丈夫)」
「いや、そう言う事じゃなくて」
「どういう事?」
口に入っていたものが無くなり、普通に喋れるようになったウィークに俺は再び突っ込みたい。
「どうやったら、その量のご飯が、体内に入るんだよ!」
ウィークの皿に盛られていたのは、あまりに盛られて山となっている豚カツ。普通なら腹の中に入らないだろという量に絶句してしまう。
某大食い嬢王も顔負けの量である。
「みんなもこれぐらい食べれるよ」
「いやいや、食べれねーから。なあウィーク、早めに医者に診てもらったほうがいいんじゃないか?」
「さらっと病人扱いするのはひどくない?」
そんな事を言われても明らかにウィークのほうが異常だ。
「そんな事を言っておりますが、そこんところどうでしょうかヘンドさん」
「子供が、ご飯をたくさん……食べるのは良いこと」
「田舎に住んでいるおばあちゃんか」
ヘンドもどうにも思っていないとか、これがこの世界の基準なのか?
不思議に思っていると横の女子がやたらと騒がしい。
「ユイナさん!今日こそは絶対に勝ちますわ!」
「こっちこそ負けないよ」
「では尋常に、」
「「最初はグ、じゃんけんポン、あいこでしょ、あいこでしょ、しょ、しょ…………」
女子は女子で始めてしまった第37回ユイナ対ミリカの尋常一葉勝負が始まってしまった。ユイナに負けて以来、ミリカはユイナに勝負を吹っ掛けている。
勝負を吹っ掛けては負け続け、ついに37回目の勝負になってしまった。見てる分には幼稚に見えるが、本人はいたって本気らしい。
その本気すぎる勝負と美少女に入るであろう二人の容姿から、地味にアルステラ魔法騎士学園の人気行事になっている。そこらかしらから声援が聞こえてくるほど人気になっている事を本人たちはまだ知らない。
「ユイナちゃん頑張ってー!」
「ユイナお姉さま頑張れー!」
「L•O•V•E、ミリカちゃーん!!」
所々で危ない声がするが聞かなかったことにしよう。
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「今日も今日とて素振り5000回だ!」
入学してから全く変わらないこの剣術の授業。最初のころに比べて形もだいぶましになってきたと思う。
それゆえに分かってきたことがある。
それはユイナとヘンドの剣の鋭さについてだ。
最初のころから剣の振り方がうまいなとしか思わなかったが、最近になると二人の剣の完成具合に度肝を抜かされる。二人の剣は少し剣にかじっただけでは到底到達できない領域まで上達していると思う。
そうすると、なぜ二人はこれほどまでに剣術が上達しているのかが疑問になってくる。
現在アルステラ魔法騎士学園はアルマート国が管理している。アルマート国や一部の地域を除いた国家のほとんどは貴族や一部の民間人を除いた国民は家名を持たない。
つまりヘンドはどこかの貴族になるわけだが、それだとユイナの剣の上手さはどうなるのか?
ヘンドだったら剣術を教わっていても不思議じゃないんだが、ユイナは裕福でもない限り剣術の講師なんて雇えない。
だけど、ユイナのあの県の振り方は誰かに教わったとしか思えない。
つまりどういうことだ?
剣を振る事に集中していなかったらいつの間にか5000回が終わってしまっていた。
「諸君!今日も5000回の素振りお疲れ様。さあ寮に帰っていいぞ、と言いたいところだが、少し時間をくれ。諸君もこの学園に入学してはや一か月だが学園生活に慣れてきたころだろう。そういう事で二週間後ぐらいに遠征をするから各個人で準備は進めておいてくれ」
学園生活一か月目にしていきなり遠征なんてノリが軽いな……。
だけど元の世界の学校でも入学して早々行事とかがよくあるよな。確か高校のオープンハイスクールに行ったときにクラスの絆を深めるためとか言っていたような……?
というか、元の世界では俺ってどうなっているんだろう。
受験に合格していたら今頃高校に行ってるはずなんだけど、冤罪をぶっかけられて高校受験にも失敗して飛び降り自殺したからここにいるんだよな。
そうなると向こうの世界では自殺扱い?
そういや俺って自殺したんだよな。
今思うとだいぶ無茶な事していた。ビルから飛び降りて、肉体ミンチ……
何だかトラウマになりそう……
「おい、イガラシ!イガラシ!大丈夫かお前、目が死んでたぞ」
「え、あ、はい」
周りを見たら俺以外生徒がいない。
どれだけ精神が死んでいたんだ。
「剣を振っている時も上の空だったが、お前本当に大丈夫か?」
「全然、はい、全然大丈夫です」
「ほんとに気をつけろよ。それより、ラウター家の次男であるスロータス・ラウターが行方不明になっている」
な、なんだって!スロータス・ラウターが行方不明!
……スロータス・ラウターって誰だっけ?
「お前……もしかして忘れてた?あいつだよ、お前が入学試験の模擬戦の時に相手していた奴だよ」
模擬戦……そうか、あのクソ野郎の事か。確か、悪名高いラウター家的な事を言っていた気がする。
「ラウター家はスロータスの事を捜索しているが、状況が進展していないらしい。なんでも、ラウター家の家宝を盗んで逃走したという噂が流れている」
「それならそこまで重大な事ではないですよね」
「それだけだったら、な。実はこの周辺の町で目撃情報が出ている」
「わざわざこの周辺で現れた理由ってーー」
「多分お前だ」
「ソウデソヨネー」
正直言ってそれしか理由がおもいつかない。
あのプライドが高そうな貴族がたかが平民に倒されたら何かしら復讐してくる。本当にどこまで行ってもクソ野郎だ。
「とりあえず、学園側もこの件については調査するが、イガラシも何か気が付いたら教えてくれ」
「分かりました、何かあったらすぐに言うようにします」
そう言い残しその場を後にした。
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朝6時半、アルステラ魔法騎士学園の目覚めは早い。
将来軍隊に所属するため、それもかねて全学生は一斉に起床するルールが制定されている。
「ぐぅ~~~~」
だが、そんなルール知ったこっちゃない、とでも言いたいかのようにいびきをかいているもう一人の部屋の主が存在していた。
なるほど、いい度胸だ。ならばこれをくらえ!
必殺ーー
「モーニングブレイク!」
「グヘ!」
ベットで横になっているウィークにダイブするのが毎回のやり取りになっている気がする。
「早く起きろよウィーク。起きていなかったら俺まで連帯責任で怒られるんだぞ」
「起きていなっかたのは悪いけど、この起こし方どうにかならない?」
「ならないな」
「ならないのか……」
とりあえずウィークもベットから出て身支度を始める。
お互い身支度が済むといつも通りの足取りで食堂に向かう。
基本朝食はウィークと済ませている。
朝食をササッと済まして教室に向かう。
「皆さん席についてくださ~い。授業を始めますよ」
教室に入り数分ほど経つとメルス先生が教室に入ってきた。
メルス先生が促し、教室にいる生徒は席に座っていく。
ユイナと話していたが、話を切り上げ席に着く。
「皆さん、昨日も話していた通り水の弾丸の火属性バージョンの授業を始めます。とりあえず魔法基礎学の教科書の六十七ページを開いてください」
机に入れておいた魔法基礎学の六十七ページを開く。
そこには火炎の弾丸と書いていた。
一か月前まではカルケ語はまったく読めていなかったが、ウィークとの猛勉強の末、何とか読むことはできるようになっていた。
猛特訓をしていた時期のウィークは過労で、死んだ魚の目をしていた。
本当にあの時は無茶に付き合ってくれたよな……
俺だったら勘弁こうむりたい。
「どうしたの、イガラシ君?僕の顔をまじまじと見て、何かついてる」
「いや、まともな目をするようになったと思ってた」
「ひどくない!?」
「二人とも、授業中に何騒いでいるんですか?」
「「すいませ……」」
やばい、メルス先生の目が笑っていない。俺一人だったらまじ切れパターンだ。
本当にあの人が怒ったら、命がいくつあっても足りないんじゃないかな。と、思わせるぐらい怖い。というかまじで怖い。
授業をまじめに受けなかったら殺されると悟ったら、授業に集中するまでの時間はそこまでかからなかった。
「騒いでいる二人はほっておいて火炎の弾丸の魔法について説明を始めます。火炎の弾丸は先日練習した水の弾丸と容量がほとんど変わりません。
魔法式は(火の粉+能力上昇)で火の粉の威力を上げ、火炎の魔法に昇華させます。そこに速度力を付け加え射出するわけですが、ここで問題。火の粉、能力上昇、速度力だけでは、炎が速いスピードで打ち出されるだけになります。では、どのような概念を加える事で弾丸状にするでしょう?騒いでいたウィーク君答えてください」
「えっと……、固形化?」
「確かに炎を固形化することはできますが、今回は違います。では、騒いでいたもう一人イガラシ君答えてください」
固形化じゃなかったら何になるんだ?弾丸状にするんだから炎を一か所にまとめる必要があるよな。
水の弾丸だったら圧力をかければよかった。
なら炎なら?
圧縮に似て非なる概念それはーー
「密集……ですか?」
「正解です。答えは密集を付け加えることで、炎を一塊にして射出する魔法だったのです」
まさかあっているとは思わなかった。
なんとなく頭の中に思い浮かんだのを言ってみたのだが、こんなに簡単に当たっていいのだろうか?
頭の中に思い浮かぶのが不自然な感じだったのだが、気のせいだったのかもしれない。
「最後の確認です。火の粉+能力上昇+密集+速度上昇の魔法式で火炎の弾丸が発動するので、実際に実習してみましょう。では皆さん、魔法実習室に移動してください」
いよいよ魔法実習という事で、魔法実習室にクラスの全員が向かう。
そもそも魔法実習室が何なのか?と、最初は思ったが何やら特別な結界が張られていて、魔法が当たっても教室が壊れないようになっているらしい。
そんな事を考えながら歩いていたらすぐに着いた。
扉を開けると、そろそろ見慣れた真っ白な部屋だった。最初のほうは真っ白すぎて眼がチカチカしていたが、慣れたらそこまで苦には思わなくなっていた。
「皆さん、早速ですが実習に入りましょう。それぞれ用意している的に魔法を放ってください」
メルス先生の指示があったので、魔法を放つ準備をする。
前に配られて戦闘型魔導石付属杖、別名戦魔杖を構える。
その長さ、約一メートル、杖の先端に魔導石が組み込められている。
さらに、杖に使われている木材は特別製で、魔力を効率よく魔導石に送る性質がある。本来、体から直接魔力を送るときは伝達するときに魔力がロスしてしまう。だが、戦魔杖だと、魔導石に魔力を送るときにロスを減らしてくれる優れものなのだ。
とても優秀な戦魔杖に魔力を送る。
魔力を操作するのも一か月前とは比べ物にならないほど上達していた。魔力操作が上達したおかげで魔導石を割る破目はなくなったが、それでも魔力を送るのは魔法が発動するギリギリのラインにする。
何故魔力を送る量を必要最低限にするかというと理由は簡単ーー
(火の粉+能力上昇+密集+速度上昇)
『火炎の弾丸』!
魔法を放つと眼には見えないような速さで一つの弾丸が射出される。
弾丸が着弾した瞬間、ドゴン!!という音が教室中に響く。
ーー威力が高すぎるから。
魔力の量の割にはこんな威力が出るのはおかしい。
他の生徒だって魔力を抑えて、こんな威力は出ない。
ここまで高威力が出る理由は魔法適性が高すぎるのが原因らしい。
謎の女に全魔法適性の力を与えれれたせいだと思うが、あまりの威力で自爆しかけたのは苦い思い出だ。
他の生徒達も魔法を発動しているが、俺みたいな威力は出ていない。
それでも他に比べると一線を超えているのがミリカだ。
このクラスの中なら威力は俺の次に高いし、魔法式の構築なら群を抜いている。
俺は魔法式の構築がどうやら遅いらしく、一つの魔法を発動するのに約10秒かかってしまう。戦場でこんなに時間をかけたら、敵に隙を与えてしまうとメルス先生に言われているがどうするものやら。
この日の授業は、できるだけ早く魔法を発動できように練習をして終わった。
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「諸君!!今日も素振りの授業だ!と、いつもなら言うところだが今日は少し違う」
「先生、今日はどう違うのでしょうか?」
クラスメートの一人が質問していた。
確かにその気持ちはわかる。剣術の授業で剣を振る以外でする事があまり思いつかない。模擬戦だろうか?
「この一ヶ月ただ剣を振ってきたのは今日の授業のためにあった。そう、身体強化魔法を使うためだ!」
「「「「はい?」」」」
思いもよらない言葉に、クラスの全員が首を傾げていた。
「疑問に思うのも仕方がない。魔法の授業はハイケルの分野だが、この身体強化魔法だけは違う。何しろ体を動かすタイプの魔法でな、剣術担当の教師が教えることになっているんだ。詳しい説明は面倒だから、取り敢えず見ててくれ」
そう言うとスカード先生は手にはめていた指輪に魔力を流し、魔法を唱える。
「身体強化!」
瞬間、スカード先生の体から蒼白い光が放出され、体にまとわりつく。
「これが光属性魔法身体強化だ。この魔法を発動中は全身の機能が向上するんだが、この魔法の真骨頂はここからだ」
スカード先生はさらに魔力を流し魔法を唱える。
「身体強化セクション10!」
体に纏っていた蒼白い光が変色し、濃い青になっていく。
「今の状態だと身体機能は6倍になっている。つまりこういうこともできるわけだ」
瞬間、スカード先生の体が消える。
「こっちだ」
声のなる方へ目を向ける。
そこは教室の天井、普通ならあり得ない場所に立っていた。
「なっ……!」
異常な光景に声が出ない。それはクラスのメンバーも一緒のようだ。
「まあ、お前らもこんな風になれるっていうか、なって貰うんだが。そんなわけで詳しい事は説明するから、一定ライン超えれない奴は素振り5000回追加だから頑張れよ」
天井を降りながら呟いたスカード先生の一言にクラスの一同は
「「「「「「ハァアアアアアア!!!!」」」」」」
遠征が始まるまで地獄だったのはいうまでもない。




