12話 Simulated fight noticed real feelings~本当の気持ちに気づいた模擬戦~
ユイナの模擬戦が終わり一声かけたかったが、ユイナに負けた相手、ミリカ・ファロンがユイナにちょっかいを出していて声をかけれる雰囲気ではなかった。
ユイナに話しかけれずに、数十分が経った。
ユイナの戦いに度肝を抜かれながら試合を見ていたが、ユイナのように瞬殺で終わるような試合はなかった。むしろ退屈すぎて、眠りそうになっていた。
「なあ、ウィークって戦闘はできたりするのか?」
暇だったので、ウィークに質問してみることにしてみた。
「僕は全然無理だよ。むしろ弱すぎて、瞬殺されるレベル……」
「そんな事言いながらも、実は強かったみたいなパターンだろ。ハァ……今までなんだかんだで、ウィークに負け続けているからな。これで負けたらウィークより下だと証明されてしまう……」
「本当に弱いよ!それより、イガラシ君は僕より上だとか考えてたの!?」
ウィークと話しているうちに、今まで戦っていたペアの勝負が終わったみたいだ。
「次はイガラシ・カズト、ヘンド・ローレスの模擬戦だ!両者、フィールドに入れ!」
いよいよ俺のばんみたいだ。
これでウィークと当たる事はない。
「良かった、これでウィークに負ける事はないから、ウィークより下になる事はないと思う」
「まだ、その話を引張て来るの!?まあ、イガラシ君らしいけど……。そんな事より、模擬戦頑張れ」
そう言いウィークは、拳を俺に出してきた。
俺は自分の拳を、ウィークの拳に合わせる。
「ありがとな」
そう言い、俺はフィールドに向かう。
フィールドに入ってみると思ってたより、大きかった。直径20メートルぐらいの円状になっている。
フィールドに入ると、対戦相手のヘンドがすでに待っていた。
ヘンドは目に隈があり、いかにも根暗そうな男子だ。
だが、ヘンド・ローレスという男は、素振り5000回が終わって立っていれた、三人の内の一人だ。
正直言って、油断できない。
素振り5000回で立って入られたという事は、ユイナと実力は同レベルという可能性がある。
「両者、木剣を構え」
スカード先生の指示通り、床に置いてあった木剣を手に取る。ヘンドも気だるそうに木剣を手に取り構える。
「模擬戦、始め!」
スカード先生により、模擬戦が開始された。
俺はヘンドが攻めて来るのを待つが、一向に攻めて来る気配がない。
それならば先に攻めさしてもらう事にする。
一歩目を踏み出し、間合いを詰める。
二歩目を踏み出し、ヘンドの下に潜り込む。
三歩目で足に力を入れ剣を上に振りかぶる。
だが、ヘンドはいとも簡単に俺の太刀筋をいなしながら、後ろに下がる。
いなされた事に少し焦ったが二撃目、三撃目を、ヘンドに繰り出す。
しかし、簡単にいなされてしまう。
四撃目を食らわそうと、攻撃を仕掛けようとした瞬間、ヘンドが俺の眉間を狙って突きを繰り出してくる。
顔を動かし、なんとか避けようとしたが、頰に少し当たってしまう。
「ーーーーッ!」
剣によって擦れた頰は、薄皮がめくれ少し血が出ていた。
「あぶね!お前殺す気か!?」
「……お前は、俺の敵……だよな?」
「当たり前だろ。今は模擬戦をしているんだから」
「じゃあ……全力で戦うのが、当たり前……」
そう言い、ヘンドは剣で振りかぶって来る。
俺は防戦一方で、剣で防御しかできなかった。
防戦一方で戦いどれぐらいたっただろうか?激しい打ち合いを耐えることしかできなっかたが、ある事に気がついた。
ヘンドは、強めの攻撃をしてくる時に剣を握り直す。その時に少し隙ができる。つまり、その隙に攻撃を加える事が出来れば勝機はある。
ヘンドの蓮撃を防御していたが、わざと体制を崩す。
そしてヘンドが決めにかかろうとして、剣を握り直す。そして一瞬、隙ができた事を俺は逃さない。
防戦一方だったが、一気に攻め立てる。そしてヘンドの体制を崩す事ができた。その隙に攻撃を繰り返す。
しかし、剣を受け流されてしまうため、決定打を与える事ができない。
何か決定打になるような手段はないのか?
考え、考え、考え抜いた結果、一つの方法を思いついた。しかし、失敗したら絶対に負けるような方法だ。正直良い方法ではない。しかし、何か行動を起こさなければ、絶対にヘンドには勝つことはできない。
俺は、賭けをする事に決めた。
数歩後ろに下がり、剣を構える。
「そろそろ飽きてきたから、これで最後にしよう」
「わかった。次で最後なら……全力で行かせてもらう」
そう言い、ヘンドは剣を握り直しながら走って来る。俺はそのタイミングを逃さず、手にしている剣をおもいきりヘンドに投げた。
俺が投げた剣は物凄い速さで飛んでいく。
ヘンドは剣を投げて来るとは思わなかったらしく、剣で捉える事も出来ず俺の狙い通りの場所に当たった。
手の甲、俺が狙った場所はそこだ。
ヘンドは思わず、剣を手放してしまう。俺はそのタイミングを逃さず、拳で頰を殴りかかる。
「ウォォォォォ!!」
「ーーーーッ!」
ヘンドの頰を捉えたと思ったが、間一髪のところで避けられてしまう。しかし、まだ終わらない。
すかさずもう片方の手で殴りかかる。
ヘンドも反撃にでようとし、拳が俺の頬を狙ってきた。
よけようとしているが、間に合いそうにない。だが、ヘンドも俺の拳から逃れる事ができそうにない。
そのままお互いの拳が頬に到達する。バキ!という音と共に俺は体が吹っ飛んでいた。体が地面についても勢いは殺されず、三回ほど体がバウンドする。勢いがなくなり、その場に立つ。
ヘンドも同じく吹っ飛んでいたらしく、立ち上がっていた。
決着をつけるために足に力を籠め、一歩踏み出す。
「両者そこまで!!」
二歩目が踏み出されることはなかった。
「どうして!?勝負はまだ決まっていない!」
「イガラシ、ヘンドその場を見てみろ」
指示された通り足元を見る。すると足がフィールドの中に入っていなかった。
「お互いフィールドの外に体が出ている。ルールではフィールド内で戦えという事だった、つまりお前ら場外で引き分けだな」
引き分けという言葉を聞いて悔しい気持ちしかわいてこない。もしあのまま勝負を続けていたら俺が負けていたと思う。
引き分けになっただけ、まだましかもしれない。
だけど生まれて初めて本気の勝負をしていた。
今までは、はたから見ると本気で取り組んでいるように見えても、本当は適当にしていることは当たり前だった。だけどこの勝負は違った、胸が高鳴った。
だからこそ言える言葉。
「いい勝負をありがとう。次は絶対に勝つ」
「……こっちこそ……次は絶対に勝つ……」
お互いに握手をし、模擬戦は幕を閉じたのっだ。
最後につけ足しておくとウィークは瞬殺されていた。