11話 Bad reputation, and breath~悪評、そして瞬殺~
無事魔法テストが終わり、昼食の時間になったので食堂に向かうことにした。
食堂に入ると、先にテストが終わったユイナとウィークが、いつもの席に座っていた。
「イガラシ君お疲れ」
「カズト、テストはどうだった?」
ユイナは心配そうに聞いてきたが、そんなに失敗すると思ってたのか……
とりあえず席に座り、テストの事を話した。
一回目と二回目まではうまくいったこと。
最後に少し失敗したこと。
一通り話し終えると、ウィークが何かを言いたそうにしていた。
「なんだよウィーク?言いたいことがあるなら遠慮なく言えよ」
「いや、これを言うと絶対にイガラシ君は怒るから」
「そんな事言われたら気になるだろ。別に怒らないから言ってみろよ」
「絶対に怒らない?」
「絶対に怒らない」
「そこまで言うなら言うよ。イガラシ君ってさスツビツの男みたいだよね」
「スツビツの男?誰だよそれ。早口言葉の言葉か?」
「ハァ……たまに思うけどイガラシ君てなかなか世間知らずだよね」
「誰が世間知らずだ!?」
ウィークにバカにされて少しイラッとしたので、ウィークの顳顬を両手でグリグリしていた。
「痛い痛い!今怒らないって言ったじゃん!」
「ウィークにバカにされたから、怒る事にした!」
「なんて理不尽な……」
理不尽では、無いと思う……
そんな事よりスツビツの男っていう読みにくい名前の男は何なんだ?
「そのスツビツの男っていうのは何なんだ?」
「それはね、旅をしていたとある男の話なんだよ」
俺の疑問にユイナが答えてくれた。
「旅をしていた男っていう事はわかったけど、それが俺とどこに似ているんだ?」
「スツビツの男は、旅をしながら世界を巡っていろんな人を救っていったんだよ。だけど、スツビツの男は周りの少しずれていて常識もなかったんだ。そんな男がある日良かれと思ってしたことが、結果として一つの町を壊滅状態まで追いやってしまったの。それからスツビツの男は、周りと少しずれていて、いろんな物を壊してしまう愚者と思はれるようになったんだよ」
なるほど、つまり俺は愚者といわれる男に似ているねと言われたのか。
何だかまたイライラしてきた……
「ちょ、痛い!イガラシ君、頭を強く握らないで!」
「つまりウィークは、俺が愚者って言いたいにかな?」
「だって!常識は知らないし、魔導石は破壊するし、スツビツの男に似てるなと思ったんだよ!」
まあ確かに、この世界の常識は知らないし魔導石は破壊したからな……
「それ、私も思ってた!」
「ユイナもか!」
そんなくだらない事を話しながら三人で昼休みを過ごしていた。
昼休みが終わり、三人で体育館に向かう。
体育館にはカイソン先生が待っていた。
「諸君!魔法のテストの後は、模擬戦だ!ルールは、決められたフィールド内でのみ戦うこと。くれぐれも、不正はするなよ。不正を行った場合、成績を下げ、テスト不合格とするから、肝に銘じておくように」
カイソン先生の説明が終わった後、模擬戦が始まっていった。
激しい打ち合いが繰り広げていたが、ふと思った。
対戦相手は誰だろう?
事前に言われていなかったからな。強い相手に当たったら嫌だな。
このクラスで強いと思うのは、正直言ってユイナぐらいしかいない。ウィークは剣術苦手そうだし。
「なあユイナ、もし対戦相手になったらお手柔らかに頼むな」
「嫌だよ、カズトには全力で戦わないと負ける気しかしないよ」
「いや、そんなことないぞ。俺、ここに来るまでまともに剣なんて降ってないし、ましてや運動なんてそこまでできていなかったぞ」
「嘘!だって私を助けてくれた時、盗賊相手に拳で立ち向かって殴り倒していくような人に手加減なんてできないよ」
二週間前ぐらい前は、受験と過度なストレスで、運動をしていなかったなんて言っても信じてくれないんだろうな。
そんな事をぼちぼち考えながら待っていると、六組目が終わった。
そうするとスカード先生はユイナの方を見て口を開く。
「次は、ユイナとミリカ・ファロンの模擬戦を開始する!」
どうやら次はユイナのばんみたいだ。これでユイナと当たる可能性はなくなった。
だから、ユイナには言いたい事がある。
「頑張れよ、ユイナ。応援しているからな」
「ありがとう、カズト。行ってくるね」
そう言い残し、ユイナはフィールドに向かっていった。どうやら対戦相手は女の子みたいだ。
フィールドの中に入ったユイナと、対戦相手のミリカ・ファロンは木剣を構える。
「模擬戦、始め!」
その瞬間、スカード先生が試合の開始を宣言した。
ユイナは開始と同時に相手との間合いを詰める。そして下に潜り込み上えと剣を振るう。
カン!
甲高い音を立てながら木剣は宙を舞う。そして切先を相手の首にあて模擬戦は決着した。
「両者そこまで!この模擬戦の勝者はユイナのものとする。
瞬殺。それしか言葉が思いつかなかった。もし、ユイナと模擬戦で当たっていたら負ける気しかしない。
それにあの動き、絶対に初心者ができるような動きじゃない。
ユイナって本当に何者なんだ?
そんな事を考えていると、両者が握手をしようとしていた。
「対戦ありがとう」
「フン、次は絶対に倒しますから覚えておきなさいよ!」
「楽しみに待ってるね」
何処かで聞いたことのある捨て台詞を吐きながら、ミリカ・ファロンはフィールドから去っていった。
こうしてユイナとミリカ・ファロンの模擬戦は幕を閉じた。