第三話大地の龍王にきいてみる。
文語力ks
「たどり着いたぞ...」
「ええ、そうね。」
龍王の間
普段龍王が寝泊まりしている
龍王の住みかだ。
ここで笛を吹けば龍王は現れるとの噂。
ここに来るまでに何度も竜とでくわし、
体がヘトヘトになっている。
今龍王に襲われたら間違いなく殺されるだろう。
「ファイアドラゴン6体に囲
まれたときはほんとに死ぬと思ったが、
逃げ切れてよかったぜ...」
「そうね、私ももうへとへとよ。」
「マリー、準備はいいか?」
「シルア?挑むわけではないのよ?
私はいつでもいいわよ。」
「分かってるさ。
もちろん私もきくだけだ。
よし、呼ぶぞ」
ピーロロロロロー。
地面が揺れる。
龍王の間にある溶岩が
音をたてて飛び散る。
なにかが崩れる音が延々と響く。
ゴロロロロロロロロ
ガン!!
ガン!!という音と同時に
部屋中央の溶岩が地面にのみ込まれていく。
ゴポゴポと音をたてて弾けていた
溶岩は落ち着き部屋に静寂が訪れる。
突然天井の扉が開き、突然溶岩が降ってきた。
ポツリポツリと。
ザバァァァァァ!!!
天井から大量の溶岩が落ちてくると同時に
龍王が現れる。
体にマグマを纏っているその姿は、
見ているだけで目を思わず閉じてしまう
なにかがある。
龍王は二体いる。
大地の龍王、天空の龍王。
目の前にいる紅蓮の龍は、大地の龍王だ。
『我目ざませし尊ふべき強者よ...
我に何を求むる。
知恵、力、勇気より選ぶべし。』
老人が子供に言い聞かせるように
ゆっくりといい放たれる言葉は、
今ここに圧倒的強者の存在を知らしめる
には事足りすぎている。
空気が痛くなるほどの緊張感。
だが、そこにある謎の自信、勇気。
伝承によると、
知恵を選べば知りたいことに
答えてくれ、力を選べば龍王の鱗より作られし
武器を与えられ、
勇気を選べば戦いにより実力を
証明した後、龍王の加護を与えられるそうだ。
全てを選択した場合、それすなわち
殺し合いを意味する。
「私たち二人は、
あなたの知り得る万物の知恵の一部を
お借りしたいです。」
『知恵を選ぶか...
では、何の知恵を求むるか。』
「あなたは、十色の戦士を
知っているだろうか」
『勿論。十色の戦士、世界の
あちこちに突如現れたる最強の戦士達なり。』
「そうです。私たちが知りたいのは、
その十色の戦士の正体です。
彼等は同一人物ではないのでしょうか。」
『否、彼ら同一にあらず。
ただし、彼らは分身である。』
「一体なんの分身なのでしょう。
その本体は何処にいるのでしょう。」
『彼ら、この地より遥か南、
深淵に住まう人間の分身なり...
その名、蓬莱信也と申す。』
普通に質問にはこたえてくれた。
だが明らかに様子がおかしい。
何かがある。そう思わせる態度だ。
それにしても、深淵というのは、
また酔狂なものである。
龍王に与えられし権能の1つが叡智。
万物を一日一度限り知ることができる能力だ。
であるからして、その答えに間違いはない。
だが、深淵というのは近づくだけで
体が弾け飛ぶ危険地帯。
そんな場所に一人の人間が居るはずがなかった。
ましてや、住むなど。
「龍王様、あなたはなにか、
我らに隠しているのではないか?」
部屋が静寂に包まれる。
気が重い静寂というよりは、
あまりにも馬鹿馬鹿しい。
シルアとマリーが龍王を責め立てるようにして
じっとみつめる。
・・・ チーン
さきにしびれを切らしたのは龍王だった。
『なにこの静寂!わりと怖いんだけど!?
もうめんどくさーい。ったく、
なんでばれるわけよ。表情出てた?
もう、せっかくシリアスな雰囲気出してたのに
台無しにしちゃってー。威厳もくそもなくなるじゃない。
そうよ、隠してるわ。けっこう重要なことをね。』
さっきの濃密な権威から一変。
砕けた態度になった龍王は諦めたように
ため息をついて話し始めた。
「それはいったいなにか
きいてもいいだろうか。」
『あなた達、魔素の根源って
知ってるわよね?』
「あぁ、マナベースのことか?」
『それよ、それ、信也という人が
飲み込んで、完全に
自分の力にしてしまったのよ。』
「・・・は?」
『マナベースを飲み込み、
操作することに成功してるのよ。
まさに如何様ね。そんな人にあなた達は
近づけるのかしら?あなた達が望むなら
連れてってあげることも可能よ。でも、
その先で死んでも知らないんだから』
「行かせてくれ!」
最早二人に迷いはなかった。
それほど強い人間が、この世に居る。
それだけで二人が爆走する理由は十分だ。
シルアはその存在に競争心と好奇心を、
マリーは期待と好奇心を抱いていた。
『勇気があるわねぇ。
いいわ。私も412年ぶりに会いたいし
前に暴れたとき来るなって言われてるからあれだけど、
改めて謝るのも必要よね!
さぁ、決まればすぐにいくわよ!
私に乗って!』
「え?いいのでしょうか?」
『いいから!』
「おっしゃぁ!いくぞー!」
大地の龍王は、
魔素から体を守る結界を全力ではって、
飛び始めた。