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最近ダークヒーローの名言を勉強しています。
悪役の発言には往々にして真理が混ざっていることがありますよね。
全員の視線が集中する中で。
「甘い!」
ただ一言そう怒鳴りつけるように叫ぶ一真。
瞬間、一気に全員の目が見開き一つの方向に注視する。
「このチームはクズだ。ゴミだ。そしてお前らもだ。
何だこのテントは。この土地は。この生活は。この体たらくは。」
馬鹿にされていることよりも驚きの方が勝ったのだろう。
いまだに全員静かに一真の話を聞いている。
「自分達の命が他人に握られているのに何でのうのうと生きていられる。」
全員が場の空気に呑まれそうになる中最初に口を開いたのは意外にも桔梗だった。
「でも…仕方ないんですよ。アイテムがない人間がアイテム持ちに勝つなんて。」
それに続くようにあやめが口を開く。
「そうよ。アイテムなし同士の戦いならまだしも、神に戦いを挑むなんて。」
あやめに援護射撃するようにせいじが続く。
「そうだぜリーダー。そもそもあんた身動き一つとれねえのにどうやって。」
続いて夜と朝。
「リーダー。発想はすごく面白いです。」
「けど、どうやって…。方法はあるんですか。」
面白がっていた夜と朝でさえ空気にのまれて俯き気味だ。
誰かの質問に答えるでもなく一真は質問をぶつける。
「なあ、俺たちが殺されるのはなんでだ。なぜ殺されなくちゃいけない。
俺たちが弱いからか?相手が神だからか?殺される運命にあるからか?」
一真が疑問をぶつけていくたびに下を向いて俯く人数が増えていく。
全員の顔が下がったところで続ける。
そこまで喋っていつの間にか上がっていた全員の顔をそれぞれ見渡してから続ける。
「相手が強いとか俺が弱いとか動けないとか…そんなことは関係ない。
俺は今まで死んでいた…。生きながらにして死んでいたんだ。
けど俺はこの世界にきて自分の生を取り戻した。
だからその生を誰かに奪われるわけにはいかないんだ。
お前らはまだ死んだままか?そうでないなら俺と戦おう。
自分に都合の悪い神ならそんなもの…殺してしまえ!」
一真がそう言ってから何秒経っただろうか。
それぞれに思うところがあったのだろう。誰も口を開かないまま数秒の時が流れた。
「なあ、リーダー。リーダーに着いて行けば本当に大丈夫なんだよな。
いつ殺されるか分からない恐怖と戦う必要もなくなるんだよな?
この命は他人に握られてるんだと思うと生きてる心地がしなかったよ。」
最初に口を開いたのはせいじだった。
「あぁ。当たり前だ。保証する。」
「だってよ。あやめさん。俺はこの人信じるに足る人物だと思うぜ。」
「信じるかどうかは置いといて、こいつがアイテム持ちだっていうのは
事実だしここは付いて行った方が得策かもしれないわね。」
「面白い。おもしろいよリーダー。あんた最高だよ。
リーダーに着いて行くよ。」
「僕は、リーダーに着いて行くにいちゃんに着いて行くよ。」
「え、ええ。みんな~。じゃあ、僕も…。」
なし崩し的に同意した桔梗を最後に全員が一真に着いて行くことになった。
「皆俺たちは…神を殺すぞ!」
くっ。くくく。あはははは。こいつ等馬鹿すぎる。こんな臭すぎる演説で掌返すなんて。
やばい、笑いを堪えるのが…。うっ。くっ…。
一真は内心笑いをこらえるので必死だった。
そろそろ主人公のクズさが露呈してきましたね(笑)。
個人的には今考えてあるキャラの中で一番好きなんですけどね。