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最近昔使っていた眼鏡を見つけて使っているんですが、
鏡を見るたびどっかで見たことあるなぁと思ってたら(自分の顔なのに)
ハリセンボンの近藤 春奈さんでした。
え
こいつ等なんて言った。
確か俺に従うとかなんとか。
俺はいいけどお前らは本当にそれでいいのか?
…いや、強者の庇護下に入って身を守る根端か。それとも他に目的が?
まあ、どちらにしろ好都合だ。情報を得て、更に生命線を維持できる。
それに新しくできた俺の目的も…。
「あぁ」
敢えて一言だけ、驚きがバレないように
努めて冷静に且つ威厳を出しつつ答える。
「では、早速仲間たちの元へ案内します。こちらへどうぞ。」
ジャイアンが案内をしようと歩き出す。
「おい待て。どこへ行く。俺を連れていけ。」
「え、あ、はい?ですから案内しますのでこちらへ。」
何を言っているのか分からないという様子で聞き返してくる
ジャイアンだったが言ったあとすぐ気づく。
「まさか、さっき言っていたことって本当だったんですか?
植物状態だって。」
信じられないといった様子で目を丸くしている。いや、今でも信じていないのかもしれない。
「だからずっとそう言ってるだろ。この世界で植物状態っていうのは
そんなに珍しいことなのか?」
生前の世界でもそういうやつはいたんだから、何も信じられないことじゃないだろう。
確かに珍しいかもしれないけど…。そういえばおかまのおっさんがなんか言ってたような…。
自分だけこの世界の勝手を知らないことに歯がゆさを感じる一真。
「そりゃそうですよ。だって…。それに、植物状態とか言っといて喋ってるし意識もあるし、
目も動くし…。ん~まあとにかく、いいですから向かいましょう。」
一真の質問に対して説明し終わると体格のいい男は寝転がっている一真を器用に担ぎ上げ、
体に力が入っていないからか中々苦戦しながらもなんとか背負う事に成功した。
なるほどな。あの話が本当なら俺が自分の体を取り戻すのもかなり苦労しそうだな。
それにまず、生命線の維持や情報収集もしなければ。色々しなければならないことが山住みだ。
「なあ、聞きたいことがあるんだがいいか?」
さっきからずっと質問してばかりだなと内心微笑む一真。
「小林夜顔です。」
「え?」
一瞬何を言っているかわからないと質問しようとした一真より早く続けて夜顔。
「こっちが弟の小林朝顔です。」
「どうも、朝顔っす。皆には朝と夜って言われてます。」
やっと思考が追い付いて、なるほどと合点する一真。
「あ、あぁ。俺は蓬木一真だ(よもぎかずま)だ。一真って呼んでくれればいい。
自己紹介が先だったな悪かった。それにしてもあんたら兄弟って信じられないな。
本当なのか?」
そういって背負われながら先程聞かされた兄弟二人を見比べる一真。
「ははっ。それも無理ないですよ。皆にも似てないとはよく言われますから。」
「フッ。あぁ、そうだな。確かに似てない。」
顔を微動だにしない一真だったが声だけで判断できるほどに
楽しさが伝わる声でいう。六年間誰とも会話してこなかったのだ。それも、二度と誰かと会話できるとは
期待しておらず、それどころか自分の生に絶望していた状況からの今である。楽しくないわけがないのだ。
こんな感情いつぶりだったかな。
時を同じくして別の場所。
崖の上で岩陰に身を潜めている少女。
真っ白な紙にミルクティーをこぼした様な髪色で、長く伸びたその髪を頭の横に二つに縛っている。
多分に幼さを感じさせる顔立ち。見た目からでも活発な様子がイメージできる。
「あわわわわわわわわーー。何なのよあれー。なんで神なんかがここにいるのよ。
それにあのアイテム…。とにかく早く躑躅野様に伝えなくちゃー。」
誰に向かって言ってるのか、そう言い終えるとどこか、恐らく主のもとへ忙しくかけていく。
はぁはぁはぁと如何にも頑張ったといいたげに肩で息をしながら
報告の言葉を口にする少女。
「今日…はぁ…近くの平原で…ぅん…変な奴を見つけました。」
「変な奴?」
たった五文字という圧倒的に少ない情報量からでも読み取れる、
無抵抗に誰をも安心させるようなそんな優しい声で聞き返す男の声。
「はい。なんかずっと寝たきりで目しか動かさなくて、あと、口を動かさずに喋るんです。
アイテムは見えない壁のようなものを作っていました。それに…。」
やっと息を整えて話すが別の理由で言葉につまずく少女。
「なんだい?さぁ、いってごらん。」
そういいながら水筒を差し出す男。
これで息を整えろということだろうか。
恐らく中には水が入っているのだろう中からはぽちゃんぽちゃんと水が水筒に当たる音がする。
「あ、ありがとうございます。」
よっぽど喉が渇いていたのだろう、そういってあっという間に
もらった水筒の中身を空にすると確認するように水筒の中身を見たり、逆さにしたり、振ったりと
目の前の事実をひっくり返そうとしている。
もう水は飲めないのだと悟ったのか、諦めたように報告を続ける。
「実はリリーがいたんです。しかもその寝たきり男に言葉を与えたみたいで…。
あいつの性格は分かってますがどうしてあいつがここに…。」
相当混乱しているのだろう報告の中に自分の疑問が入っていることにも気づかず
顔を落とす少女。それを見かねてか、
「そんなに思いつめる必要はないよ。あいつの奇怪な行動は今に始まったことじゃないだろ。
それより、ありがとうね、アイリス。助かったよ。」
そういってある種魔性ともいえる、見るものを魅了する笑顔とともに
報告に来たアイリスを労う。
自分の言葉に酔っているあやめを他所に自分の思考に集中する躑躅野。
あの神のことはいいとして気になる報告があったな。植物状態の男かっ…。
「ふ~ん。」
どんな心情なのかただそれだけ呟いたその男は
顔に微かに笑みを浮かべていた。
伏線ってどうやって張ればいいのでしょう。
悩みます。。。