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俺は死にたいけど死ねない  作者: ひろし。
2/18

感想いただけたら幸いです。

朝日が差してきて目覚めた。


(んん…朝か…。)


目を開けるとそこには見慣れた天井ではなく、よく晴れた大空が広がっていた。右横にはいつもの点滴もない。

微かに風を感じることもできる。


(おっと。まだ夢の中だったか。)


再び目を閉じるとおかしなことに気が付く。


(ん?ちょっと待て。何で夢の中なのに気温を感じるんだ。それに、感覚がリアルすぎる。

 そもそも、あいつらは何だ?ジャイアンとスネ夫か?)


「くそっ!おらっ!」


目を開けると自分の寝ている足側で

屈強な男と切れ長な目の男が目の前に壁があると見立てて、それを殴る

パントマイムをしている。


(こいつらなんで俺の前でパントマイムしているんだ?プッ)

内心ではかなり笑っていたが、当然表情は全く動かない。


(やけにパントマイムのレベルが高いことは置いといて、

いったいこの状況は何なんだ!病室は?こいつらは?ここはいったいどこだ?まったくわからない。)


「ぉぃ  おい  おい!」

男たちが見えない壁を叩きながら叫んでいる。


(なんだ?)

と言ったつもりだったがもちろん声は出ていない。


「くそっ!さっきから無視ばっかしやがって。せっかく寝てるやつがいたから、そのうちに

アイテムを奪ってやろうと思ったのに。」



(ふむ。なるほど。こいつらはパントマイムだけじゃなくて演技も上手いようだ。

 一瞬本当の盗賊かと思ってしまった。まあ、本当に盗賊ならパントマイムをする必要は

 全くないのだが…。そんな事より早くここに連れてきた理由を話してほしいんだが。

 パントマイムをするなら病室でもいいのに。まあ、たまには外の空気を吸うのもいいか。

 母さんと妹に感謝だな。だが、ほどほどにしてくれ。俺は点滴がないと生きていけないんだから。)


「このままじゃ拉致あかないよ」

「こうなったらボスを呼んでくるしかないな!」

そういうと男たちは、どこかへ走っていった。

どこへ行ったのか見たかった、残念ながら首が曲がらない。


(おぉ!次は何だ?)

まだかまだかと待ちきれない様子で次に何が来るのか楽しみにしていると

男たちが去ってから五分程経ったところで男とも女ともいえるような中性的な顔の子供が

歩いてきた。それにしてもコスプレだろうか不気味な格好をしている。

ピエロのような化粧・恰好で手にはどうみても不似合いな日本刀を持っている。


(なるほど。今度は道具を使うわけか。

だが、それにしても役不足が過ぎると思うのだが?それに、キャラがめちゃくちゃだ。

こんな子供じゃ迫力がない…)


そんなことを考えていると、目の前まで子供がやってきていた。

子供は、足元に寝ている一真を見やり鎌の先端を一真の心臓の上に合わせると

そのまま鎌を突き刺した。


(なっ!)


「いや~。実はずっとあいつらと君のやり取りをみてたんだよね~。

 君なかなか面白いアイテムを持ってるんだね?」


(………)


答えは返ってこない。


「お~い、なんで無視するんだよ~?

 お~い、お~い、お~い。」

死体をつつきながら、尚も喋りかける。


「だから、喋りたくてもしゃべれねーんだよ!」

(今のは誰の声だ?…いや、間違いない。俺だ。俺の声だ!)

思考するより早く、先に答えが出た。頭ではそんなはずはないと分かっているものの

耳に入ったその声は疑いの余地もなく自分の声だと判断させる。

(少し声変わりしているが俺の声だ。6年ぶりの俺の声。。。

いや、そんな事よりどういうことだ。心臓を貫かれたかと思ったら急に声が出るようになった。

かといって口は全く動かない。それどころか全身通常通り動かない。変わったのは声が出るようになったということだけ。恐らくこいつのおかげか。)

そう思いつつ目の前の子供を睨むと

わざとあざけるように

「やっぱり喋れるじゃないか!一瞬僕の技が失敗したかと思ったよ~。」。


(こいつ中々に腹が立つ喋り方するな。どうにかして黙らせたいが

 今はそんな事よりこいつに聞きたいことがある。)


「あぁ、無視して悪かったよ。わざとじゃないんだ。

 喋れるようにしてくれてありがとう。

 それよりも、一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな」

込み上げる感情を抑えつつ、なるべく多くの情報を引き出せるようにと

努めて丁寧に聞いてみる。


「えぇ~、一つだけでいいの~?

 まぁ、いいよ~。なに~?」


(おぉ、こいつガキだが本気でなぐりたい。体が動いてたらホントに殴ってるとこだった。)


「じゃあ聞くけど、ここは異世界なのか」


首を傾げつつ先程までのニヤニヤしていた顔を不思議そうな顔に変える子供。


「あれ、そんな事でいいの?まあ、そうだね~。

 半分正解、半分不正解!ここは、あの世だ!」


頭の中であの世という言葉だけがリピート再生される。


驚きはない。予想の範疇ではあった。静かにここがあの世だという言葉を飲み込む。

だが一つ解せない。あの世だというからには、死人しか来れないはずだ。

俺は死んだ覚えがないし、寝ている間に殺された可能性も低い。6年間、家族や病院関係者意外と

関わってない。そもそも恨まれるようなことなんて出来ない。

植物状態になる前に関わった人間に殺された線もない。殺すほど憎んでいたなら

今まで生きれていたのが不思議だ。


「なるほど。そういうことか。それにしても死んであの世に来たっていうのに

 相変わらず身体は動かないんだな。ははっ。

 この世界の人間は皆一回死んだ人たちなのか?」


「ぶっぶ~~~~~。2個目の質問はうけつけませ~ん!」


くぅ~~~~~~~~~~~。

危ないとこだった。体が動かなくてよかった。

動いていたら、重要な情報を聞き出す前にあの手この手を使ってでも殺すとこだった。


「でもその代わりに教えてあげるけど、君はまだ死んでないよ?

それにしてもたった一つの質問にあんな事を聞くなんて、ばかだな~。」


よし、餌に掛かった!

相手が間違ったことを言っていたら訂正したくなるのは人の性だ。

君はまだ死んでいないというのは、他の人間は一回死んでるといってるのと同義だ。

俺の生死を知っている保証はなかったが、聞けて良かった。


「いや、そうでもないさ。ここがあの世だって事が分かれば

 ほとんどの疑問は解決するからな。俺がここにいるのも、あいつらが

 パントマイムをしていた理由や意味不明な言動も。

それに、こうして今俺が喋れている理由も。」


「全員が持っているかは分からないけど、

 こっちに送られてくる人間はアイテムとかいう特殊能力的なものを持ってるんだろ?

 そして、俺も君も持ってる。そうだろ?」

(恐らく俺のアイテムは防御系の能力だ。それならあの男たちの奇怪な行動の理由もわかる。

 それと、アイテムを奪うという発言、あれは自分から他社にアイテムを譲渡・奪取できるということだ。)


「お兄さん、もしかして頭いい?」

なぜだか嬉しそうに口をにやけさせ子供が聞き返してくる。


「頭いいかどうか分かる前に植物状態になったからな…。

 まあ、でも近くの図書館にあった本は全部読んだから人並みの知識は

 あると思うぞ。」


すると子供は、さらに嬉しそうに破顔した。

「そうなんだ!じゃあ、これから楽しめそうだね。楽しみにしてるよ。

 あいつらもそろそろ来るだろうし、僕はここらへんで。」

 そういうと背を向けてどこかへ消えて行ってしまった。


なんだったんだあいつは。

それに、最後の楽しめそうだねという言葉が気になる…。




既に何話か先まで書いてあるんですが

かっこいい名前が思い浮かばず苦労しています。


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