18 添い寝
今回自分でも書きながらニヤニヤしちゃいました。w
(・∀・)ニヤニヤ
辺り一帯草原地帯。揺れる草花が風の流れる方向、速度を形どっている。そんな中―――
ガタガタガタガタガタガタ―――相も変わらず夜がボロい台車に一真を乗せて走っている。
「痛っ、痛い、痛いって!おい、もう少しスピード緩めろ!」
台車に手を括りつけられた一真が悲痛の叫びを訴えている。
一真の願いはどうやら聞き届けられたらしく台車を漕ぐスピードを緩める夜。
「まあ、そうですね。急いでるわけでもないですし、ゆっくり行きましょうか。」
「当たり前だろうが。何回言わせるんだ。」
剣幕の一真に対しあくまでも笑顔を崩さない夜。
「そう言えば、私達ってこれから有力集落のミミ・エデンって街に行くんじゃなかったの。
これじゃ違う村の方角よ?」
思いがけず彩芽が話に入ってくる。ずっと気になっていて機会を疑っていたのかもしれない。
だとしたらその機会は決して今ではないが…。
「良い質問だな。言ったろ相手を誘導するって。
だから俺達がいたっていう証拠を各村に撒いていくのさ。そして言った先々でミミ・エデンに行く途中だって
話を残していけばいい。そうだろ?」
「ま、まあ、それもそうね。」
また馬鹿にされるとでも思っていたのだろうか
準備していただけに調子を狂わされどっち付かずに返して黙ってしまう彩芽。
「それに、本の知識だけじゃなくて実際にこの目でこの世界の文化レベルが
どんなもんなのか見てみたいしな。」
明るいトーンで言う一真に対してだが今度は皆嫌なものを思い出すように顔を落としている。
彩芽が答える。
「あんまりいいもんじゃないと思うわよ。」
何かを思い出すように、憐れむように悲痛な顔を浮かべて
俯く彩芽に一真はそれ以上何か聞くことができなかった。
◆◆◆
「なあ、誰かここがどこか教えてくれないか。」
「目的地の村よ。」
「そんなことを聞いているんじゃない。
何でこんなことになってるか聞いているんだ。」
「戦争のせいね。」
「そうか…。」
それ以上会話をすること無く全員目の前の景色を眺めている。眺めているというより
目の前にあるから否応なしに目に入ってくる。
目の前に映る景色。それは―――
所々穴が空いた見るからに廃れた家屋、活気が感じられない商売人達の顔、服もボロボロ、
地べたに座り込み何やらブツブツ呟く男。地面に突っ伏して微動だにしない人が二、三人。
様相からこの村は既に村とも呼べない程に壊滅状態にあること、
死体が村に転がっているという異常事態。それも一人だけではないことから状態化していることが伺える。
「なあ、この村に住む村民たちには葬式を挙げてはいけないっていう文化でもあるのか。」
帰ってくる言葉はなく、見ると隣りにいた彩芽が無言で首を横に振っている。
どうやら惨状に悲しみこそないもののそれなりの嫌悪感と気持ち悪さは
感じるものらしい。一真は客観的に自分の感情を分析していた。
「そうか。分かった…。今日の宿を探そう。」
その声に答えるものは誰もなく一同は歩きだす。
七人は宿屋の一部屋に集まっていた。
四人分のベッドが用意してある。
集まっているにも関わらず誰も喋ろうとしない、重苦しい雰囲気が漂う。
こういう時は決まって第一声を放つのは―――
「いや~、それにしてもこんな所にも宿屋があるなんて奇跡ですね。ほんと。」
―――夜が脈絡なく明るく大きな声で言い放つ。空気換気のつもりなのかもしれない。
普段ならそれでもいいのだが今回は…。
「恐らく宿泊客の貴重品を盗み取ってかぼったくりで生きながらえているんだろうな。」
「え、えぇ、あぁ。」
即答された答えに返す言葉もなく言葉に詰まる夜。
一瞬で会話が終わったことで場に再び沈黙が漂う。
そんな中今度は一真が―――だが、場の雰囲気を変えてやろうとかそんな気は一切なく。
「あと、ここに来る途中何人かこちらの方をジロジロ見てる連中がいた。
今夜襲って来るかもしれないな…。滅多にやってこない鴨を逃す手はないだろうからな。」
「あっ、はい…。」
ただの事実の確認にどう返していいかも分からずただ
返事をすることしか出来ない夜。
「もう一つ。今日は防犯上一つの部屋で全員寝よう。そして二人ずつペアで
時間交代制で警戒にあたってくれ。以上。俺はもう寝る。」
「え、あっ、ちょっと。まだ他に話さないんですか。
いつもみたいに次の日のやることの確認とか色々あるじゃないですか。ね?」
手を翳して何かを訴えるような表情に顔を歪めながら夜。何とか説得しようとしているのが
見て取れる。周りを見ると全員下を見て俯いている。
どうやらそうしたいと思っているのは自分だけらしい。
悔しさに少し歯噛みする。
「分かりました。じゃあ、俺と朝がまず当番します。その次に戦力が偏らないように
誠志とローが、そして彩芽と桔梗がペアで事に当たる。そういう事でいいですね。」
「ああ。構わない。俺はこれで寝るけどちゃんと忘れずに宿屋の亭主に俺達が
ミミ・エデンに行くってことをそれとなく伝えておいてくれよ。」
自分が植物状態であることを差し引いても
目の前のこの男は何の誠意も見せること無く自分は働かないが
お前たちはしっかり働けよ。と言っている。それも自分のささやかな努力を踏みにじった上で。
その事実に歯を食いしばる思いで感情を抑える夜。
「分かってますよ。朝行くぞ。」
「ちょっ、ちょっとまってよ。」
そう言って飛び出すように部屋を出て行く夜。
後を追うように朝が慌てて部屋を出て行く。
部屋の照らすロウソクも消されて既に辺りは真っ暗に。
火が消されてから三時間経って尚一真は寝れないでいた―――いや、寝ないでいた。
忽然と部屋の扉を開く音がする。
一瞬緊張が走る一真だったが外から物音がしてこなかった事から
敵ではないと判断し緊張を解く。
そして扉を開けた本人は歩く度になる軋む木の床を数歩いて止まり
一真がいるベッドの布団を開いて中に入ってくる。
「随分遅かったな。」
皆が寝ていることも考慮して囁く様な声で声をかけると。
暗闇で見えないその人影は突然かけられた声に驚いた様子で一瞬固まった後、
再び布団の中に潜り込んでくる。だが、返事はない。
「夜。さっきは悪かったな。気を使ってくれていたのに…。」
だがそれでも右隣りからは返答がない。
「おい、俺が謝ってるのに無―――」
そこまで喋った所で遮られる。自分の頬に触れる手に対する驚きで。
そのまま一真の頬に触れる手がもう一本足され一真の右頬に添えられる。
一真が夜の手はこんなに小さかったかと思ったのもつかの間。
両頬に添えられた手が手の主の方に一真の顔を向けさせる。
目の前に現れた光景に頭が真っ白になる一真。
何故ならそこにいたのは夜ではなく彩芽だったから。
ほんの五センチ程の距離とも呼べぬ距離に彩芽と顔を向けあっている。
思わず「あっ」と声を上げそうになった所で彩芽が咄嗟に一真の口に人差し指を当て黙らせる。
呆気にとられる一真に彩芽が嬉しそうに悪戯に微笑んで「シー」と言っている。
「何でお前がここにいるんだ。一人で寝た筈じゃないのか。」
目を細めて睨む一真に、笑顔を貫いてだが彩芽は。
「誰も一人で寝るなんて言ってないわよ。それに体が大きい夜が一人で寝てるわ。
他に開いてる所がなかったから仕方なくここで寝るだけ。」
「なら誠志の所に行けばいいじゃないか。」
眉間に皺を寄せて本気で悩んでいる様子で。
「何で今誠志の話が出てくるのよ。ここしか余ってなかったって言ってるじゃない。」
その様子を見て一真は一人の男に同情せずにはいられなかった。
なるほど…。誠志の奴も前途多難だな…。
「あ、ああ、そうか。じゃあ、俺は寝るから顔の向きを直してくれ。これじゃ寝にくくて仕方ない。」
「じゃあ、こうすればいいじゃない。」
そう言って不敵な笑みを浮かべて布団の中に腕を突っ込むと
スッと一真の腰に手を当て体を持ち上げると顔と同じ向きにする。
「こうすれば寝られるでしょ。」
相変わらず悪戯な笑顔を浮かべる彩芽を見て諦めたように一真は
「そうだな。」
とだけ言って目を閉じた。
その様子を見て―――いや、見つめている彩芽。
数分経った頃。
「あなたも少しは人の気持ちがわかるのね。」
目の前から聞こえる声に眠りに入りかかっていた意識が
再び叩き起こされる。
「何の話だ。」
目を閉じたまま応じる一真。
「ほらあなた夜に謝ってたじゃない。」
「正確にはお前にだが…。当たり前だ。人を何だと思ってるんだ。」
「ふふっ。それに村のあの状況を見て心を痛めてたみたいだし。」
「それは違うな。俺は心を痛めていたんじゃなくて考え事をしてただけだ。」
「へ~。どんな考え事を?」
「人は何処までいっても人なんだって話さ。」
「なにそれ。馬鹿みたい。」
言葉とは裏腹に包み込むような優しい声音で罵る彩芽は
だがしかし目を閉じて一真の言葉に耳を傾けている。
「まあな…。この世界の人間は皆一様に死ぬという痛みを分かち合っている。
それにこの世界には餓死ってもんがないから食糧問題に悩まされることもない。
だから、戦争をする奴なんていないのかなと思ってたよ。
でも現実は違った。人間は本当の所は食糧問題なんて只の建前で
戦争したくてたまらないのかもしれないな。世界や条件、支配者が変わった所で
結局人は人のままだ。」
「ふ~ん。おやすみ。」
「おいっ。なんか感想ぐらいないのかよ。」
「なに、感想なんか欲しかったの。そうね…。
でもだからこそあの世でアイテムを持って転生してきた
いわば人間を超えた人たちならこの世界を変えられるんじゃないかしら。
そう……貴方みたいに…。」
「ふっ。なるほど…。おやすみ。」
「おやすみ。」
そう会話を締めくくると後には夜の静寂だけが残った。
こういうの一般にツンデレっていうんですかねぇ。




