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初めの回なのであまり大きく話が動きませんが
気長に待ってもらえたら幸いです。
真っ白な大きい部屋に窓が二つ。そこには、ベッドが一つだけ供えられているだけで他には何もない。
ベッドには少年が一人横たわっている。少年の腕からは点滴用のホースが伸びている。
肌は色白というよりむしろ血の気がない感じで、
目はキリっとしているがまったく力を感じさせない。顎や鼻はシュッとしていて
全体的に言って美形だ。
「「誕生日おめでとー!」」
二人の女性がショートケーキを持ちながらベッドに横たわる男に向かって喋る。一人は制服を着ている。
もう一人は母親だろうか。40半ばといった印象だ。
「お兄ちゃん驚いたでしょ!?誕生日サプライズ!」
どうやら、三人は家族のようだ。
制服の女の子が喋りかけるが
目を声のするほうに向けるばかりで、男は眉一つ動かさない。
「こら、知恵それじゃお兄ちゃんが喋れないでしょ?
ちゃんとボード?をみせてあげなくちゃ。
「わかってるよー。」
そういいながら女の子は鞄からクッション性の高そうな生地のケースを取り出すと、
中から日本語が書かれた透明な板を取り出した。
板を男の顔の前に掲げると、男は目をあ・り・が・と・う
の順番に動かす。
「どういたしまして!お兄ちゃん今何歳かちゃんと覚えてる?」
母親が切っておいたケーキを食べながら話している。
男はボードを使って話す。(じゅうはちさい。)
「そうだよ!あれからもう六年も経つんだよ?」
「そうねえ…。でも、あんな凄惨な事が起きたのに命があってよかったわ。
それに、かなりのレアケースだけど意識が残ってくれて…」
「そうだよお兄ちゃん?命があるだけ感謝しなきゃね!?」
妹が続けた。
二人とも、その時のことを思い出すように少し上を見ている。
(うん。わかってる。)
「じゃあそろそろ行くわね、一真。今日来るのが遅くなっちゃって少ししか
一緒にいれなくてごめんね。あなたの分のケーキもちゃんと残しておくから。」
「また来るねお兄ちゃん!」
そういって二人は部屋を後にした。
一気に静けさが充満した。
あぁ、死にたい。
呟くつもりでいったが、何も聞こえない。辺りは、依然として静かだ。
あぁ、死にたい。生きているのがこんなにつらいなんて。文字通り毎日寝て起きるを繰り返す毎日。
強いて言えば、天井を眺めるだけ。
俺は12歳の時に、道路に転がったボールを拾おうと道路にとび出したところを
トラックに轢かれて植物状態になった。ありきたりな話だ。こんなのを小説にしてもまず売れないだろう。
だが、幸か不幸かーいや、確実に不幸ー非常に稀なケースで意識が残っていて、目の筋肉だけは動いた。
それから6年間起きて天井をみているか寝ているかといった生活を送ってきた。
目だけでも動くのに感謝出来たのも最初の一週間ぐらいで、二週間した頃には意識が残っていることさえ
呪っていた。いつ精神が崩壊してもおかしくなかった。いや、いっそ崩壊していた方が良かったかもしれない。
だが、かろうじて正気を保っていたのは確実に家族のおかげかな。
頭の中で記憶を再生すると
頭の中によぎるのは殆どがこうなる前の記憶だった。
(最近面会に来る回数減ったよな。母さんは新しい趣味見つけて忙しいみたいだし、
妹は部活で忙しいのかな。そもそも、治る見込みもないやつを六年間も
面倒見るなんて大変だよな。もう皆俺の事忘れ…)
目から流れるものに気付いたからか、それとも自分の考えを認めないためか。
とにかく一真は思考を止めた。
(もういいや。今日はもう疲れたからねよう。)
思考を振り切るようにそう心の中で呟くと
一生目覚めることのないことを願いつつ、
深い眠りに落ちていった。。
どうだったでしょうか?感想お待ちしてます。