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飴玉の魔法 ③

「こんにちは。検問所のお姉さんに聞いてきたんですけど」

「あら、いらっしゃい。検問所の? エミリかしら。なあに?」

「えっと、ここでなら買い取ってくれるかもしれないって、これ、持ってきたんです。森で採った木苺なんですけど……」

「木苺ね、どのくらいかしら? ……あらまあ。ずいぶんと採ってきてくれたのね。これなら来週は行かなくても大丈夫そうだわ。そうね、銀貨三枚で三,〇〇〇ジールならどうかしら?」

「あの、実は私、お金の価値がよくわからないんです」


 そう言って私はおばあちゃんとの生活のことを話す。


「まあ、そうだったの。じゃあ簡単に説明するわね。銅貨が一〇枚で一銀貨。銀貨が一〇枚で一金貨。金貨が一〇枚で白金貨ってなっているの。銅貨、銀貨、金貨がこれよ。銅貨数枚で一食食べられる感じね。宿はそこそこで銀貨一枚くらいいるわ」

「そうなんですか。じゃあ、それで。銀貨三枚でお願いします」

「わかったわ。また採ってきたら売りに来てくれてもかまわないわよ」

「はい。ありがとうございました」


 へえ、じゃあ、一銅貨は一〇〇円って考えればいいのね。銀貨は千円で、金貨は一万円かな。覚えるの楽でよかった。で、単価はジールなのね。

 私は銀貨三枚を受け取ると、ミニアニマルのがま口に入れて懐に入れておく。こうしておくことで、スリから身を守っているのよね。

 さて。

 あとは、宿屋をとらないといけないのよね。これもエミリさんっていうのね、あの女の人。エミリさんから教えてもらったところへ、行く。

 そうして宿を借りると私は冒険者ギルドがあるって、検問で並んでいた時に前の男性が話していたのを聞いたから、向かってそこで身分証を作ることにした。


「ここがそうね」


 私は両扉の片方を開けて中へと入ると、冒険者ギルドの中は、なかなかに小奇麗部屋の作りで驚いた。もっとこう、雑多というか、柄の悪い冒険者たちがたむろってて、掲示板に紙切れが貼りまくられてて、カウンターの受付には姉御肌の綺麗なお姉さんってイメージだったんだけど。

 実際は小奇麗な部屋に、いくつかのテーブルに冒険者たちが座って会話してたり、掲示板の前で静かになにを請け負うか考えてる人がいたり、受付は男性だったりした。


「冒険者登録をしたいんですけど」

「はい。ではこちらにご記入をお願いします」


 そう言って渡された用紙は読めるけど書けなかった。


「すみません。読めるんですけど、書けなくて」

「ああ。わかりました。では、言って下さい」

「はい。名前は椎名茜。あ、アカネでいいです。職業? ……は、とくにないです。あ、でも魔法は使えるから、魔法使いですね」

「アカネさんに、魔法使いですね。その若さで魔法使いとはすごいですね」

「おばあちゃんから教わったんです」


 もうこうなれば、なんでもかんでも亡くなったおばあちゃんから教わった作戦で通してしまおう。


「本を読むのは好きだったんですけど、字の練習が苦手だったから、つい。自分の名前しか書けないんです」


 そう言って、お兄さんが私の名前を書いてくれた欄を指差して言う。でもほんと、なんで読めるのに書けないんだろう? あとで五十音表みたいのを書いて、練習しておかないと駄目だね。じゃないと、生きにくい。


「あの、閲覧室とかあります? 過去の依頼の内容を調べたりできるような」

「ありますが、入場料として一,〇〇〇ジールかかりますが」

「そうなんですか……。あまり余裕がないので、また今度にします」

「でははい。これがギルドの証です。この指輪の宝石に血を垂らしてください。それに反応してあなたのランクがわかるようになっております」

「ランクってAとかDとかですか」

「ええ、その通りです。SS金、S銀、A黒、B赤、C青、D緑、E黄まであるのですが……。どうやらあなたはDのようですね」

「Dですか」

「ええ。始めはだいたいEからCの方が多いですね。この世界に貢献した分によって、その宝石の色が自動で変わるようになっています。そしてその色でランクがわかるようになっているのですよ」

「なるほど」

「依頼達成も、した時点で自動的にギルドでわかるようになっていますから、報告などは一切しなくても大丈夫です。あとは、こちらの冊子をお読み下さい」


 そう言ってお兄さんは私に冊子を渡してくる。ふうん。ギルドの手引き、ね。あとで読んでおこう。私は冊子をくるくる丸めてお尻のポケットに入れる。


「どの依頼を受けるかだけは、こちらの受付ですることになっていますから、なにかありましたらいつでもお越し下さい」

「わかりました。ありがとうございます」


 冒険者ギルドを出ると、私は宿屋へと戻ってさっそく冒険者ギルドの手引きを読んだ。この辺の情報はあとでその都度思い出せばいっかな。

 はあ、今日は異世界初日でつかれたわー。ご飯はいらないや。食欲がない。

 もう今日は寝ちゃおうっと。おやすみなさい。


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