4.ファミレス殺人事件 前編
その日、俺は聡美と一緒にレストランへ来ていた。
もちろん、食べているのは聡美だけだ。
「おや、坂上くんじゃないか」
俺たちは声の方を向いた。
そこには五位堂の姿があった。
「五位堂さん!?」
「こんなところで会うなんて奇遇だね」
「五位堂さんは事件の捜査ですか?」
「いや、食事してるだけだよ」
その時、悲鳴が聞こえてきた。
「きゃああああ!」
俺たちは悲鳴の下であるトイレへ駆け付けた。
そこには腰を抜かしている女性と、便器に座っている血塗れの男性の遺体があった。
五位堂は携帯で警察を呼んだ。
警察がやってきて鑑識作業が始まる。
それはそうと、被害者はどこだろう……?
俺は辺りを見渡した。
「いないわね」
「成仏したのかな?」
「出来ればいて欲しいわね。犯人と手口が分かるし」
鑑識作業が終わり、遺体が運ばれていく。
「ん?」
俺は店の外をおろおろする人物に気付いた。
「外に誰かいる。待ってて」
俺は店の外へ出た。
そこには被害者の霊がいた。
「うわああああ! どうしようどうしよう!」
「そこのお兄さん?」
「え?」
被害者の霊がこちらを見る。
「君、俺が見えるの?」
「俺も死んでますんで」
「そうなんだ。それより、俺を殺した犯人を見付けて警察へ突き出して……あ、君も死んでるんだっけ。うわああああ! どうしようどうしよう!」
「ちょっと落ち着きなさいよ!」
聡美が出て来て霊をぶん殴った。
「いってえ! 何すんだてめえ!?」
キレた霊が聡美を攻撃するが、すり抜けてしまった。
「何で!?」
「霊は現世のものには触れないのよ」
「でも今殴っただろ!」
「それはほら、私が霊媒師だから」
納得。
「それで、犯人は分からないの?」
「ああ。ドアを開けたらいきなり薬かなんかを嗅がされて眠っちゃったからな」
「聡美、取り敢えず現場に戻ってみようよ。何か進展があるかもよ」
俺と聡美は現場に戻った。
五位堂が刑事と話をしている。
「なるほど。ということは、被害者はクロロホルムを嗅がされ、眠りこけたところを滅多切りにされたのか」
「後は凶器が出て来ればいいのですが……」
「五位堂警部!」
部下の刑事が駆けてきた。
「店内を捜索していたところ、厨房から血のついた包丁を発見しました!」
刑事が包丁を五位堂に見せる。
「となると、犯人は店内の人間。それも店員の可能性が濃厚だな。包丁は鑑識に回しといて」
五位堂は厨房へと入っていった。
俺は五位堂の後を追った。