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1.霊能探偵誕生

 俺の名は唐沢からさわ たける。昨夜、殺人事件の被害にあって死に、霊魂だけの存在となっている。

 周囲の人たちには俺の姿が見えないらしく、声をかけても聞こえていないようだった。

 そこで思い出し、俺は今、坂上さかがみ 聡美さとみという霊能力を持った女子高生の家にいる。

 目の前の端正な顔立ちをした長髪の少女が聡美だ。

 俺は生前、聡美の彼氏でもあった。

「え!? 健くん、殺されちゃったの!? 犯人は!?」

「捕まったみたいだよ」

「そうなんだ」

 すっくと立ち上がる聡美。

「散歩でもしよっか」

「うん」

 俺と聡美は外に出てとぼとぼと歩き出した。

「健くん、何で殺されたの?」

「分かんない」

ドスッ!──背後で何かが落ちる音が聞こえた。

 振り返ってみると、そこには男性の遺体が横たわっていた。

「聡美、警察!」

 聡美は携帯で百十番ひゃくとおばんをした。

 俺は上を見上げた。

 恐らくマンションの屋上から落ちてきたのだろう。

「聡美はここにいて。俺は上を見て来る」

 俺は空へと舞い上がり、マンションの屋上をチェックした。しかし、怪しいものは見付からなかった。

 自殺だろうか……。

 やがて警察が到着し、捜査が始まった。

 捜査員が聡美に話を聞く。

「通報したのは君?」

「はい。坂上 聡美と言います」

「坂上さん。では、何があったのか詳しく説明してもらえますか?」

「一人で散歩してて、後ろで物音がしたから、振り返ったら男の人が倒れてて……」

「分かりました。では、我々は上を見に行ってきます」

 捜査員はマンションの中へ入っていった。

 俺は屋上で捜査の様子を見た。

「男はここから落ちたのか? 鑑識、指紋の採取をしてくれ」

 鑑識が指紋をる。

「警部、聞き込みの結果、男はこのマンションの住人だということが判明しました。部屋は五〇三です。五〇三には男の妻がいます」

「分かった」

 捜査員は五〇三号室へ向かう。俺もその後を追った。

 部屋では死んだ男の霊が女に喚いていた。

「てめえ、よくも殺してくれたな!」

 だが、女には男の声が聞こえていない。

 俺はマンションの外へ出て聡美の前に降り立った。

「聡美、あの刑事さんたちに犯人を教えてあげたいんだけど……」

「じゃあ私の体貸してあげる。重なれば入れるはずよ」

 俺は聡美の体に憑依し、五〇三号室に向かった。

「なるほど。では、ご主人は自分から飛び降りたんですね?」

「ちげえよ! こいつがベランダからタバコを吸ってた俺を突き落としたんだ!」

 だが、男の喚き声は女にも捜査員にも聞こえていなかった。

「では、この事件は自殺で処──」

「刑事さん、これは殺人ですよ」

「え?」

 振り返る捜査員たち。

「被害者はベランダでタバコを吸っているときに奥さんに突き落とされたんです。犯人は奥さん、貴方です!」

 俺は被害者の妻を指差した。その途端、妻の顔色が変わる。

 捜査員たちは妻の方に向き直った。

「奥さん、どういうことですかな?」

「違う……! 違う! 私は殺してない!」

 俺はポケットからタバコの吸い殻を取り出した。

「これ、下に落ちてました。もし俺……いや、私の推理通りなら、これに被害者の唾液が付着しているはずです」

 俺は捜査員に吸い殻を渡した。

「鑑識に回してくれ」

 捜査員が別の捜査員に吸い殻を渡した。

「奥さん、後は署でお伺いします」

 捜査員は妻を警察署まで連行していった。

 俺は聡美の体から出た。

「よう、兄ちゃん」

 殺された男が俺に声をかけた。

「あんたのおかげで助かったぜ。ありがとよ」

 男はそう言うと、天に昇っていった。


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