プロローグ・・・のつもりだ。
真っ暗だった。何にも見えない、ただ真っ暗な世界。
何故、俺はここにいるんだろう。それさえも思いだせない。
・・・あぁ、もしかすると俺は死んでしまったのだろうか?それはそれで、運がないと思う。
仕方がない。どうせ死んだんだったら、このまま眠ってしまお・・・
「ちょっと、ちょっと。それでいいの、君?」
誰だ。微睡につこうとした俺を何かの「声」が邪魔をした。
いいんだ、ほっといてくれ。俺は死んだんだ。
「あー!だめだめ!まだ死んでないってば、君!」
死んでない・・・?じゃぁ、俺はどうしてこんなところに・・?
「よしよし、思い留まったね。ちゃんと説明してあげるよ。君が信じるかどうかはわかんないけど。
ところでさ。いつまで、目。閉じてるの?」
何?俺は目を閉じてただけだったのか?「声」の指摘に思わず間抜けな声を出してしまった。なんてこったい。
そんなバカな反省をしつつ、俺はゆっくり目を開けた。
目を開けて広がった光景は、不思議な場所だった。
薄暗く巨大な水槽の中で様々な魚達が泳ぎ回り、エイやらクジラやらと見る者を圧倒させるような生物たち。それだけだと水族館と思うだろう。
だが、魚たちだけではなかった。俺の周りにはいくつもの真っ白な円卓のテーブルが並んでおり、一部には何と高級レストランでしかでないようなフルコースができたてで置かれている。す、少しくらいならいいよな・・・・・じゃなかった。俺はそんなレストラン(?)と思わしき場所にいた。
新たに認識を広げると、ここは不思議な水族館にある不思議なレストランなのだろう。
「不思議って何さ、不思議って。おもしろいね、君。」
振り返ると、そこには一人の少女が後ろのテーブルの上に行儀悪く座っていた。ちゃんと椅子に座れよ。
「だって、ここ私の空間だよ?なにしたって私の勝手だよ、お兄さん。」
心読んでいるのか、こいつは。
その少女は、金なのか白なのかよくわからない色のロングヘアをしており、文字通りの真っ黒な服装をしていた。しかも、まだ年端もいってなさそうな印象をもっている。
というか、だ。この少女の「声」に俺は聞き覚えがある。まさかとは思うが・・
「察しのいいお兄さんだね。そのまさかだよ。その声、わ・た・し」
そんな少女の嬉しそうな声に、俺はただ嫌な予感がするとしか思えなかった・・・
だが。
この少女との出会いが俺の運命を大きく変える出来事になっていたのかもしれない。
前置きしておこう。
これは、新たな「始まり」を迎えるために「終わり」かけた俺の
「物語」だ。