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はじめての戦闘

「せ……!」

「せ…ぱ…!」


 ん……、なんか聞こえる…。


「せんぱい!」


 擦れて聞こえていた音が体の揺れ共にはっきりと聞こえた。俺は目を開けると、そこには梅木進也が俺をゆすりながら呼んでいた。その梅木の背後には大きな樹木が沢山見えた。空を覆い尽くす葉の所為で空はほとんど見えない。


 とにかく梅木に聞いてみるか。俺は地に倒れた状態で揺すられていたので体を起こしながら話しかける。


「なぁ梅木ここ―――――――」


「先輩!やっと起きてくれました…」


 梅木にここはどこだ?、と聞いてみようとしたら梅木に遮られた。


「梅木、ここどこだ?」


「俺もわからないです。ただわかっている事は、俺と先輩は竹刀袋が突然光ったあと、気がついたらここにいたってことくらいです。先輩が起きてくれなかったらどうしようかと…、俺としては早くここを出たほうがいいと思います」


 ほむほむ…、そういえば確かにここに来る前の最後の記憶は梅木の言うとおりだな…。


「んじゃ、とにかくこの森?を出るぞ。話は歩きながらでもいいだろう」


 現在梅木の表情は隠しているみたいだけど暗い、怖いって感じだ。俺も少し怖いが、先輩が後輩にみっともないところ見せられないだろ?俺がどうにか梅木を引っ張って行ってやらないとな。


 さて、現在地はどこらへんだろうな……、富士の樹海?いや違うだろうな…。



「なぁ、梅木。自転車とかはなかったのか?」


 俺達は自転車に乗っていた時に謎の現象が起きてここに飛ばされたって感じだろう。ならば自転車なども一緒にあってもおかしくはないはず。


「はい、あったのは先輩の隣に置いてある俺たちの竹刀袋だけです」


 竹刀袋だけ…か、ん…、確かあの突然光ったのって竹刀袋から竹刀が飛び出してそれが光りだしたんだよね…。ということは―――――――


「梅木、俺達戻れるかもしれないぞ?思い出してみろ、俺たちはあの時竹刀袋から突然飛び出してきた竹刀が光りだしてここに来たんだ。ならその竹刀がこの竹刀袋のなかにあれば戻れるかもしれないぞ」


 俺は梅木にそういうと自分の竹刀袋をつかみ中を確認する。それを見た梅木も同様に竹刀袋をつかみ中を確認する。


 中には、竹刀が二本…、そして刀が一振り入っていた。二本の竹刀は大会の時につかった竹刀だった。しかし大会でもらった竹刀がなくなっていた。もしかしてあの時光った竹刀は貰った竹刀ということなのか…?

 それにこの刀はなに?俺はこんな刀持ってもいないし持っていたとしてもこれ犯罪じゃん…。

 

 竹刀袋に入っていた刀は刃は見てないが、柄から鞘全部が真っ白であり、とてもきれいだった。なんというかすごい力を持っているだろう、そんなオーラ?雰囲気、を放っている。


 そういえば梅木のほうはどうだろう。


「そっちはどうだった?」


「えっとこっちには大会に使った竹刀が三本と、見たこともない刀が一振り入ってました。刀は全部真っ黒でなんというか…すごい刀だと思いました」


 梅木はそう言いながらその刀を見せる。確かに真っ黒だな…、俺のとは正反対の色だしなんかありそうだな。


 まぁとにかく森から出ないと―――――――


「せ、先輩……。先輩の後ろになにかいます!」


 そんな焦んなくてもウサギとかそんなんでしょう…。


 俺はそう思いながら確認するために振り替えると同時に木の後ろから緑のなにかが飛び出してきた。


「ギギッ、ギィー」


 何これ……、こんな生き物見たこともないし聞いたこともない。


 それは緑色をした小人みたいな生き物だった。髪は生えておらず緑色の頭皮が見え、鼻は潰れており、指が三本しか生えていなかった。


 緑の小人は二匹おり、突然雄たけびを上げた。


「ギギギギッギィー!!!」


 雄たけびを上げた緑色の小人は、一気に襲いかかっては来ず、ジワリジワリと距離を詰めてくる。


 梅木は緑色の小人の容姿の所為か、さっきの雄たけびの所為か、ガクガク震えていて緑の小人が近づいてきていることに気が付いていない。


 まずい…、このままだと殺される。


 梅木は何もできないだろう、ならば俺がやるしかない。


 俺は竹刀袋に入っている純白の刀を取り出し鞘から抜いて構える。


 それを見ていた緑の小人は梅木より俺を優先したのか俺のほうへ向き、一匹が襲いかかってきた。


 怖い、目を瞑ってしまいたい。けれど瞑ったらやられる。


 目を開けろ、目を閉じるな。俺はそう何度も言い聞かせ、襲いかかってくる緑の小人が振り下ろす爪を緑の小人の後ろに回り込むようによけ、後ろから首を切り落とす。


 血が噴き出す音と共に緑の小人首がゆっくりとずれ落ちる。


 残ったもう一匹は仲間が殺されたことに気づき、怒りだす。


 だけど、今のでわかった。こいつら緑色の小人は弱い。冷静に対処すれば負けない。


 俺は殺した罪悪感はないとは言い切れないが、やらなければやられていたと言い聞かせ、罪悪感を消し去る。


 じわりじわりと俺は距離を詰めていき、あと数歩で間合いに入るというとき、緑色の小人は動いた。


 さっきの緑色の小人と同じように飛びかかってきて爪で切り裂こうとしてくる。それを剣道でいう抜き胴の容量で爪を刀で防ぎ、そのまま緑色の小人の胴を切り裂く。


 緑色の小人は切り裂かれるどころか、胴体を真っ二つに両断され、血を噴き出しながら地に伏せる。


 俺は返り血を頭から浴びてしまい、臭いが酷い…。


「……うっ…………」


 吐いた。胃の中が空になっても吐きつづけた。戦いのときは他にやらないといけないことがあったから耐えられたが、今はもう耐えれなかった。


 



「せ、先輩!大丈夫ですか!?」


 結局俺は梅木が元に戻って声をかけられるまで吐きつづけた。


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