屑以下の話 ~ あのお茶会から二年 ~
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毒だし大会です。
「うー。私、思わずあの役者を殴りそうになったわ」
「シア!殴っちゃだめよ、自分も手を出したら、同じ穴の貉よ!」
「でもシアの気持ちもわかるわ。本当に、気分が悪くて吐きそうだったもの」
「大体、レオンがこんな観劇のチケットくれるからいけないのよ!」
「そうね、新婚のシアと、これから婚姻を控える私とエレノアに、なぜこの劇を見せたかったかレオンハルト騎士団長様に是非伺いたいところだわ」
「じゃあこのまま家に泊りに来ない?」
「「いくいく」」
私達は、学院を卒業後に婚姻の準備を進め、シアは半年前に結婚して新婚ほやほや、私とエレノアは、あと数ヵ月で迎える婚姻式の準備に追われてる。
レオンハルト様が、騎士団員に、何枚もチケットを貰ったからと、最近はやりの恋愛劇とやらを見に行ったのだが…………。
✿ ✿ ✿
私達は、コニード伯爵のタウンハウスに上がり込み、もやもやした気持ちを晴らすべく、パジャマパーティーを始めた。
「ごめんね、ふたりとも家のレオンが変なチケット貰うから、気分を悪くしちゃったわね」
「まあ、レオンハルト団長様は、劇の内容を知らなかったのでしょ」
「知ってたら重罪よ、でも巷では人気なんでしょ、なかなかチケットが手に入らないとか…………。」
「チケット購入してまで、見たいなんて気が知れないわ」
「ヒロインの周りは、全員が屑だったものね」
「ほんと、神々たちの織り成すファンタジーとか書いてあったけど」
「母を殺され、義理の母と妹にイジメられ、実の父にまで蔑まされて」
「果てには、婚約者は義理の妹を、本当に愛しているのは君だけだとか言っちゃって」
「なのに婚約を解消しないまま、結婚しようとして!!」
「さらには、ヒロインが神々から嫌われ者の、軍神と結婚しようとするとヒロインに執着してくる!」
「気持ち悪いわね」
「神じゃなくて悪魔ね」
「大体、精神的にも肉体的にもヒロインをボコボコにしすぎよ、ヒロインの前で散々イチャイチャして、義理の妹の嘘にホイホイ騙されたからって、婚約者が普通、鞭で打付けたり、縛り付けたり、焼き鉄でやけどさせたりする?」
「思い出しただけで気分が悪いわ」
「ヒロインが最終的に軍神に愛されたからって、ちっともすっきりしないわ」
私達三人は、ホットワインをグイっと飲み干した。
学院を卒業式と同時に、貴族たちは成人貴族とみなされ、お酒も解禁される。
ノック音と共に、コニード伯爵家の侍女長である、エマがワゴンを引いて入ってきた。
「皆様、まだお酒の飲み方もわからないのに、その様な飲み方はいけませんよ、果実水をお持ちしました」
エマは素早い動きで、私達のワイングラスを下げる。
「あとは、チーズやナッツを召し上がってください、油分で酔いが回りにくくなりますから」
そう言いながら、私達の前にお皿を置いたエマは、他の侍女にも指示を出し、私達の肩にナイトコートをかける。
「あら、エマなんでナイトコート?」
シアが、少しポンヤリした顔で尋ねる。
「レオンハルト様達がお戻りです」
「ん?達?」
「はい。シア様、そしてお戻りになる前に、私からも一言いいでしょうか?」
「はい!エマ侍女長の発言を許します」
シアがニコニコしながら答えると、エマの眉間に皺が寄る。
「先ほどシア様とお嬢様達がお話しされていた劇!私も知ってます。劇場では既にパターンを変えて3回演じられているんですが、まーどれも胸糞悪い」
私達は、いつも穏やかなエマの口から、胸糞悪い!なんて言葉が飛び出して、飲んでいた果実水を吹き出しそうになり、急いで両手で口を塞いだ。
「ほんとにどうしてあんなに全員がバカなんですかね、それも暴力的!どうやって懲らしめるか散々このエマ、考えましたが…………バカはほっておくことにしました」
エマがフン!と鼻を鳴らす。
エマ…………全部見たのね。
「それにですね、あの劇は貴族が見る劇場だけでなく、王都内では平民も青空劇場のようなところで、簡単に見れるものがあるのです、いろんなストーリーがありますが、どれも似たような家族全員馬鹿で、ヒロインを罵倒するんですよ~。一度言った言葉は取り消せませんからね!」
エマの演説に私達はうんうんと頷く。
「そうだ!男女の内輪もめに子供や家族を巻き込むなんて最低だ!」
シアが拳を高く突き上げる。
「一番問題なのは、青空劇場は、子供たちの眼にも触れることです!反面教師になればいいですけれど…………..あー。あれを子供たちが見るかと思っただけで、エマは寒気がします」
エレノアが立ち上がる。
「ほんとね、今日の劇の内容だって、神のことをあんなふうに馬鹿にされて、神殿はなんとも思いませんの?」
「そうね私、もう神殿に寄付するのやめにするわ」
コンコン。
「やあ、皆さんお揃いで」
開いたままのドアには、レオンハルト団長様。
「もーレオンがくれたチケットで、みんなで観劇に行って来たけど、もやもやマックスよ!どうしてあんな内容のもの見せたの!」
「そうですわ、弱きを助け、悪事を成敗するならスッキリしますが、あれはやりすぎの上に、どんな自業自得も受けたダメージを払拭できません」
「私達に、婚姻を取りやめさせたいのですか?」
「やーそれは困るよ、アニー。どんな屑を観劇で見て来たか知らないけど、俺はそんな奴らとは違うよ」
レオンハルト団長の後ろからセオ様が出来て来た。
隣を見ると、エレノアは既に、シリウス殿下のマントに包まれている。
「エレノア。お酒の匂いがするよ、僕のいないところで、お酒を飲んだらダメでしょ、神殿のことは僕が何とかするし、もやもやも僕が癒してあげるから、今日は帰ろう」
「シリウス様…………。」
「そんな、ピンク色のほっぺをして、潤んだ目で僕を見て、今日は王宮に泊る?」
「シリウス殿下!ちゃんとローゼン侯爵に送り届けてくださいよ」
レオンハルト団長が釘を刺す。
「はいはい、わかってるって、じゃあ。一足お先に失礼するよ」
エレノアを見ていた私も、セオ様のマントに包まれる。
「さあ。アニーも帰ろう」
私は、さらりとセオ様に抱き上げられ、お家に連行された。
去り際にシアを振り返ると、既にレオンハルト団長様のお膝の上で眠っている。
かくして私達三人のもやもやは、婚約者と旦那様に癒された。
どうかエマのイライラともやもやが晴れますように。
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