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街中を歩いた!

 時は流れ、そろそろ喋るのも楽になり始めた五歳の頃。

 この歳の子は何だか元気いっぱいな印象がある。それは私も同じで。

 なんだか体がうずうずしててたまらない。

 外に出たい!

 でも一人で出るのはやっぱり無理かな。お母さん心配するし。

 でもお母さんを連れて一緒に出るのも一日二日ならいいけど、毎日も外に出るのは流石に迷惑過ぎると思う。

 お父さんの仕事場に行けば友達はいっぱい集まるけど、あっちは何だかお母さんがめっちゃ嫌うから駄目だ。お母さんが一緒に行くのはこっちも同じだし。

 今更なんだけど、過保護なんだねぇうちのお母さんは。

 愛されてるねぇ私。

「!」

 愛されてるのなら、少しはわがままを言ってもいいのでは?

 愛されてるから、一日くらいは私が飽きるまで街中で遊んでくれるんじゃないかな。

 お母さんならそうに違いない。

 お父さんはもちろんそうだし。

 じゃあ早速おねだりしに行っちゃお。

「かぁさん?」

 流石にこの歳になるとパパママって呼び方は卒業した。まだそう呼びたかったけど、もう駄目だって言われちゃった。

「ん…どうしたの?アイラ」

 お母さんの膝から目を開けて、お母さんと目を合わせた。変わらず優しい顔。

「そと、でたい」

「またぁ…?」

「みんなでいこ?かいもの」

「買い物ねぇ……みんなって、お父さんも一緒に行きたいの?」

「うんっ」

 これはただ頼むだけじゃ駄目みたいな。お母さん、意外と引きこもりなんだよな。

 ここはもうちょっと激しく責めるべきだ。

「だめ?」

 私なりの、一番純粋な顔で、首を傾げながらどうして駄目なのか理解が出来ないって感じでお母さんを見上げる。

「ん……」

 最近はあざとくなっちゃったの私。

 これも成長したって言えるのだろう。

「いいよ。休みの日にみんなでお出かけしようね。何かやりたい事とかある?」

「ある!」

 出来た。後は楽しむだけ。

 楽しみにやりたい事を語ったり、食べたり、寝たりしたらいつの間にか約束の日。家族みんなでお出かけする日になった。

「ねね、あれ!」

 やっぱり外は楽しい事だらけだ。ただただ眺めるだけでも、様々な人がいて見て飽きない。

 でっかい帽子をかぶった人や、鎧を纏めた人や、物騒な武器を持ち歩く人や、お洒落な服装で時計を見たり周りを見たりする人や。

「おぅ、いい物見てるなアイラ。あれは美味しいよねー」

「たべたい!」

「うんうん。お父さんが買ってあげる」

「わぁーい」

 普段のお母さんなら絶対止めたはずだけど、今は微笑ましく私達を見ていた。今日は好きなだけ食べてもいいみたい。

 じゃあ、遠慮せずがんがん食べちゃお。

「うまー」

「あめー」

「しょっぺー」

「ひまー」

「からいっ!」

「ひんやり…」

 などなど。

 たくさん食べた。もうお腹いっぱいで歩けないくらい、めちゃくちゃ食った。

 美味しかった。

「ふぁ…」

「おぉ、あれはどうだ?お父さん、あれ結構好きだけど」

「なん?」

 なんって何だ。

「ナンとカレーを一緒に食べるとそれはそれは。お父さんは無限に食べれるよ?」

 見た事あるやつじゃん。幽霊やってた時に遠くから眺めてたのだ。

「たべたぁい」

 お腹いっぱいだけど、昔の事思い出したら食べたくなって来た。どんな味なのかな。食べる人はみんな美味しそうに食べてたのにな。

「さぁ、気をつけるのよ?熱いからな」

「食べやすく切ってあげる」

「はぁい」

 きっと美味しいだろうな。

「どうぞ」

 ぱくっ。

「もー、だらしないな…」

 うーむ。

「ふつー」

 何の味もしないなぁ。普通のパンじゃない?

「なっ……」

 これを美味しいって食べるの?

「これあげる」

「そ、そんなに…気に入らないの?アイラ」

「うん」

 私にはただお腹が満たされるだけで、美味しいとまでは感じられない。

 これはあれか。歳をとると味付けが薄いのが美味しいって感じられる的な。だからお父さんはこれが気に入ったのだろう。

「確かに普通だね」

 それは違うか。お母さんもこう言ってるし。

「それがいいのに、何故わかってくれないの…?この程よい塩味とパンと匂いが食欲をそそるだろう?な?」

「ぜんぜん」

「私もあまり…」

「なっ……?」

 悲しそう。でも、私と合わないもんは仕方ないもん。無理矢理美味しいって言ったらもっと買ってきそうだし。

 ここは心を鬼にした。

「ねーね、かぁさん」

「どうしたの?」

「あれ!」

「ふふ、いいよー」

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