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ベッドから退け!

「うぎゃっ」

 今日も相変わらずあーちゃんによってベッドから落とされる事で一日が始まった。

「あぅぅ」

 もうこんな日々が始まって数え切れないほど経ったので慣れたものだが、今でも転げ落ちたら痛い。

「もうがまんできない!今日は言ってやる!」

 言葉が通じないからこんな事が起きるのだ。

 だから、お母さんから学んだ魔法で、あーちゃんに心を投げてみた。ぽいっ。

「………」

 何も変わず。あーちゃんはむしろ布団の中に体を潜めるばかりだった。

 伝わってないのかな。もっかいやってみようかな。

 ぽいっ。

 相変わらず。

「なぁんで?」

 効かないのかな?でもお母さんにはどんぴしゃだったし……動物には効かない?

 お母さんは動物なんじゃないの?

 んー?人ってどうぶつ?

「あれー?」

 なんか、よくわかんなくなってきた。

 とにかく、ともかく。

 もっともっと心を込めてあーちゃんに訴える。ベッドから退け!

 すると、嫌だって意が返ってきた。こいつ、知らなくてやらなかったんじゃなくて、わかってて私を落としたのだなぁ?

 またも伝わる肯定の意。

「むぅぅ」

 無視されてた。飼い主なのに、飼い犬…じゃなく、飼い狼に馬鹿にされた!

 こうなったら実力行使だっ。

「大きいからってなんでも許される訳じゃないし!ベッドは私のだし!」

 ベッドを独り占めするあーちゃんの上に登って、寝転ぶ。そのままころころ。行ったり来たり。

 右に行ったり左に行ったりと忙しなく転んだ。

「厄介でしょー?ベッドをよこせばやめてあげなくもないけどー?ねぇー無視しないで」

 完全無視。あーちゃんはむしろちょっと気持ちよさそうにしていた。伝わるもん。

 私のいらいらは伝えられないのか?

 もしかして、私がいらいらすればするほど気持ちよくなるのか?!意地悪が成功して嬉しくなるのかも。

「あーちゃんの好きにはさせないからっ」

 心を鬼にして、なるべく平然を装う。いらいらも、もやもやも全て消して、あーちゃんの温もりや、毛並みや、部屋に漂う少し暑苦しい空気だけに集中する。

 あちぃー。

「ひぃー……」

 朝に冷たい風はとても気持ちいい。眠気が去っていく感じ。ここで布団に潜ったらもっといいのに。

「ん…?」

 あーちゃんが布団に入れと言わんばかりに、少しだけベッドを譲ってくれた。よくわかんないけど、その隙間にそっと入る。

 あったかいー。もふもふー。

 きもちぃー…

 気づけばあーちゃんが足で私を抱えていた。抱えた?包んだ?とにかく、抱えられた。

 いつもの逆になったなぁ。

「はぁぁぅ」

 眠くなってきた。

「……すやー」

 ついつい眠っちゃいそうなくらい、心地よい。

「んにゃあっ!」

 でもすぐに起こされる。

 あーちゃんが暑いって訴えながら私のほっぺたをぺしぺしと叩く。人を叩いて起こすなんて、本当にしつけが足りない狼さんだな。

「あーちゃんがやればいいじゃんっ。ふんっ」

 私をただ涼しい風を作る抱き枕くらいに思ってるに違いない。全くもって無礼だ。

「今更謝っても遅いからねっ!」

 不機嫌になってようやく、謝るようにあーちゃんが私に顔を擦り付けて来る。ごめんなさいって気持ちも伝わってはくる。

 でも許さないもんっ。私、飼い主だから。

「ふーんだ。あーちゃんなんか知らない」

 叩き起されて結局、眠気は消えて、空腹が襲いかかり始めていた。お腹すいたぁ。

「ねぇあーちゃん」

 朝ご飯何かなー。

「おなかすいた」

 あーちゃんも同意するように、くわーんって鳴いた。

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