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相談!

「ねぇー」

 いつものように、朝起きたらあーちゃんがベッドを独り占めしてて、下手したら落ちる寸前だった。体の上半分がベッドから外れてる。

「どいてよぉ。私のベッドだから、こらぁ」

 何度かあーちゃんを押してみても身動きはなく、よくわからない鳴き声だけが聞こえてくる。何を言ってるのか分かれば、会話すら成立すればこういう状況も消えるのではないか。

 でもあーちゃんは人の言葉を発せない。

「むむ」

 悩ましい事だ。お母さんに相談してみよう。

 というわけで。

 床にするりと溶けるように落ちて、ぱっと起き上がった。そのままてくてく、部屋を出る。

「あちぃー」

 早朝の空気は暖かく湿っていて、夏だった。

「ひぃー…」

 涼しい風を廊下に吹かせるとやっぱり涼しい。こういうのを思いついた私はやっぱり只者ではない。

 とにかく、ともかく。

 お母さんの部屋まで来た。お父さんも多分一緒。

 なんで私は一人なのに二人は一緒なのか、今更ながらちょっと不満が芽生えた。でもみんなで寝るとあーちゃんが一緒に寝れないから、今のままでいいか。

「こんこん」

 ドアを叩くような音を口から出しながら、そっと部屋のドアを開ける。中には寒いくらいの冷気が漂っていた。凍っちゃいそうな、冬の空気。

 なんでぇ?

「こんこーん」

 もう一度ノックの音を口に出してみる。相変わらず返事はなく、寒気だけが漂うだけだった。

 よくわかんないけど、まいっか。

「おかあさーん」

 てくてく中に入るとすぐお母さんの姿が見えた。何かに没頭してるような後ろ姿。

 そっと後ろから何を見てるのか覗いてみると、本だった。難しそうな本。冷気がなんちゃらと書かれてる。寒くなる魔法なのかな?

「おぉ」

 お母さんがまじまじと本を眺めていたら、本が凍りついた。睨んだだけで凍らせるなんて、すごーい。

 でもさすがに寒いな。赤ちゃんにこんな寒気は過酷なのよ。私まだ赤ちゃんだから。

 少しだけぶるぶる震える身体を温めるように、そっと服の中に暖かい風を吹かす。

「うひゃー」

 顔は冷たいのに体はあったかいー。冬に枕の中に潜って顔だけ出してる感じ。気持ちいい。

「…え、え?これって…アイラ?」

「こんばんわー」

 温かい風がそろそろと服を揺らして、本にも届いたのか、凍りついていた本が溶け落ちる。それにお母さんがびっくりして、ちょっと面白かった。

「私寒いのー。だからあったかくした!」

「寒いからって簡単に出来る訳じゃないよこういうのって……もう、あなたって子は」

 褒められたみたいで気持ちよくなった。

「むふふ」

「数学は駄目でも魔法は上手なのね…」

「むっ」

 急に痛いところをつかれた。

「まぁ、とにかく。どうしたの?アイラ。お母さんと遊びたくなった?」

「うぅん」

 遊ばない意を示すとすぐに顔に出るほど落ち込んでしまうお母さんだった。お母さんって意外とままごととか好きなんだよなー。でも本気すぎてちょっと窮屈。

 お母さんと遊ぶのは半年に一回くらいで十分かな。

 とにかく、本題に入ろっか。

「相談があるの」

「相談?」

「私、お話しがしたい。あーちゃんがね?いっつもベッドを独り占めするの!だから退いてって言っても聞いてくれないし。起きたらベッドから押し出されるの!いらいらしてきたぁ!」

「うんうん」

「言葉がわからないから退いてって言葉がわからないんじゃないかな?って思ったの!だからお話しがしたい!あーちゃんに言葉をわからせたいの。でもどうすればいいのかなー。なやみちゅうー」

「ふふっ……」

「むぅ。こっちは真剣なの!」

 なんか馬鹿にされたみたいでいらっとした。

 お母さんはそんな私を慰めるようにほっぺたを包んで、むにむにと揉みまくる。

「むぅみやぁっ」

「あはは」

 楽しそうな顔して、娘のほっぺをいじりまくる。

「可愛い子ねぇ本当」

 少しして満足したのか、お母さんは優しく微笑みながら私を抱え上げた。

「つまりアイラは、あーちゃんと話し合いがやりたいんでしょう?」

「そうなのー」

 急に話題が戻っちゃった。

「世の中の魔法にはね?考えをそのまま伝えるのもあるのよ。心の中で『いらいらするぅー!』って思うのがそのまま伝わる」

「おしえて!」

「でもね?その魔法は感情だけ伝わっちゃうの。だから会話には成り立たないと思うな」

 感情だけ。それだけでも退けって意味は伝わるんじゃないだろうか。

「!」

 急に、何かとても愛おしい気持ちが溢れて来た。よくわからないけど、すっごく抱き締めたい気持ちが胸の奥底から溢れてくる。

「こういうのだよ。アイラが欲しいのとは少し違うんじゃないかな?」

「お母さんっ」

 お母さんの言葉もよく頭に入ってこられず、ぎゅーって抱き締めるばかりだった。抱えられたまま抱き返す、ちょっと不思議な体勢になる。

「んーっ!」

 すりすりと顔も擦りまくる。

「すきなのー」

 全力で愛を送りたい気持ちがいっぱいでたまらない。私が私じゃない感じ。これがお母さんが言った魔法なのかな。

「お母さんも好きだよー」

 すごく直線的で、素直な魔法。よく曲げるとなんかいけそうな気がしてきた。

「お母さんっ、言うね?」

「うんうん。言ってみ?」

 心に声を込めて、お母さんになげてまた。

 お腹空いたー。

「………ぷっ」

 笑われた!馬鹿にされた!

「いやいや、馬鹿にしてないよ?笑ったけど、なんか懐かしいなって思って……」

「懐かしい?」

「なんでもない。お腹空いたんでしょう?ご飯作ってあげる。待っててね」

 どういうことだ。懐かしいって。

 幽霊の時の事かなぁ?そういえばあの時もこんな感じだったような……

「え?!アイラ、覚えてたの??!」

「?」

「あの頃の事、幽霊の事、私と話したのも?」

「おぼえてるし」

「あなた……」

 なんか、色々な気持ちが伝わってくる。困惑、期待、驚き、などなど。

「ねぇお母さんっ」

 いつまでこれ続くの?

 お母さんの心の中ってすんごくぐちゃぐちゃで、ちょっと頭がぼーっとするの。

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