表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/26

涼しぃー

「ただいまー」

 ミリウちゃんをお母さんに任せて、部屋に戻るとすぐにあーちゃんがばたばた近づいて来た。全身で喜びを表せるところがなんだか犬みたい。

 狼も犬なのかなー?

「よしよしよしっ、元気にしてたー?私は元気だったのー」

 舐めたりはしないから犬ではないか。

「それより私ね?新しいのを学んだのー。あーちゃん、暑くない?暑いでしょー?」

 すりすりと擦りまくるあーちゃんを引き剥がそうとするけど、離れようとしないあーちゃんだった。

「どけいっ」

 無理矢理突き放すとようやく離れてくれた。愛され過ぎるのも考えるべきなんだよな。

「よーく見てね?氷作るよ?」

 とにかく、ともかく。

 あーちゃんの前に手を開いて、その上に氷を一つ作り出した。普通の氷。触れたら溶ける氷。

 冷たい氷。

「どうどう?これで暑さぶっ飛ばすのよー」

 私の手のひらよりも小さいその氷を見て、あーちゃんが少しがっかりしたように見える。本番はこれからなんだけどね。

「見ててね、大事なのは氷じゃないから」

 その氷をちょっとだけ大きくして、私の口に放り込んだ。冷たさが口の中に広がる。それを見たあーちゃんがとても物欲しそうな目で私を眺める。

「はい、あーん」

 私のよりもっと大きめの氷をあーちゃんの口の中に入れた。あーちゃんも口中の氷の冷たさに顔が綻ぶ。

 これだけでも十分な気がするが、毎度氷を作るのはさぞめんどくさい事だろう。それに、氷が溶けると水も出るし。そこで思ったのだ。

 布団が涼しければいいのでないか。

「うひゃっ」

 私とあーちゃんで温められた布団を冷たくして、その中に潜ってみる。

「冷たーい」

 体全体に冷気が伝わって来て、秋に外に出た感じだ。涼しいけど、風邪ひいちゃうかも。

「んー」

 じゃあどうすればいいのだろう。

 むむ。

「わっ」

 そこでふと、風が吹いた。

 頬を撫で、髪を梳く夏風。

 あの時ミリウちゃんと出会う前のように、涼しい風が吹けばいいのでないか。

「わひゃっ」

 涼しい風をどんどん部屋の中に作っては流す。確かに涼しいし、寒くない。

 あーちゃんもこれに気に入ったのか、私から離れてぐーたらと倒れ込んだ。

 私も一緒にベッドに倒れる。

「涼しぃー」

 布団がもっと暖かったら、陽だまりの上で昼寝でもするような感じになるんじゃないか。

「きもちー」

 ぽかぽか、ひやひや。

 眠くなるのう。

 寝るか。

「すやー」

 眠って、次に眠りから起きた時は汗だくにもなれず、とても爽快な夕空が広がっていた。

「はっ」

 日の高さからすると、夕食時間より少し過ぎていたようだった。隣にあーちゃんもいない。

 私を覗いてご飯を食べてるのかも知れない。どこからか美味しそうな匂いが漂っていた。

「あら、こんばんは」

 慌てて部屋を出るとミリウちゃんが立っていた。見た目はさっきと同じなのに、どこかぼろぼろになった感じがする。

「こんにちわ……」

「ご飯食べた?」

「ご飯…ええ、あなたを呼びにきましたよ」

 幸い、まだご飯の時ではなかったみたいだ。よかった。それとお腹空いた。

「そうなんだ。あーちゃんは?」

「あーちゃん…?」

 知らないのかな。

「うちの飼い犬みたいな子がいるのー」

「犬……」

 どこか期待してる顔だ。犬好きなのかな。

「わ、あーちゃん」

「…!え、い、ぬ…?」

「ちょっとぉ、重いの」

 でもうちのあーちゃんは犬じゃないのに。こうして顔見る度に擦りまくるのは犬とそっくりだけど。

「狼だよー?」

「お、おおかみっ」

「気に障ることやったら噛まれるかも?」

「か、かまれ…る」

 怯えてるねぇ。可愛いー。

「よーしあーちゃん、今日もいっぱい食べるぞー」

 ちょっと暑くなったので涼しい風を吹かしながら、おどおどするミリウちゃんを連れてあーちゃんと一緒にリビングに行った。

「お腹すいたー」

「まだよ」

「はーい」

 リビングで三人並んでちょこんと座った。ミリウちゃんは座るって言うより、腰に力が抜けた感じで私の隣に崩れ落ちた。

 今日の夕食なんだろうなー。美味しそうな匂い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ