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顔合わせしよ!

「あーちゃ…」

 家に帰って早々、自分の部屋に入ろうとしたけど止めた。だって、泥足だもの。

「ぃひゃっ」

 そのままトイレに入って、魔法で足を洗った。冷ための水で洗ったからすーすーしてて気持ちいい。あーちゃんもこれされると喜ぶだろうな。

 なんだかわくわくする気持ちのまま部屋に入ろうとしたその時。

「ちょっ、とぉ……あなた、はやすぎるのですよ」

「え、ミリウちゃんだ」

「だからぁっ、ミリウ、さんって」

 絶え絶えの息をなんとか整いながら、ミリウちゃんが家の中に入って来た。

「どうしたの?迷子にでもなったのー?」

「そんなわけないでしょうよ」

 じゃあ尾行されたのかっ。恐ろしい子。

 今時の子供は怖いのう。初めてみる人の後ろを追って家にまで紛れ込むなんて。私がミリウちゃんくらいの頃は友達の尾行くらいしかやってなかったし、それが普通だったのに。

 時代は変わるもんか。

「なんですかその顔」

「歳をとったなって」

「あなたが言いますか?」

 小っちゃいのがぺらぺら喋るのを見るとなんだか……お姉ちゃんになったみたい!

「だからなんですかその顔」

「嬉しいのう」

「なんで…?」

 私ももうそんな歳になったんだ。まぁ十一歳なら弟や妹一人や二人はあっておかしくないもんね。

「むふふ」

 こうしてる場合じゃない。早くお母さんと顔合わせしてくれなきゃ。

「おいで?」

「え、どこつれていくつもりですか?わっ、手、にぎらないでくださいっ」

「にぎにぎしよー」

 恥ずかしいのかなぁー?手握られたら顔が赤くなっちゃった。可愛いねぇー。

「お母さんのとこ行くよー」

「だからっ、なんで」

 ミリウちゃんと一緒に手を繋いでお母さんの部屋にやって来た。門の前でちょこんと、並んで立つ。

「ミリウちゃん、ちゃんと聞いて?お母さんは優しい人だけど、嘘つきには容赦がないの。いつも素直でいる必要はないけど、悪い事をした時は素直に話すのよ。わかった?」

「な、なにさせるのですかわたしは…」

「さぁ、行くよー?」

 緊張のあまり、または急変する状況のせいで、ミリウちゃんはとても固まっていた。

「だいじょーぶだよ。お姉ちゃんがいるからっ」

「あなたのせいでこんなじょうきょうになったんですけど……」

「相変わらず素直じゃないな」

「なにわかったようなくちぶりで―うわぁっ!?」

 ミリウちゃんも気が楽になったみたいだし、そろそろ入っちゃおうか。

「お母さんっ!」

 何か言っていたミリウちゃんを少しだけ強引に引きずって、お母さんの部屋に入っていった。中にはお母さんがテーブルを挟んで本を読む姿が見えた。

 それと、お父さんもいた。私が描いた絵をとても満足気に眺めているお父さん。なんか馬鹿みたいな顔になってるー。今日も仕事サボったのかな。

「お、ぉ、へっ、わぅ」

「大丈夫?」

 なんかミリウちゃんが変な声を出し始めた。食べ過ぎて疲れたあーちゃんみたい。

「具合悪くて連れて来たの?」

 お母さんは早々、変になったミリウちゃんに近付いてきて熱を測ったり、瞳を眺めたり、指が何個か数えさせたりと忙しない。

「健康上に問題はなさそうね…」

「はひっ」

 それが一通り終わって、お母さんもミリウちゃんもそろそろ落ち着いた頃。

「そんなんじゃないのー。今日は顔合わせの為に来たよー?」

 私は本題を持ち出した。

「顔合わせ?」

「なになにー?新しい友達かい?」

「ひぃぃっ」

 お父さんが近付いてくるとまた変になっちゃった。そんなミリウちゃんが面白いのか、お父さんが怖い顔でミリウちゃんを見つめる。

「ひゃぁぁあ」

 情けない声だった。

「この子、ミリウちゃんって言うのー。さっき出会った!」

 そんなミリウちゃんとお父さんを他所に、取り敢えずお母さんに顔合わせをさせた。ぷるぷる固まったまま震えるミリウちゃんをあれこれ動かしてお母さんと目を合わせる。

 なんか人形ごっこやってるみたい。

「さっき出会った子をお家まで連れて来たの?」

「うぅん、連れて来てないよー」

「……ふーん?じゃあ?」

 お母さんの顔がちょっとだけ不機嫌になった。ちょっと怒ったのかな。

「尾行されたよー」

「そうなんだ」

 もっともっと悪い顔になったお母さんだった。でも素直に言ったから許してくれるだろうね。

「尾行、かぁ」

 お父さんもちょっと険悪になった。

 二人とも怖い顔になるとなんか様になるんだよなー。魔王様は怖い職業なのかなぁ?

 お似合い。

「ち、ぢっ、ちが―」

「しかも土足なのー」

「そうね…」

 お母さんがもっともっともっと険悪な顔になっちゃった。靴は脱がせた方がよかったのかな。

 次からは気を付けよう。

「この子ね?気に入ったのー。小っちゃいのによくぺらぺら喋ってて可愛いの」

「そうなんだ」

 なんか、雰囲気は険悪になる一方だった。

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