お母さんの心配。
お母さん視点の回になります。
お昼過ぎのだらける時間に二人揃って散歩に出たアイラ達を追った。悪い人と出会うとどうするかと心配になったり、二人で美味しそうに買い食いする姿に微笑ましくなったり。
食べるのが好きなのは私とそっくりだった。人々に愛されて色々と貰うのも、なんだか昔の事を思い出してしまう。
同時に食べ歩きをやったり、帰りにはこっそり隠れて家に戻るところはやっぱり夫の子供だなと思った。
昔はあの人も、いや今もあの人はアイラみたいにこっそり抜け出して遊ぶ時があったんだから。
「帰って来たよ」
「お帰り。アイラは窓から戻って来た?」
「魔法であーちゃんを浮かせて、自分は壁を昇って入って来たよ。本当誰の娘なのか」
「わはは。うちの娘だけど凄いな。魔法も上手だし、身体能力も高いし」
昔の自分を思い返した夫はアイラがこっそり家を抜け出してもあまり気にしない。自分が無事だったから、あの子も無事だろうと思うのだろう。
でもアイラは女の子だし、魔王の一人娘なんだからもう少し気をつけて欲しいのが本音だった。
「呑気ねあなたは…」
「子供は縛り過ぎると悪影響が出るんだよ。内緒にしたい事は内緒にしておかないと」
「悪い事に巻き込まれたらどうするの」
「大丈夫だよ。すぐ分かるから」
「危ない目に会ったら?起きてからは手遅れな事があるかも知れないでしょう」
「その時の為に君が頑張ってるんだよな。いつもありがとう」
育児は全て任せっぱなしで、自分はただただアイラと楽しく過ごすだけっていうのはちょっと、いやかなり不満が溜まる。
最近はますます、アイラが私の事を悪く見てるんだから尚更、夫の教育方法に苛立ちを覚える。
「全部私が悪い人になってるみたい」
「でもアイラはお母さんの方がもっと好きだよ?お父さんは遊び相手で、お母さんは尊敬出来る大人って思ってるんだってこの前言ってた」
「…そうかしら」
こんな言葉ですぐに機嫌が直ってしまうのも考えるべきものではある。
「それより、めっちゃ食べて来たんだろう?夕飯どうするかな。軽めにするか?」
「そうね……」
アイラは沢山食べる。でも街でたくさん食べ歩きをしていた。重めの食べ物もいっぱい食べた。
流石にお腹いっぱいで食べられないのではないか。
「予定通りに行くよ。今日はグラタンね」
「それは美味しそう」
「貴方も手伝いなさい」
「はーい」
アイラは沢山食べる。そして、すぐにお腹を空かしてしまうのだ。夕食の時になるとまたお腹が減ってるだろう。
あーちゃんは、まだよく分からないけれど…取り敢えず沢山作っておく事にした。
足りない事よりは余る事が良い。
グラタンの香りが家の中に広がり、夕日が程よく家の中に差し込む頃。アイラがあーちゃんと一緒にリビングに降りて来た。
最近はずっとくっついてる。ぬいぐるみみたいなあーちゃんを抱えたり、撫でたりするアイラはとても年頃の女の子みたいで可愛い。
「こんばんわー…」
ちょっと眠ってたらしく、声が掠れていた。
「こんばんは。手は洗った?」
「まだ…」
「じゃあ行ってらっしゃい」
「はーぃ」
眠い目を擦りながらあーちゃんを連れてお手洗いに行くアイラを見送りながら、料理を並べた。
「…ん」
並べてから思った。
「全部食べれるかしら……」
どう見ても三人と一匹が食べるには量が多過ぎた。
「大丈夫。余ったものは明日食べたらいいし」
「駄目よ。傷んだりしたらどうするの?」
「わはは、それもそうか。じゃあ頑張って食べ切るしかないな」




