お散歩した!
てくてく。たまにころころ。
こっそり家を出て街を歩くと無性に昔の記憶が思い浮かんでしまう。いつ頃だったのかは覚えてないけど、あの日も内緒で抜け出して歩いてた。歩くのが疲れるところころと転んだりもした。
流石にこの歳で地を転ぶのはしなかった。代わりに石ころをころころと。私が蹴って、あーちゃんが蹴ってと繰り返す。
「着いたよー」
そうやって歩いていたらすぐ、気づけば公園に着いていた。中には家族連れの人や、犬の散歩をしてる人もいた。ただぼんやりとベンチに座ってのろのろしてる人もいた。
「んー…あった」
そしてその公園の隅には、相変わらずでっかい狼が陣取っていた。お父さんくらい大きい狼。
「なんか違うなー」
あーちゃんとは毛の色も顔の出来も全然違うな。大きい事だけ同じ。
「取り敢えず行ってみる?」
あーちゃんも少しがっかりしたようだった。同時にほっとしたようにも見える。
「こんにちわー」
二人で足並み揃えてすたすた。でっかい狼のところまで歩いて行って、私はいつも通りに挨拶をした。あーちゃんは静かに鼻を近づけた。
狼同士の挨拶なのか、大きい狼も鼻を当て返す。
なんか可愛い挨拶。
「ねね、私ともやろ?」
やってみたくなって、私は大きい狼に鼻を突き出した。でも、返しはなく。
「なんでー?」
あーちゃんが慰めるように私の足に頭を擦ってくれるだけだった。なんか負けた気分。
とにかく、ともかく。
「改めてこんにちは。こっちは最近家族になったあーちゃんだよ。よろしくね」
大きい狼と顔合わせもやったし、そろそろ街の中に行って買い食いしちゃおっか。
「じゃあばいばい。行こうあーちゃん。これからは食べる時間だよ。準備はいいかいー?」
ぽこんと角が生えたのが感じられた。
それから街に出て、ありとあらゆる物を買って食べて歩いての繰り返しだった。
「うまー」
目の前で香るコロッケが美味しそうだったから買った。食べた。あーちゃんも食べた。
焼きたての熱々とした生地と、中にはお肉とチーズが詰め込まれていて、口の中が火傷しそうだ。でもそれがまた旨味を増してくれる。
「もういっかい!」
「よく食うねぇ。はい、サービスだよ」
「わあぁ!ありがとうございます!」
買ってすぐ食べて、また買おうとするとお店のおじさんがただでおかわりを渡してくれた。
それをまたあーちゃんと二人で食べる。
「やっぱお肉だよねー」
もぐもぐと食べながらゆらゆら歩く。お母さんに見られたらきっと怒られるだろう。まぁ、いいや。
「次はあれ食べよ!」
あーちゃんと一緒に次はバーベキューをやってるお店に入って行った。串に刺されたお肉や野菜などがとても美味しいお店だ。
「二つください!」
「今日も食べるねアイラちゃん」
「えへん。今日は一人じゃないよ?」
「新しい家族?」
「そうなのー。あーちゃんって言うの」
「ほほう。大きいねぇ。これはたくさん食べなきゃいけない奴が来たな」
お店の店員さんと短い会話を交わして、串を四つ貰った。肉だけの串が二つで、野菜もあるのが二つ。
「ありがとうございますっ」
「うんうん。毎度あり」
一個はあーちゃんの口の中に串を外して入れて、一個は私が手に持ったまま食べる。
あーちゃんって大きいから食べるのも早いね。
「ん、あーん」
すぐに飲み込んで次をねだるあーちゃんに、また串を外して口の中に入れてくれた。
「私より早いなんて、中々やるじゃん」
私も食べる速さは自信あるんだから、ここは主として踏ん張らないと。
そう思って半分くらい残ってた串を一気に口の中にいれて、もぐもぐ。すぐに飲み込んだ。
それと同時に、あーちゃんも飲み込んでいた。
「もー、早いなぁ。はい、半分あげる」
残った串を独り占めするのも嫌だし、半分はあーちゃんの口の中に入れて、半分は私の口に放り込んだ。
もぐもぐ。すたすた。
両頬いっぱいになったまま次のものを探す。
「わ、あーちゃんパスタ食べた事ある?あれは美味しいよー?食べるのが大変だけど、パンの上に乗せたやつもあるから」
次に目に入ったのはパスタだった。正確には、パスタを乗せたパン。焼きそばパンみたいなやつ。
「うめー」
パスタパンを買ってすぐに口の中に入れる私と違って、あーちゃんはちょっと苦手のようだった。
「ちょっと辛いよねーこれ。ごめんね?」
辛くてすぐはぁはぁと舌を出しっぱなしにして、悶えるあーちゃんだった。でもすぐに辛さが収まったのか、またパスタパンを齧っる。
「おかわり欲しいの?仕方ないな」
一口目の躊躇いはとっくに消えて、もう一個とおねだりするまでだった。
辛いもの好きなんだあーちゃん。
「お母さん、辛いのは体に悪いって言ってあまり作ってくれないんだからねぇ。私も好きだけどあまり食べた事ないな」
パスタパンをもう一つずつ、もぐもぐと噛みながら次の食べ物を探す。
「あ、辛いの!」
突然と目に入ったのがまたあった。
「これナンって言うの。あまり味はしないけど、カレーと一緒に食べるともうそれはそれは無限に食べれるくらいなの」
ナンとカレーが見えて、辛めのカレーとナンを頼んだ。ナン自体は昔も今も普通だけど、カレーと食べるのはとても好きだ。
「さ、熱いよー」
ナンをたっぷりカレーで濡らして、あーちゃんの口の中に入れた。
私もたっぷりカレー塗れになったナンを食べる。
「んー!からいっ」
辛さに悶えながらもなんだかんだ手が止まらない。あーちゃんも辛そうなのにおかわりを急かす。
辛いものが好きないい仲間が増えたな。




