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お散歩しよ!

「大きいわね……」

「可愛いんじゃない?アイラとぴったりだと思うな」

「これからは私の弟…妹?お兄ちゃんかも?それともお姉ちゃんかな…とにかく、家族だから」

「わん」

「お父さん、あーちゃんが真似するなって」

「ごめんね…」

 あーちゃんを二人に正式に紹介してから、家に活気がさらに増した感じがした。

「お腹空いたー?ご飯にするー?それともおやつ?」

「食べ過ぎないようにしなさい」

 自分でご飯をあげたり。

「アイラ達には内緒だよ?」

 こっそりおやつをくれるお父さんを見たり。

「あなた…ふわふわだね……」

 あーちゃんの毛並みに夢中なお母さんがいたり。

 などなど。

 たった数日であーちゃんはすっかり家族になっていた。いい事だ。

 あーちゃんが家族になって、親しくなるにつれてだんだん胸が苦しくもなって行く。

「あーちゃんって、何って名前がいいかな…」

 ベッドの上で二人寝転んで、目を合わせてぽつりと言葉を漏らす。あーちゃんは、今のままでもいいって言ってくれたりはしない。

 ただ喉を鳴らすだけ。

「言葉が通じないのも不便だね…」

 家族なのに会話出来ないなんて勿体ない。

 名前も、会話も。近いうちになんとかしないと。

 それより。

「ねぇあーちゃん」

 狼を飼うとやってみたかった事があった。

「お散歩行く?」

 二人で街に出て、街中を歩いてみたかった。ん、狼は散歩しなくてもいいのか?

 まぁ犬みたいなもんだし、した方がいいか。

「お散歩だよー。街中に出て、歩いて、風にあたって、美味しい匂いを嗅いで、お母さん達には内緒でこっそりおやつを買って食べたり」

 あーちゃんもとても興味津々に見えた。目が見開き、尻尾がばたばた。まるで喜ぶ犬みたいに。

 狼なのに犬と同じ目で見てもいいのか心配だけど、犬みたいなもんだし。

「決まりー。お散歩しよー」

 そう決めれば事はするすると流れ。

 お母さんにバレないように、玄関からこっそり靴を持って来た。寒さに震えるのを塞ぐ為に暖かい上着も羽織った。

 あーちゃんと出会う日は思ったより寒かったから、今日もきっと寒いはずだ。

「あーちゃんは寒くない?」

 狼は毛がふわふわもふもふで、寒さから逃れる事が出来るのだろうか。あーちゃんは私が差し出してくれた上着を見向きもせずベッドの上に戻した。

「君が選んだのだよ?後で寒いって言わないの」

 私は靴を履いて、上着を羽織って。

 あーちゃんは裸のまま。

「静かについてくるのよ。わかった?」

 しーっと、人差し指を唇に当てながら窓の上に乗って、飛び降りた。私が出るとすぐにあーちゃんも窓から飛び降りて来る。

「お母さんにバレたら怒られるからね。私達、悪い事してるんだから」

 窓から見えないような角度に身を隠して、こそこそ。家の外に出た。家の中には工事の監督に忙しいお父さんの姿が見えた。

 お母さんはどこに行ったのだろう。

「取り敢えずここまで来たら大丈夫かな」

 お母さんの行方は気になるけど、ここまで来て見つからなかったんだから大丈夫だろう。

「あーちゃんとの初のお散歩だねー。わくわく」

 家から離れて、人気が少ない道端であーちゃんと目を合わせてにんまりと笑い合う。

「まずは公園に行こー?あそこにもでっかい狼がいてね?もしかするとあーちゃんと同じところから来たのかも知れないよ」

 同じって言葉に少し震えるあーちゃん。そういえば、群れから追い出されたと言っていたな。

「向こうも何らかの理由で群れから離れたんだから。同じだよ君と」

 だから安心してって、あーちゃんを撫でながら慰めた。愛からわずもふもふな毛並みだね。

「行こっか」

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