趣味が変わった。
ツノと戦って数日間、お城で出くわす度にお互い知らないふりをしていた。
もともと友達と言えばツノしかいなかったのと同様だったので、ここ数日はお母さんと遊ぶばかりだった。
「つかまれたー……」
一緒に鬼ごっこをやったり。
「なげるよー…?」
二人でキャッチボールをやったり。
「作った…」
砂遊びをしたり。
「相変わらずすごいねぇ」
いつもは完璧だった砂のお城も、今はどこかばらばらな感じがした。
虚しい感じがした。
中が空っぽな感じ。
「…ぅ」
ちょっと涙が出た。
虚しさ、悲しさ、寂しさなどが合わさった感情が胸の奥で溢れ出る。
「………」
「今日はもう帰る?」
視界の端にはツノちゃんが見えて、目の前ではお母さんが優しく私を慰めてくれる。
「帰る…」
「そうね」
なんだか遊ぶのがつまらなくなった。もう私も大人になったのだろうか。
ただただ遊ぶのは虚しい気がする。
そんなこんなで。
「私、もう遊ばない…」
「そうなの?」
お父さんのお城で遊ぶのを辞め、家で一人で本を読んだり絵を描いたりする日が増えた。
「……わぁ」
絵本ではなく、文字だらけの大人の本は中々想像力を刺激するもので、読んでいた今までの虚しさはすっと消えるくらいだった。
色塗りではなく一から自分で描く絵もまた、中々面白いものだった。気づけばご飯の時になるくらい夢中に本を読んで絵を描く。
そんな日々を過ごした。
「これアイラが描いたの!?すごくない?もつ画家じゃない?お金貰ってもいいくらいだよ!」
「騒ぎ過ぎよ貴方は」
「うへへ」
自分の絵が褒められたとても嬉しくもなる。
「こんな難しいのを読むんだ。アイラはやっぱり天才なんだね」
「まあねっ」
昔はお父さんのただただ褒めるところが嫌いだったのに、最近は満更でもない。
気持ちいいまでもある。
「んー……」
だからたまには、こっそり隠れてお父さんを描いたりもした。書斎で何かに夢中なお父さんの後ろ姿を紙の中に映し出す。
「出来た。ねね、お父さん」
「ん、どうしたの?」
出来上がった絵をお父さんに見せてくれると、限りなく褒められる。
「これ」
「あ、これお父さんなの?!わぁありがとー!嬉しいな。お父さんがこんなにかっこよく見えてたのー?」
「うぅん。それはお父さんの勘違い」
「げっ」
そんなこんなで、時は流れる。
外での遊びを面白がっていた私はすっかり消えて、今じゃ一人で想像力を膨らますのが好きになっていた。
あの日遊ばないって言ってからどれだけ時間が経ったのだろうか。私はすっかり別人になっていた。
体が成長する頃合いでもあってて、気づけば背は伸び、顔に残っていた幼さは消え始めていた。思考回路も、行動原理も、大人になって行く感じがすると言えるだろう。
かつてお母さんが言ってた『大人』に近づいている自分がいた。
「アイラー、お父さん仕事頑張ったよー?」
「汚い手で触らないでっ」
「なっ」
嫌いな事はちゃんと嫌いって言える。
断れたお父さんの顔が悲しみに満ちたのを見ても、なんとか堪えるようになった。
いい事だ。




