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ちやほやされた!

「うぅ……」

 お母さんにボコボコに怒られた。もう涙も出ないくらい泣いて、声が枯れるまで謝って、家に強引にお持ち帰りされる事になった。

 帰る時はお母さんに抱えられたまま。

 久々にお母さんに抱かれて外を歩いた気がして嬉しくなったり、でもお母さんはまだつんつんって怒ってるから素直に喜ぶのも出来ない。

 だから、こっそり喜んだ。

 涙ぐんだ顔をぐいっとお母さんに擦り寄せる。

「………」

 お母さんの温もりが頬に伝わる。ちょっと息苦しい暖かさ。

「次からは、言ってね?」

「うん…」

 それからぽんぽんと頭を撫でられた。つんつんとしてた雰囲気は和らいだみたい。

 よかった。

 そのままお母さんに抱え縛られたまま家に帰った。家の中に入るまでお母さんの懐の中だった。

 流石に息苦しいし、暑い。

「あ、こらっ」

 お母さんが私を下ろすと早々、家の中に駆けて行った。お母さんといるとまだ気まずいし、お父さんにちやほやされたかったから、お父さんを探す。

「むっ」

 リビングにはない。なら部屋か。

 私の部屋?それとも、二人の寝室?書斎なのかも知れない。まだ帰って来なかったのかも。

 お父さんの靴があったっけ。

「むむむ」

 取り敢えず走らなきゃ。お母さんが来てる。

 ここは……書斎だっ。私の直感がそう言っている。

「おとぉさんっ」

 どたばた走ってお父さんの書斎に入って行った。中にはお父さんが一人、ぽつんと床に座っていた。

「ただいまっ」

 お父さんも怒られたのか、顔がいつもより痩せているようだった。

「お帰り」

 でも、声はいつも通り。

 いつも通り?

「お父さんっ」

「どーしたの?」

「ただいまって、初めて言った」

「そういえばそうだねぇ。あははっ」

「うへへ」

 何が楽しいのか、笑ってしまった。

「今日ね?私ぼーけんをしたのー」

「そうなんだ。どんな冒険だったの?」

「一人でツノちゃんの家に行った!」

「ほぇー、すごいなぁ」

 お父さんも楽しそう。

「先に家にかえるツノちゃんをうしろをびこうしたの。うしろであるいたり、たまにころんだり」

「転んだの?怪我はない?」

「だいじょーぶ。ころころしたんだから」

「痛くはなかった?」

「いたかった」

「だろうねぇ」

 うへへ。なんか楽しいっ。

「それでねそれでね?ころころしてツノちゃんの家のまえについたの!でもとびら、閉まってて」

「それは大変そうだったな」

「ぴんぽーんっておした!あいさつもしたよ?」

「偉いねぇ」

「でもだれも出なくて、ぴんぽーんってなんかいかおしたの。もしもーしって言いながら」

「それで誰か出て来たの?」

「うぅん、すーってとびらが開いたの」

「ほぇー」

「だから入った!」

「ちゃんと挨拶はした?」

「した!」

「偉い偉い」

「ふへへ」

 すりすりとお父さんの手に頭を擦る。

「なかにはツノちゃんと、そのお姉ちゃんがいたの。まどのそとで見た。二人ね?とってもなかよく見えて、まざりたいなっておもってて」

 擦ると、すりすり。お父さんからも撫でてくれる。

「まどたたいたの。こんにちはーって」

「礼儀正しいね。いい子」

「うへへ」

 ちやほやされるの気持ちいい。

「それでね?なかに入ろうってなって、まどあけたの。ちょっとへんな音もしたかな?」

「強いねぇ」

「へへへ。それで、なかに入ってあそんだ。ツノちゃんと、お姉ちゃんと三人であちこち家の中を歩き回ったり、かくれんぼもしたよ?」

「隠れんぼかぁ。懐かしいなぁ。また今度やる?」

「うぅんやらない。それよりね?ツノちゃんの家ってへやが多いのー。あとにわもあるの。にわでみんなでおにごっこもしたー」

「じゃあ鬼ごっこやる?」

「やらない。それよりね?ツノちゃんの家にはてんじょうの上にものぼれるの!はしごがあって、のぼってみたんだ。てんじょうの上で見るけしきはきれいだったよ。おしろも見えた」

「お父さんも見てみたいなー」

「こんど見に行こっ」

「いいよー」

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