お泊まりした!
「わあぁぁぁっ」
庭で鬼ごっこをしたり。
「なげるよー?」
キャッチボールをしたり。
「これ見てー」
絵本を一緒に読んだり。
ツノちゃんとめちゃくちゃ遊んだ。
いつもは決められた時間に決められた場所でしか遊べなかったけど、今日は違う。
庭に出てもいいし、人気のない部屋に隠れてもいいし、こっそり天井の上に登ってもいいし。
「あぶないよ…!」
「へーきへーき」
天井に登るとツノちゃんがとても青ざめた顔で見てたけど、無事に降りて来たから大丈夫。
ま、そんな事やこんな事があって。
「ふあぁぁ」
そよぐ風が冷めていく頃。空は橙色と藍色で彩って行く時間に眠気が襲って来た。
遊び過ぎたせいで体力が尽きてしまったのだ。
寝たいなぁ。
「ねむいー?」
「ねみー…」
ツノちゃんも少し疲れてる様に見える。このまま一緒に昼寝してまた遊んだらいいなぁ。昼寝じゃないかな今じゃ。
とにかく寝たいな。
「そろそろ帰る?」
お姉ちゃんも、私達に色々と巻き込まれて少し疲れてるように見えた。
「うぅん…寝る」
「ここでぇ?」
「おとまりだーぁ」
「わーぃ」
とにかく、ともかく。
眠いので寝る事にした。いわゆるお泊まり会。
「ねぇねぇ」
僅かな体力で思いっきり両手を上げて、お姉ちゃんに抱き着いた。お姉ちゃんだけ説得すればなんとかいけるはずだ。
「いっしょに寝よ?」
このお姉ちゃんは私がかなり可愛く見えているんだから、甘えればなんとかなるのだ。
「うん…」
なんとかなった。
というわけで。
お姉ちゃんを味方にしたら事はするすると進んで、気づけばお母さんにもお泊まりするって話が伝わっていた。私はお風呂に入ってたからどうやって話したのかはわからない。
でも、都合よく物事が進むのは喜ばしい事で。
「わぁぁ…!」
お風呂から上がり、ツノちゃんの服を着て部屋から出た頃。リビングには豪華な料理が広がっていた。お肉や、じゃがいもや、お肉や。
私好みの料理ばっか。ツノちゃんはいつもこういうのを食べてたのかな。
羨ましいなぁ。私もツノちゃんの家に暮らしちゃおっかな。お母さん、いつも野菜ばっか食べさせるから食事が楽しくないもん。
「……ぉ?」
ん、野菜ばっかじゃないか。お肉もくれるな。
ん?よくよく考えてみると、家でも夕飯はほとんどこんな感じだった気がするな。
匂いとかも、家のと同じ。
「ふむむ…」
見覚えのあるメニューだな。どこで見たんだろう。
んー……
「…お母さんだっ!」
誕生日の日の夕飯がこんな感じだった!こんなって言うか、今目の前にあるのと全く同じだった。
あの日はたくさん食べてたから覚えてるもん。
「お母さん?」
ツノちゃんが困惑気味に私を見る。私もなんで全く同じメニューのご飯が出来たのか気になってて、同じく困惑気味にツノちゃんを見返す。
「アイラのお母さんがきたの?」
「わかんない」
お風呂入ってた時に来たのかな。でも見えないな。まだなんか作ってるのかな。
「んー……おなかすいた」
「だねー」
よくわかんないけど、腹が減って角が生えちゃった。ご飯の前はいつも出ちゃうんだよな。
「食べるぅ?」
「なんかはえた!」
「生えたのー」
「おそろい?」
「お揃いー」
「わーい」
お互いどう流れてるのかわからない会話を交えながら、並んで座る。
目の前には肉。隣には友達。
うむうむ。まさに最高の瞬間ではないか。
「いただきまーす」
「食っちゃおー」
食卓に二人っきりって事がちょっと気になるけど、まあいいや。お腹すいたし。




