第8話 Dランク昇格試験
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第8話 Dランク昇格試験
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今日の調合は3時間で300本のポーションを作ったが、2時間は錬金レシピで270本錬成した。しかも200本が高品質で、70本が最高品質だった。どうやら錬金術の腕も上がっているようだ。
あとの1時間は薬師レシピで30本を作った。普通品質が5本に、高品質が25本だ。こちらも順調に腕が上がってきているようで、何よりだ。
明日の昇格試験が終わったら、次は解毒ポーションの錬成にチャレンジしてみようかな。
ピロリンッ。
『錬金術のレベルが上昇しました』
『錬金術レベル2が開放されました』
おおおっ! やったな、おい!
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【world skill 錬金術】
・Lv1:下級魔法薬錬成
・Lv2:中級魔法薬錬成 下級金属錬金 下級ゴーレム錬成
・Lv3:未開放
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「ゴーレム!?」
ぐふっ、ぐふふふふふうふ。俺の時代がきた!
やっぱり錬金術といえばゴーレムだよな!
あーっははははははは! 俺の時代がやってきたぜ!
一応、俺のレベルも12まで上がっている。結構上がるのが早いと思える成長だ。
気をよくした俺は、調合室を出た。今日の受付もミニャンで、安定の巨乳である。動く度に揺れるので、目が離せない。
「今日もたくさんをありがとございました」
「おう。またな」
代金を受け取り、懐が温かい。
「はい。お気をつけてお帰りください」
ミニャンともそれなりに打ち解けてきたと思う。そのうち、食事でも誘おうかな。
宿の部屋に戻ると、薬草の乾燥具合を確かめる。まだ十分じゃない。風通しのいいところに吊るしたいところだが、宿暮らしだから贅沢は言えない。俺がいる間は窓を開けておくようにしておこう。
「ま、気長に待つさ」
窓の縁に腰をかけ、タバコをふかす。
人々の往来を眺め、綺麗な女性がいたら鑑定を発動。
「お、B98! ナイス!」
やっぱ女性は豊満なほうがいいよな。あの胸に挟まれてみたいぜ。
ギスギスに痩せている今時の子にはまったくそそられないよな~。足なんかマッチ棒かと思うくらいのストンッ具合だぜ? あくまでも個人の意見だけど。
……俺は誰に言っているのだろうか?
「え、魔法!?」
これまたナイスバディのお姉さんを発見し、鑑定したら『クリーン』という生活魔法を持っていた!?
『[クリーン]生活魔法 対象の汚れを落とし、清潔な状態にする』
いい加減お湯で体を拭くのは限界だと思っていたのだ。風呂がないのは、いつか自分で作ってやると思っている。それまでこの不快感と共存しないといけないのかとうんざりしていたところである。
「クリーンはどうやったら手に入るんだ? 誰かに師事しないといけないのか?」
午後5時の鐘が鳴った。同時に俺の腹の虫も騒ぎ出した。
こんな早い時間にと思うが、よく動くと腹が減るんだよ。よし、食堂にいこう! 今日は初めて魚を頼もうかな。
「シュラーちゃん、魚で。あと冷えたエールね」
「はーい」
お金を多目に握らせて、チップだと伝える。
魚料理はヒラメのムニエルのようなもので、とても美味しかった。
シュラーの父親は、本当に腕のいいコックだな。
さて、今日は昇格試験の日だ。
この世界の暦でいうと、1月30日なんだとか。
薬師ギルドの昇格試験は3カ月に1回行われているので、1月、4月、7月、10月の30日が試験日らしい。
ちなみに、1日は24時間、1カ月は30日、1年は360日の12カ月だ。1週間という概念はなく、1日の上の単位が1カ月になる。
今日も朝食を美味しくいただき、宿を出る。
1月30日なのに、あまり寒くない。冬がない世界なのか、それとも地域なのか、はたまたイヘスの町は温かい地域なのかもしれないな。
この世界が前の世界と同じ法則で四季があるとは限らない。これもいずれ分かる時があるだろう。
「いってらっしゃーい」
「あいよ」
手を振るシュラーに手を振り返す。あと15年したら、きっといい女になっていることだろう。その頃の俺は45歳か。相手をしてもらえるだろうか?
薬師ギルドに到着。いつもより早い時間だが、他に数人がロビーにいた。俺よりも若い子たちばかりだな。
「ども、試験を受けにきたんだけど」
今日はミニャンじゃないのか。知らない受付嬢に試験の受付をしてもらった。ミニャンほどのものは持ってないが、美人だ。
「はい。ケンヤ様ですね。試験の番になりましたら、お呼びします。ロビーで待っていてください」
「あいよ」
ミニャンより5歳は若いか、20歳くらいの受付嬢は美人なのだが、どうも今いち魅力が伝わってこない。25歳くらいのミニャンでも少し若いと思うのだから、仕方がないか。
ロビーで椅子に座り待っていると、横の青年が呼ばれて調合室に入っていった。
その代わりに出てきた少女は暗い顔をしている。駄目でも次があるじゃないか!
あ、そうだ。昇格試験を受けて落ちた場合、次の昇格試験(3カ月後)は受けられないんだった。最低でも半年後になる。その期間でしっかり腕を磨けということなんだろう。
俺より前にいた少年少女たちが、どんどん呼ばれていく。
1時間ほど待っただろうか、俺の名が呼ばれた。今日は調合室のC室に入った。いつものA室よりも大きな部屋だ。
「Eランク薬師のケンヤさんですね? 受験票を提出してください」
50代の男性試験官に、受験票を渡す。
「それじゃあ、ポーションを10本作ってください。魔石とフレイク草はそこに用意されているものを使ってください」
言われるままポーションを作る。
しかし、微小魔石の中に小魔石が混ざっていた。フレイク草も質の悪いものが混ざっていた。そういった見極めも試験のうちなんだろうな。
たった10本なので、15分もかからない。ささっと作って瓶に入れる。全部高品質だ。俺の腕はドンドン上がっているぜ。
「できましたよ」
「………」
返事がない。ただの屍か?
「できたんですけど!」
「あっ!? は、はい……全部高品質です。合格です。これを持って受付へいってください」
まったく、試験中にボーッとしないでほしいものだ。
受付カウンターで合格の札を出すと、ギルド証が更新された。
「Dランク昇格おめでとうございます。ケンヤ様の今後の活躍に期待しております」
よく言えました。噛まずに言えたことを褒めてあげましょう。
しかし、1時間待って、試験は15分か。待ち時間が勿体ないな。
「う~ん。今日は時間ができたから、また町中をブラブラするか」
工業地区を通りすぎ……ずに、目に入った木工所を覗いてみた。
前の世界では木彫りはしていなかったが、趣味でフィギュアを作っていた。そういうところは、オタクに負けない拘りがあったよ。この世界でフィギュアを作るにはどうしたらいいんだろうか? まさかレジンとかないよな?
「そうか、魔法があるんだ……」
土魔法とかで、フィギュアを作れないだろうか?
……楽しそうだな。魔法使いたいなぁ。
「あんちゃん、どうかしたか?」
髭もじゃ筋肉ダルマのオッサンが現れた。
「あ、いや……ちょっと木彫り用の木がないかなと」
「あるぞ」
「え、あるの?」
「ああ、あるな。こっちにきな」
ついていくと、オッサンは丸太を出してきた。
直径50センチメートル、高さ1メートルくらいのヤツだ。いい香りがする。
『[アカカヅラ]木目が緻密で、木彫りに適した高級木材として有名』
「細工用の木材で、アカカヅラというものだ。最高級の木材だぞ」
「高級木材っていくらだ?」
「これで白銅貨4枚だな」
「うへー、高いな」
「そりゃー高級素材だからな」
ポーション9本分だ。
「もらうよ」
「毎度」
よし、余暇を趣味に費やせるぜ!